フェティシズム・ファンタズム〜VS百合能力者〜 〜
極まった性癖は、『能力』として顕現することはあまり知られていない。
性癖能力者たちが、己の存在を秘するからである。
なぜか。
性癖は、余人から知られると、恥ずかしいからだ。余人に知らせるものではないからだ。というか、己の性癖を認識し、言語化できて余人に発信できる時点で、性癖能力者として半分開眼している。
閑話休題。
ゆえに、性癖能力者たちは、日夜隠れながらバトルを繰り広げている。
なぜなら──恥ずかしいからだ。
◆
「わたくしは性癖 百合」
「そのせいで、街中に物理的に百合の花が咲き乱れて、ついでに所構わずきららジャンプしてる人達があふれているのね」
「比較的おだやかな気がするな」
テンノウジ動物園に、BL女と一緒に遊びに行ってたら、ゾウとサイがきららジャンプをしていて、嫌な予感がしたら周りが百合の花にまみれていた。
普段に比べて絵柄がきわめて綺麗だった。
こいつなら、そんなに害はないのかもしれない。
全身を百合の花で覆い隠している性癖能力者(♀)がどう考えても変態というか犯罪者の見た目であることを考えなければだが。
「でも、珍しいわね。百合能力者」
「そうなのか?」
大枠としてはかなりメジャーな性癖のような気がするが。
「ええ。なにせ、百合能力者たちは偽造が極めてうまくて、仲間内でしかその姿を見せることはないという──つまり、超シャイなの」
「そのとおりですわ」
なんでも、百合能力者は個々で組織を作り上げている、百合能力者同士の繋がりがあるらしい。
「秘する思いでこそ、咲く花がある──つまり、百合ですわ。己が秘することで、己自身を百合にする。それが、百合。つまり、百合。でも、わたくし自身は百合になりたいわけではないので、壁でありたい。でも、それすらも百合。つまり、世界は百合に満ちている!!!!!」
すぽぽぽぽんと変な音を立てて、道端に百合が咲いた。なんか信念があるらしい。
「何言ってるか、全然分からんかったな」
「こら。思っててもそういうことを言ったら、だめよ」
「ええ。そうです。わたくしたちは、あまりにも互いの会話が足りなかったのです」
なんか、哀しい過去があるらしい。
「わたくしたちの組織──壁になり隊は、壊滅いたしました」
「名前ダサくね?あと、壁はだめだ。豊かであるべきだ」
「だまりなさい、性癖 巨乳。筋違いよ」
おっと、失礼。つい、反応をしてしまった。空から落ちかけていた巨乳を引っ込めた。
「わたくしたちは壁になりたい」
「壁はだめだ」
「もう、本当に黙れ」
BL女に口を塞がれた。背中に、たわわがあたる。俺は黙った。バレたらしく、頸動脈を絞められる。一回落ちた。
「壁になりたい信念のもと、一つに集いました。しかしながら──恋情と友情を履き違えやがって!!!!!!!あれは恋じゃねえんだから!!!!むしろ友情のほうがいいときもあるだろうですわーーーーー!!!!!!」
「おおう……」
「カップリング論争で返り血が血みどろになりましたの。しかし、血みどろさえも百合」
「世界がどう見えてんだよ」
現実的な返り血は普通に、血だろ。
「でも、私はバカだからわかんないけど。関係性を見いだして、発展させて友情も恋情も好き勝手捏造するのは、性癖の本質じゃないのかしら?」
「本質はそうかもしれませんわ。でも、わたくしの魂が否定している!!!!!!」
「ほなしゃーないか」
地雷らしい。どうしようもない。
「魂が、否定してるから街中を百合の花で満たそうと思うのです」
「だから、みんなきららジャンプしてるんだ」
「お互いに相手のことは美少女に見えて、かつ自分も美少女と思ってますわ」
「あんまり害がない……?」
BL女の言う通り、確かにそうだ。いやまあ、ところかまわず、相手かまわず、手をつないだりジャンプするのは、イヤといえばイヤだが。
だが、現実はそんなに甘くない。
『ぱおおおおおおん』
『はとはとはとはと!』
喘ぐみたいに鳴き声をあげる象。オラオラって感じで、明らかに象の尻になんかしてそうな鳩。
「わたくし、百合は粘膜接触からが本番と思っておりまして」
「不同意強制はだめだ!!!!!!やっぱりこいつだめだ!!!!」
動物同士でも大概なのが、人間同士だと最悪すぎる!!!!!
「百合よ咲き乱れよ──」
「友情同士で、そういう粘膜接触は、あなた的にはどうなの?」
「そんな、友情でそんなことをするはずがあああああああああああ!!?るれ?るれ!!る?!??」
百合女は爆発した。脳みそ的に受け入れられなかったらしい。
「学級会開かれるのも、嫌よね」
「何を言ってんだお前は」




