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Deer! and Bear?  作者: ムルモーマ
1.良く晴れた秋の日
7/65

行こうか

 平和な時の騎士以上に気楽な仕事は無い、とリドムは思っている。特に、田舎では。

 主にする事と言えば、町の警備と、自分の体が鈍らないように訓練をするだけだ。特に警備は、午前だけ、午後だけ、と人員を割いても十分に人手が足りる。

 勿論、戦争が勃発した場合は足りなくなるのだが。

 それの他にする事は、偶に狩りに参加したり、事務の仕事を任されたり、その他少々。


 飯を食い終え、制服に着替えてから、一旦小間使い達に会いに行く。

 今日からは、昨日まで乗っていた愛馬、スタックに乗る事は激減するだろう。

 彼ら、彼女らが馬に乗ってみたいというのは何度も聞いていたし、スタックも健康の為、走らせない訳にも行かない。

 暇があったら自由に走っても良いように言っておいた。


 外に出ると、銀鹿は飯を食っていた場所にまだ座っていた。そして、唐辛子が地面に置かれていて、それをじっと見ていた。

 スリルを味わいたいが為に唐辛子も籠に入れたのかな。

 そう思いつつも、厩舎に向う。手綱は必要ないとしても、鐙と鞍は必要だ。

 銀鹿の体に合うかどうかは分からないが。

 スタックの元に歩いて行き、仕切りに掛けてある鐙と鞍だけを取って、スタックに言った。

「すまない。今日からはいつもここの掃除をしている人達を楽しませてくれ」

 普通の動物の中で、馬よりも心が繊細な動物は居るだろうか。自分が銀鹿に乗る事を知ったら、スタックの元気が無くなりそうだ。

 伝わったかどうかは良く分からない。馬は人語を理解しない。

 だが、いつもとは違う事は分かったのだろう。リドムがスタックを連れずに厩舎から出ようとすると、不安げに鼻を鳴らした。

 厩舎の掃除に取り掛かっている小間使いに、出来るだけ早く走らせてくれと、伝えた。


 銀鹿は既に唐辛子を食べてしまったようで、厩舎を出ると籠を咥えたまま俺の方へ歩いてきた。中身は半分程減っていた。

 夜になる前にまた、八百屋にでも寄れと。

 鞍と鐙を見せると、少し不満そうに見えたが、取り付けるのには何の邪魔もしなかった。馬と同じものが鹿に取り付けられるだろうか、と不安だったが、大した問題は無かった。

 銀鹿の反応を見て、今までにも取り付けられた事があるのだろうか、と思う。

 いや、もしかしたら、これまでも同じような事を繰り返してきたのだろうか。

 魔獣の寿命は分かっていない。傷を受けて死んだ所は何頭も確認されているが、老衰で死んだ魔獣は1匹たりとも確認されていない。ただ、人間を遥かに超える寿命である事だけは分かっている。

 何度も繰り返していたっておかしくない。

 毛皮を一通り撫でていると、脇腹に傷の痕があった。……形状から言って、刺し傷だった。それも、大型の獣を殺す為のような、血を流させる為の歪な形をした槍だ。

「お前……」

 銀鹿はしゃがみ、リドムに乗るよう催促した。まるで、聞かれたくないかのように。

「……分かったよ」

 気付くと、隣にライルが居た。

「行くか?」

「ああ」

 今日は、午前中は町の警備、午後は訓練に参加。

 変わった日常が始まる。 


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