第20話 いい加減推しのゲームを
「買取に出さなかった昔のスマホ。初期化してたから、ストレージ足りるな」
「……よくわかんないけど、僕もゲームが出来るようにしてくれるんだよね??」
「そりゃ、あんな宝もんを譲ってもらったら。俺もなんかするって。デジカメ以外になら、複数持つよりスマホ一台あればじゅーぶん」
アツシがいい加減、僕にマリアーノちゃんたちが登場するゲーム『スカベンジャー・クロニクル』って言うのを体験させてもらえるらしく。
今、機材とやらが何かないかと彼が探した結果。マリアーノちゃんたちもいっしょに探した上で見つけた『古いスマホ』で、初期設定なるものをしてくれているらしい。
僕はまだまだ現代人とやらの魔法でない技術には全然賢者にもなれないから……マリアーノちゃんが食後の歯磨きを終えてから、ずーっとぎゅっとされている!! ふわふわだから!! 口からミントのいい匂いするから!! 耐えろ、僕!!
「ふふ。バージョンアップされましても、初代の『スカベンジャー・ハント』から色々キャラクターが増えた以外、奏者くらいの共通点ほとんどですわ」
「……なんかの称号?」
「はい。わたくしの武器となる苦無は、この銀の足し毛が『媒介』と呼ばれておりますの。要するに、魔法の武器と似た意味合いですわ。詠唱も必要としますし、現代のゲームで魔法や魔術は扱えないからこそ……羨望の的になりますの」
「……僕の正体がバレたら、一大事だね」
「ええ。ですが、わたくしのいる限り御命お守りさせてください」
「ありがとう」
最後、少し含みがあるような言い方に聞こえたけど。マリアーノちゃん以外にパートナーは考えられないから、そこは間違っていない。うん。
「よし。クリーンナップも出来たし、必要最低限のアプリも入れた。ユディさん、渡すから俺の言う通りに指で画面叩いてみて」
アツシに渡されたスマホとやらは、アツシのより少し大きな板のように見えた。けど、大事な機材とやらなので落とさないように最初は両手で持つ。重さに慣れたら、利き手で画面を軽く叩けば。
言われた『アイコン』の人物は部屋にいる二人じゃなかったけど、一応叩いてみる。画面が黒くなったかと思ったら、どんどんいろんな映像というものが流れてきた。
僕の世界にいた冒険者や魔法使い。王族や騎士とかに似せた服装の彼らが、戦ったり仲良くしている映像がしばらく続いたが……止まったかと思えば、ひとりの少年みたいな子が『初めまして、奏者よ』と文字と声同時に動き出したんだ!
「……これは導き手??」
「ナビだけど、結構重要人物。ここでは最初に相棒選ぶなんだが……ナルディアもマリアーノも特殊レアキャラだから、ガチャ引かないと出ないんだよな?」
「えぇえ!?」
せっかくだから、最推しのマリアーノちゃんがいいのに!! なんで最初から彼で遊べないんだ!!? 普通にアツシの部屋にいたからゲームだとすぐにいると思ったのに!!
「あら、でしたら。ガチャでこのナビの『イバラキ』を是非ゲットしてくださいましな。わたくしとの会話ストーリーが割と多めですの」
「……ほんと?」
「ガチャだからランダムだけど……そこも魂宿りって言うのでいじんのか?」
「さすがに難しいですわ」
「候補出しただけっしょ。他は……『サカキ』とかか?」
「女性キャラですと、『キリハラ』もですわね」
僕ひとり、少し置いてけぼりにはなっていたけど。とりあえず、チュートリアルとやらを進めてから、その『綺羅ガチャ』というので相棒になるキャラクターを一体無料で引けることが出来るんだって。
(……なるべく、マリアーノちゃんに近い何かを!)
蔑ろにはしたくないけど、楽しい子だったらいいなあ……。
次回はまた明日〜




