第25話 撮影会企画
今日アツシの大学とやらは授業が入っていないから、実質休みの日らしい。大学がなくても、この家の賃料などを払うために、『アルバイト』とやらをしているそうだけれど。今日はたまたま何にもない日。
だったら、とアツシは携帯じゃない大きな板みたいな道具を使い、僕らに『画像』とやらを見せてくれたんだ。
「当日でも時間予約だけすれば行ける撮影スタジオってのがあんの。俺みたいにいろんな推し活しているひとたちが使う場所、って思ってくれればいい。等身大でマリアーノとナルディアの写真いっぱい撮れるんだ。ユディさんも撮影側でよきゃ、いっしょに行かね?」
「……マリアーノちゃんの素敵な写真がいっぱい撮れるってこと?」
「うん。認識はそれで大丈夫。準備したいし、昼過ぎの枠……枠」
「まあ、素敵ですわ!」
「この姿のままか、いいのが撮れるように手伝いますかねぇ?」
だんだん、ナルディアが言葉の言い回しが素になっているけど。まあ、それは特に気にする必要性はないので。アツシが予約が取れた時間に合わせて、今度は服の準備とやらだけど。そこで僕の魔法を使ってもらえないかのお願いをされたんだ。
「俺が手作りした服、いっぱいあるだろ? いくつかでいいんだが、補正しようにもでっかくしてもらいたいんだ」
「……ねんどろいどの撮影のときに、僕が綺麗にしたから?」
「そう。無償にはさせないから、スタジオ代金は俺が全部払う。もともと、そういう資金は別で貯金してたから気にしないでくれ」
「あ、うん。それなら」
僕もマリアーノちゃんをたくさん撮るのに、ちょっと強面だけど律儀な青年だ。弟子のひとりにもこういう子いたけど……彼は彼で、立派な賢者見習いになれているだろうか。最後に会ったのも数年前だった。
とにかく、先にマリアーノちゃんに来てもらいたい服をいくつか選び。あとでもとの大きさにもどせるような魔法の操作をしつつ、整えてあげれば。
「うぉ!? 俺の作った服がそのままコス衣装に!?」
「コス?」
「衣装用語、だね。篤嗣が言っているのは『コスプレ衣装』の略称だよ。こっちの世界じゃ、普段は今着ているようなラフな格好が主流だし。貴族階級とかもないから、王族の子孫はいてもこういう格好は行事でも滅多にないよ」
「……ありがとう、ナルディア。そうか。僕の世界でも騎士とかは務め以外でこんなにも派手なのは着ないね?」
「主さま! 一度着てよいでしょうか?!」
「僕ら全員男だけど、後ろで着替えてね?」
「あら、気にせずとも」
「僕が気にするから!」
もとは、アツシの所持していた人形だったとしても!! 今は僕の恋人だから全員男でもほかの男に裸は見せたくありません!!
とりあえず、アツシが選んだのを軽く試着してからほつれを見つけては直すを繰り返してたら……あっというまに移動時間がせまってきたので。衣装はアツシのアタッシュケースという移動鞄に丁寧に入れてから、皆で家を出た。
まだアパートの外には銭湯以外でそんなに歩いてなかったけど……石畳じゃない地面の上で歩きやすい靴は楽だなと思った。
次回はまた明日〜




