天使 レティエル
遥か昔、なんとも慈悲深い聖女様がいたそうだ。名はレティエルという。小さな教会のシスターであった彼女は人々にとても愛されていた。
「聖女様、なんとお礼を申し上げたらよろしいか…」
「いいえ、御婦人、わたしは主の子供です。人を愛し、助けつつ力の主に励まされながら過ごしているだけなのです。」
聖女はふわりとした微笑を浮かべた。
「ありがたや、ありがたや、貴方がいらっしゃることでなんて頼もしいやら」
老婆は手をすり合わせ、何度も感謝を言った。
それでは貴方に神の祝福がありますように、と聖女は左胸に手を添え、首をかしげ、その場から去ろうと背を向ける。
一歩踏み出した時に「ぴゃっ!!」と石ころに聖女が躓く。はにかむように、えへへ、と笑う。
街の人は彼女を天使だと言った。天使のように清楚で慎ましい人情味あふれる御人だと。色素の薄い水色の瞳、絹のような髪に愛嬌のある立ち振る舞いに誰もが頷いた。だか、完璧に見えて、人間味のある彼女に惹かれたのはこの街の人たちだけではなかった。
街の人は彼女天使のようだといったが、紛うことなき、レティエルは天界から遣わされた天使である。
レティエルは真面目な女だった。穏やかではあるが、自分の信念を貫き、芯を持った利口で強い女であった。ただし、愛した男を除いてである。




