0,プロローグ
最後まで読んでもらえると、幸いです。
あるところに、神様と呼ばれる者がおりました。
神様は、宇宙を創った創造主で、天界という空の雲高くに住んでいました。
天界。
ここは神や天使など人ならざる者が住む都。
人より高貴な者たちが、地球やその他惑星を監視するために作られた空間。
ここには我々が物質と呼ぶ物は存在していない。ただ殺伐とした風景が広がるいわば草原のようなところ。無であり無以外の何物でもないここは、ただ神々がちらほら見えるだけだった。家などという物はない。だって必要ないのだから。食べ物、ましてや店などという概念もない。だって無くたって生活に支障はきたさないのだから。
何もないここは一種の神々しさを感じさせる。太陽の光を直に受けた空気の中の水蒸気は、照らされ神秘的な光を宿す。辺りに光が溢れ、あるはずのない『楽園』をも思い起こさせる幻想的な空間。
そんな天界の片隅に、一人頬ずりして下界を眺める者がいた。純白の傷一つ無い衣を身に纏い、光輝くティアラを頭に乗せている彼は、見まごう事無く天界で身分が一番高い神様その人だった。宇宙の創始者の彼は、何故か憂いだようにある一つの惑星「地球」を眺めながら、誰にも聞こえないほどの声を小さく口を開いて呟く。
「あぁ、つまらぬ・・・・」
彼は閑散という言葉に苦悩させられていた。暇で暇でしょうがない。ずっと節々の星を観察するのに飽きがくる。地球という星をつい最近創ったが、なんと面白みのない星か。ここまで無様で滑稽なものになるとは思わなかった。つまらな過ぎてもはや見ることすら苦痛を通り越して呆れとなる。
そんな神様は、どうしたものかとかれこれ2000年もの間、同じポーズで考えに耽っていた。神に時間は無いに等しい。へたすれば彼は一億年同じ事をしていたかもしれないし、十億年同じことをしていたかもしれない。だがその憂鬱の時間に、静かに終焉が訪れる。
彼は思いついたのだ。
暇つぶしの遊びを。
彼は口の端を少し持ち上げ、目を細める。顔には微笑が浮かんでいた。それは見るものを魅了させ、惑わせるような、そんな表情で。
そうだ、暇つぶしに地球人で遊んでやるとしよう。
何でもひとつ願い事をを叶えてやろう、
しかし己の命と引き替えに、と―――――――