第30話 こっちも夢中になってほしい
「……あの、マリアーノちゃん?」
「ふふ。主さま? そんなに下がらずとも」
コラボカフェを満喫し、夕飯分もたらふく食べたから……あとは、お風呂とアツシの家でお互いの恋人をねんどろいどにしてから交代で入ったんだけど。
マリアーノちゃんは向こうの部屋に戻るなり、その……素っ裸で僕に迫ってきたんだよね!?
大事なところ全然隠れていませんが!? 男の子とわかってても、女の子のような色気も相まって、最高に好みなんですが!!? 初回じゃないにしても、僕……なんか、マリアーノちゃんの癇に障ることをしてしまったんだろうか?? これ、どっちかというと僕が二回目の『攻め』とやらをされているんだよね??
嬉しくないわけじゃないけど、僕の着ていた服をどんどん脱がされていくんですが!?
「あ、あの……マリアーノちゃん? 何故、もう……その気に??」
「だって。悔しいんですもの。似せたモノとはいえ、わたくしのコースター集めに夢中になるだなんて……わたくしを途中から放っておくくらい、篤嗣様と夢中になられていたのですから」
「あ、うん?」
「だから、お・い・た……ですわよ?」
「はい!!?」
放って置いたって、完全に放置していたわけじゃないのに……あれだと機嫌を損ねる行為になってしまった!? 撮影スタジオのときは何も言わなかったのに……あ、でも、カフェではたしかにアツシとノベルティのかぶりとかで熱中はしてた。つまり、この展開はその時の放置のし過ぎがお怒りの原因!?
あと、言われてみれば。ほかの席の人たちとコースターの交換してた時も……放置してたかも。それは非常に申し訳がありません!!
「……今更、反省なされてもいけませんわ。わたくしはすっかりその気ですの」
「ご、ごごご、ごめ……っ! いや、あれはたしかに!!」
「ふふ。今日は、わたくしの好きにさせてくださいましな? 昨日の主さまからの施しも……たしかによろしかったですが、わたくし自身が主さまを愛でるのも……わたくし、だぁいすきですの。眠り姫が王子様を誑かすのもよろしくなくて?」
「ぎゃ、逆?」
「昨日はリバーシブルでしたけど。でしたら、こういうお時間の主導権……わたくしにお与えくださいませんか? それでしたら、日常生活の方はお好きに」
「い、いや、それあんまりよくないんじゃ……?」
「だ・め?」
「その……」
「……主さま?」
「…………はい」
ダメです。激弱な僕です。元賢者がどうのこうのであれ、根本的なところは病弱だった頃のままだから……相手の押しにはめちゃくちゃ弱いです。頷くと、まずは軽いリップ音からの口づけから始まったのだ。
「……お口、いいですか?」
「…………うん」
昨日は、僕の嫉妬からの勢いで奪ってしまった柔い唇。それが、今度は僕を蹂躙する魔導具のように、くちゅくちゅと動く様がとても艶っぽくて色っぽい。本物の女性との口づけも一切したことがないのに……まるで、女性との濃厚な口づけをしている気分になって、興奮してくる。
ああ、僕の下の方が物凄く熱くなってきた……。
「……ふふ。蕩けていますわね? じゃぁ、舌と『下』も」
「うん。……気持ち、いい」
舌が魔物の触手のように、僕と絡んでは蠢いて……心も身体も気持ちがよくなっていく。さらに、手はさっきから熱く硬くなってきた下の方に延ばされ……そろそろ、とやわらかくタッチする感覚でさらに気持ちがよくなってきた。
とにかく、マリアーノちゃんに主導権を奪われるのに、若干の罪悪感はあったけれど。任せると気持ち良すぎて止められなかったので、その夜の褥はさらに熱く……至高と言えるくらい蕩けていく。
次回はまた明日〜




