ホモ宣言
目の前で友人がそれぞれ用紙をもって妙に盛り上がったテンションで会話をしている。
「俺、ワイルドだったぜ!」
色黒で体格も良い相沢が自慢気に言い放ち、皆うらやましそうに見る。
「いいな~。俺はヘテロだよ」
俺は、はしゃいでいる友人らを前に、用紙に再び目をやりため息をつく。別に落ち込んでいるわけではない。検査の結果はうすうす感じていたし、納得はしている。こういう環境だと色んな意味でカミングアウトってしにくいものである。
「清酒! お前は何だったの?」
黙っていたら、スルーをしてもらえると思ったがしっかりと友人は俺の存在を思い出しそう聞いてくる。
「俺はホモだよ!」
まさか人生においてこんな宣言をする日がくるとは考えもしなかった。友人らは、目を丸くして、信じられないという顔をする。
「お前がホモ! 冗談だろ?」
俺はため息をつき、検査結果の用紙を皆に示す。皆はその用紙を回し読みをした後、一斉に笑い出す。友人は俺が同性愛主義者という事で笑ったのではない。
『清酒』という苗字の俺がアルデヒド分解酵素遺伝子検査の結果『ホモ(お酒がまったく飲めないタイプ)』に分類されたからだ。
因みに恋愛に関してはヘテロで、彼女もいるし、そういう意味では女性にしか興味がない。
とはいえ、この検査のお陰で医学的にアルコールが飲めない事を証明はできた。余計な飲み会に誘われる煩わしさからは堂々と逃げられるようになったのは嬉しい。
だが何故だろう?
【お酒がまったく飲めない清酒】
その事で他のホモタイプの人以上に注目され笑われてしまうのは納得がいかない。お陰でますます「清酒」という珍名が面倒臭くなった。
この検査、アルコールをどのくらい胎内で分解出来るかというものです。
大学によっては検査をしてくれてお酒との付き合い方を考えるきっかけを作ってくれる所があります。
ウワバミをワイルド、普通に呑める人をヘテロ、全く呑めない人をホモと分類しています。
専門的に言うとこちらどの遺伝子の因子をもつかということで分類されています。
「お酒をバリバリ分解出来る因子」と「悪酔いする因子」この二種をどのように二つ保有しているかで体質が決まります。
「お酒を分解する」因子を2つもつウワバミであるホモワイルドとなり、「悪酔い」因子2つ持つ下戸はミュータントホモ、それぞれ1つずつもつヘテロとして分類されています。つまり呑めても呑めなくても同じ因子を2つ持つ人ということでホモになります。そういう意味ではワイルドもホモではあったりします。