第23話 元賢者の賢者タイム
懺悔をしてもいいでしょうか、神よ。
もともと信仰心はそこそこあったつもりだけど、久しぶりに礼拝堂に行きたい気分になりました……。隣の愛しい子を置いて出かけるだなんてしないけれど。
まだ眠っているマリアーノちゃんにしっかり布団を被せ、僕も下のズボンだけ履いてから、また大きくため息を吐いた。
(……強引に同意させてしまったとは言え、うまく出来たか自信がない!! あと、喜んでもらえたかも!!)
まだ二回。
しかも、出始めがお互いこれで一回ずつ。男娼を買う意味では合っているかもしれないけど、マリアーノちゃんは僕に売春を買わせる相手じゃなくて、『恋人』だ。
お互いの気持ちも、行為の前にきちんと確認したけれど……良かったの?あれで良かったの?!僕無理矢理過ぎなかった!!?と、終わってから今までぐったりと寝てしまい……起きた現在、めちゃくちゃ反省しています。
この部屋には、アツシのとこにあるような風呂場はないし。身を清めようにも魔法を使うだけでは、気分が整わないだろう。
けど、アツシのとこも今どうなっているか……聞いてもいいかわからないし、マリアーノちゃんを起こして向こう側を確認してもらうのも、なあ……。
どう考えても無茶させたのは僕の所為。彼が起きたら、ちゃんと謝罪してホムンクルス化だけど身体を調べさせてもらえれば……強化とかした方がいいかなとか考えるな僕のバカ!!
(そりゃ、自分の嫉妬からの勢いだったし……楽しんじゃったのは自覚あるけど。けど! マリアーノちゃんを壊しかねないような体格差があるんだから!! もっと相手を気遣えって、師匠にも幼い頃に指導受けたじゃないか!!)
孤児だった僕が、元でも『賢者』と呼ばれるまで魔法使いではのし上がって……今は隠居しているけど、終活まで考えてたくらい弱っていたのに。この生活は楽し過ぎた。
快楽だけじゃなく、今まで培ってきたものを活かせるような『魔法』を『好きなこと』に打ち込めるのが。その過程で、マリアーノちゃんに出会えたんだし……アツシにもまだ恩返しほとんどしてないから、ちゃんと出来得ることはひとつずつ解決していこう。
なので、マリアーノちゃんを起こそうとしたら。
「ふふ。難しいお顔で反省会ですか? 主さま」
既に起きていたのか、僕の反省会を眺めていたのか。僕が振り返れば、軽く唇に口付けてくれた……。やっぱり、アサシンっていうくらいだから寝たふりしてたんですね。寝顔見せてくれて嬉しかったけど!!
「……主、というか魔法使いとして聞くけど。肉体の不調はない……かな? 昨夜はその、僕からだったし」
「問題点ですか? 体液交換はもちろん、体重負荷とか多々ありましたが。精霊ベースの肉体ですので、回復魔法は順当に作用しておりますの。お気になさらずに」
「……本当に? 無理してない?」
「でしたら、わたくしの肉体に流れる『血脈』をご覧になられれば?」
「あ、そっか」
魔力の流れと同等の肉体面での血の流れ。詰まりや細くなることで、身体の不調を調べることが出来る。普通は医師クラスじゃないと出来ないが、僕は賢者だったので『視る』ことが出来なくもない。
意識と魔力を結合させて、マリアーノちゃんをジーッと見つめれば……肉体の奥にあるたくさんの赤く流れている模様に、詰まりは見当たらなかった。
「ふふ。そのご様子ですと、問題ありませんでしたわね?」
「……うん。びっくりしたけど、ホムンクルスでもほとんど人間と変わりないね」
「ですが、ナルディアはあのままでは老化とやらには至らないでしょう。昨日伝えたので、篤嗣様とお話されているかもしれません」
「そうだね」
ちゃんとお互いに着替えようと、僕は詠唱破棄して魔法を二人分かけて。最後にもう一度、お詫びも込めてキスを送った。
「お互いがお互いを。想い合う気持ちでの行為に不満はありませんわ」
とも言ってくれたので、感動しながら召喚扉を開けるのだった。
次回はまた明日〜




