第3話 魔法とは微妙に違う
微弱な魔力で核を刺激してみれば、『お?』とこもった声と同時に桶の中で関節を動かし出す。ぐるぐる回して問題がなければ、桶の中で転ばないように、ナルディアが敬礼をし出した。
『これはこれは。まさか、他所の世界から賢者殿が来られるとは』
「元、だけどね? 君の中に、『魂宿り』がきちんと成されていたのは驚いたよ。普通、魔石が必要なのに」
『ああ、それは。我が所有者の篤嗣様がいらっしゃるからでしょう。魔力ではなく霊力が少し高く……我々を少し大切に扱ってくださるだけで『付喪神化』出来るのです』
「つく、も?」
『賢者殿の言う魂宿りと同じ意味合いかと。ふふ、まさか俺を推薦してくださるとは』
全然知らないでいたけど、アツシには魔法使いか何かの素質はあるらしい? それを使うことなく、稼働を可能に出来る魔力源の『魂宿り』を感知してなかったようだ。そこそこ『賢者』の任が長かった僕でもわかるのになあ??
「ユディさん? 溺れ……た??」
ただ、ナルディアとの会話は外に聞こえてしまったのか。扉を開いて僕らを覗き込んだけど、また敬礼し出したナルディアを見て目を瞬かせた。
『篤嗣。我がマスター。まさかこのように言葉を交わせるとは』
「え、あ……ぇえ? ユディ、さん……なんかした??」
「いやごめん! ナルディアの中にあるものを刺激したら……こう」
魔法がない世界らしいので、説明が少し難しかったけれど。まだ湯船から出たくないので、ゆっくりゆっくり説明してあげれば……納得はしてくれたようだけど、どこか認めたくないのか頭をがしがしと掻いた。
『保存用ではなく、観賞用の俺を……がタイミング良かったのでしょう。マスターの想いが篭ったこちらで、ユディ殿の魔法の相性が良かった。これで、マスターの趣味に大いに役立てます』
「アツシの趣味? 作るとかじゃないのかい?」
『いいえ。マスターの趣味は『撮影会』です!! ぬいや俺のようなねんどろいどの撮影を色々したいのが趣味なのです!!』
「おぉ……よくわからないけど、楽しそう」
「……マジで、出来んの??」
そろそろのぼせそうだったので、タオルを借りながらの会話だったけど。アツシは桶ではなく直接手に乗って動くナルディアに感動したのか、背中から見ても喜んでいる雰囲気だ。
「……ナルディアが言うには、君には魔力じゃない力があるおかげらしいよ?」
「いやでも! ユディさん、すっげ!! 人形動かせたってマジで魔法!!」
「…………じゃあ、僕にももっと人形たちのこと教えてよ。他にも魂宿りの出来る個体がいるかもしれない」
「うん!! あ、服とか洗濯機回してるから、俺の適当に着る?」
「……だねぇ」
ないと思えば、わざわざ洗濯しておいてくれてたらしい。ちょっとだけ粗忽者だけど、可愛いものとか好きなのは共通らしいから嬉しいなあ。
髪も魔法じゃない道具で乾かしてもらってる間、ナルディアが『候補』のぬいぐるみだったりねんどろいどって同じ個体を探してくれてたよ。
次回は火曜日〜




