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Deer! and Bear?  作者: ムルモーマ
1.良く晴れた秋の日
3/65

気が抜けているよ

「さてと、と」

 今から毎日の日課をするか、それともこの銀鹿について色々他の奴に聞いてみるか。

 男はのんびり、そんな事を考えていた。

 そうしていると、開いていたドアの奥から声が聞こえて来た。

「何だ? そいつ」

 男が覗いてみると、そこに居たのは男の次にここに居る年月が多い独身男、ライルだった。小柄なのを良く気にしているが、それのお蔭か、偵察をする事が多い。

「魔獣だ。俺に仕える事になった」

「はぁ?」

「なあ、魔獣について何か知ってるか?」

 銀鹿もライルも、互いをじろじろ見ている。品定め、と言えば一番似合っているだろうか。

「その前に、こうなった経緯を教えてくれよ」

 ライルは、銀鹿の頭を撫でながら男の方を向いて言った。

「ドアを開けたら、こいつが居た。雇ってくれと、首から提げている木の板に書いてあったから、雇ってみた。それだけだ」

 ライルは、男の簡素な説明に溜息を吐きながら、木の板を見た。

「こいつ、どこから来たんだろうな。これ以前にも、人間と関わって暮らしていたようだが。

 なあ、お前、どこから来たんだ?」

 銀鹿は、首を西の方へ向けた。西の遠くには、草も余り生えていない岩だらけの荒山が広がっている。

 鉱石が取れる訳でもなく、勿論観光スポットのようなものでもない。

 それに、遠くから見ても隠れる場所が少ないので、何かの隠れ家としても使えない、言わば、不毛の地だった。

「あの荒山を越えて来たのか?」

 頷いて、肯定した。

「なるほど、そういう点においては馬より役に立つな」

 ライルがそう言い終えた時には、鼻で押し倒されていた。

「全面的に馬より上なんだろ」

 男がそう言うと、銀鹿は男の方を向こうとし、大きな角が男の脇腹に当たった。

「膂力も強いな」

 軽く振り向こうとしただけだろうが、男はバランスを崩しかけていた。

 ライルが立ち上がって、砂埃をはたく。

 銀鹿は男に向いて、また手を舐めていた。

「多分、嬉しい時にこうする」

 男が、無表情のままライルに言い、ライルは溜息を吐いてから言った。

「お前とそいつ、似合ってるよ」

 何となく気が抜けている所が、と付け加えるのは止しておいた。


 銀鹿の頭を撫でながら、男は思い出したように言う。

「そうだ、お前、名前はあるのか?」

 銀鹿は頷いたが、肝心の聞く手段が無い。

「木の板には書かれてなかったぞ」

 ライルがそう言い、男が悩んでいると、銀鹿がぐい、と頭を近付けて来た。

「ん?」

「こっちから自己紹介をしておこうか」 

「ああ、そうか。俺はリドム。リドム・クアッツ。

 で、小柄なあいつが、ライル。ライル・パンパ。覚えたか?」

 小柄って言うな、と聞こえたが男、リドムは無視して銀鹿を見た。何か、うずうずして、銀鹿を急かしているように見える。

 答を聞くのにそういう仕草はしない男だけどな、とライルは不思議に思った。

 銀鹿は、頷くのを見ると、リドムはすぐに言った。 

「じゃあ、こいつの名前をどう聞くかは後にして、俺は取り敢えず日課をやる。何かそわそわしてきた」

 そう言うと、リドムはすぐに立ち上がり、さっさと庭の方へ歩き始めた。ライルと銀鹿に背を向けて。

 ライルと銀鹿はその後ろ姿を見て、ぽかんとする。

「驚くほどマイペースだろ?」

 ライルがそう聞くと、銀鹿は肯定した。

 既にリドムは剣の鞘を抜き、素振りを始めていた。

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