第9話 男の娘は存外に肉食系
「企業努力っつーの? あれ食べたいこれ食べたいを提案してって実現されたのも、冷凍食品がそのひとつだと」
「興味深いねー? 魔法薬でもあれこれ言われることが多いけど」
「……どんなのがあるんだ?」
「それこそなんでもござれさ」
アツシがマリアーノちゃん御要望の『羽根付きギョーザ』と言うのと、さっき食べたのと同じ冷凍チャーハンを作ることになったんだけど。
せっかくだし人数多めだと、レンジとやらでは分担しにくいから……僕がフライパンで炒める工程をお願いされた。ヘラでパラパラする感触がすればいいらしい……ざっくりな説明だけど、最初に食べた感じをイメージすればいいと思う。
逆に、アツシの方はちょっとだけ難しいから並べ方や、火の通り具合を見るらしい。蓋もせずに焦げ目だけで確認するのは初心者の僕じゃまず大変だってさ。
「あそこを、スマッシュする時!」
「まあ、わたくしが苦無でガツンと?」
「そーそーいいんじゃないかなって」
物騒な物言いが聞こえたけど、まあ二人は『スキル』『職業』を持つゲームキャラクターとやらだからね。アツシの撮影趣味とやらを手伝うには、これから他の魂宿りの子たちを起こそうかとも思ったけど。
『二つのキャラでどこまでできるか試したい』
って、意志の強さで他の子たちはお休みらしく。マリアーノちゃんにも『ようございました』って安心の言葉をもらったけど……ねぇ?
僕が君以上の推しキャラが増えることはそうそうないのに。ぬいぐるみでもざっと見たけど、マリアーノちゃん以上の子は見当たらなかったんだよね? だから、彼が僕の最推しだと思うんだ。
「ほい、出来た」
「こっちもかな?」
アツシとの料理も終わったところで、小さいテーブルを僕が魔法ですこーし引き伸ばした上に皿を置き。僕以外は『いただきます』って挨拶をしていたけど……細い棒二本で優雅にギョーザを頬張るマリアーノちゃんの顔に釘付けだった!!
「やはり!! 羽付きギョーザはここが一番ですわ!! 主さまが振ってくださった大粒の塩とのハーモニー……ニンニクなしなどいけません。このように、肉汁たっぷりのにはパンチがありませんと!!」
大層な反応に見えるけど、フォークで食べた僕でも美味しいと思える味わいだった。パリパリともちもち。あと、胡椒が惜しみなく使われてる感じがたまらないなぁ!! たしかに、肉を食べただけじゃって感覚がわかるかも。
「えーっと、ダイカだっけ?? ここと向こうの行き来はいいけど。マリアーノはユディさんについていくんだろ?」
「ええ、もちろん。貴方様のナルディアとのことも熟知した上でですわ」
「……あ、うん」
きっぱり言い切るけど、やっぱり『そーゆーこと』だったんだろうね? 男の子のぬいぐるみやねんどろいどが多かったけど……マリアーノちゃんも一応男の子だから手元に置いてたのかな? それかこれは神のお導きとやらだろうか?
「主さまの健康改善のためにも、このあとは皆さんで銭湯に行きましょう」
「待て! マリアーノ、お前男でもそれは!!」
「いい機会ですわよ? 丸裸の銭湯にお連れするのではありませんし、言い換えれば男女兼用銭湯ですわ」
「……そう」
アツシが慌てる何かがあったけど……とりあえず、出かけることになったみたい?? アツシも渋々頷かされてたし、どっちが主人と従僕だろうか??
次回はまた明日〜




