第5話 我が最推しとなる
マリアーノちゃんに魂宿りの契約を結んでいないのに?? 先に接触していたナルディアのように動いている??? アツシも驚いていたけど、僕はそれ以上に驚いていた!!
魂の繋がりが、異世界を通してあったにしても……僕とかの、いいや、『彼』とは。
何かしらの契約を交わしていたのだろうか?? にこにこと微笑んでくれているマリアーノちゃんは……僕が少し近づいても厭わずに笑ってくれているだけ。
「……主って、僕のことかい?」
『ええ、もちろん。わたくしの魂宿りの手前……ナルディアには先に試していただいたのだけれど。どうやら、わたくしの目に狂いはありませんでしたわ』
「……えっと、本当に男の子??」
『諸事情でこのような物言いですけれど。…………ボクの言葉じゃ難しい?』
「信じます!!」
なんというギャップ!! 深層の令嬢の如く、気品あふれた物言いかと思えば。親しみの持てる小姓くらいの言い回しまで。
思わず抱き上げて、頬擦りしてしまうくらいに愛らしくて堪らない!! こんな……こんなにも他の存在に歓喜を覚えたの、いつ以来だろうか?
生きる希望を失いかけ、終活しようだなんて馬鹿な考えが吹っ飛んだよ!! お風呂のおかげで気落ちもいくらか緩和しているし!!
「え、えぇえー? トリップというか、ユディさんと俺を引き合わせるのに。自分のねんどろいどを使ったわけ??」
『あら、篤嗣様。わたくしはあなた様のご希望も叶えるために、主さまをお呼びしたつもりでもあります』
うふふといっしょに頬ずりしてくれるマリアーノちゃんは最高に可愛い!! これがゴーレム素材じゃなくて……人の、もしくはホムンクルスであれば!! 僕は相手が男性であれど、恋してしまいそうだった!!
「ご希望? 俺が??」
『ええ。わたくしやナルディアのようなねんどろいどもしくはぬいにて……自在なジオラマ撮影をお望みだったでしょう? 主さまがいらっしゃれば、それは可能ですもの』
「……マジ??」
『代価はわたくしのみでも、異世界との行き来を。虚弱体質は、清潔面以外に健康的なお食事の指示くらいですから……わたくしのみが行き来出来れば可能ですわ』
「……いいの!? 俺、我慢しなくていいの!!?」
『ですってよ、主さま?』
「僕も元気になれるなら、いいよー」
安請け合いしたつもりじゃないけど……マリアーノちゃんといっしょにいられるならなんでもいいや!! こんなに可愛い男の子との共同生活。
向こうの僕の家は基本ひとりだし、二人で生活も出来るのなら……恩人でもあるアツシの趣味にはたくさん協力しよう!!
ということで、一旦マリアーノちゃんを連れてクローゼットから僕の部屋に。すると、魔法の光のようなのが彼を包み込んで。
「……ふふ。やはり、魔力との相性がいいでしょうか? 成人体に慣れましたわ」
可憐で可愛い美少女……じゃなくて、美少年らしいけど!! 人形じゃなくて、ホムンクルスになっちゃった!!? 魔力パターンを感知できたから、人間じゃないのはすぐにわかったんだけど!!?
僕がぽっかーんと驚いていれば、マリアーノちゃんはふんわり微笑んでから跪き、僕の手に恭しく口付けをしてくれた。
「……よろしくお願い致しますわ」
跪く時にうっかり見ちゃったけど……ちゃんと男性の証拠は見えやすかったです。はい。
次回は木曜日〜




