第18話 ぬいぬいまみれの撮影会②
ああ……僕は至福の時間を覚えてしまったよ。
今まで魔法使いとしてはそれなりの業績を残してきたのに。こんな……こんな簡単にも、魔法だと少し手間のいる『風景保存』がたっぷりと小さな銀箱に入るだなんて!!
ホムンクルス化のままのナルディアには教わったけど、収納しておく魔法の板が仕込んであるため。水濡れなど、破損に関わらなければ半永久的に保存可能らしい。
これは!! 淫らにマリアーノちゃんの『画像』とやらを自分だけで楽しむのに……わざわざ印刷する必要がないときた!! アツシのような、スマホがあればもっと簡単かもしれない。
お金は工面できるくらいあるけど……なんか、身分証が必要らしいからちょっとだけ残念な思いが。
『主さま? わたくしだけでよろしくて? せっかくナルディアもいますし、昨日のような風景は再現出来ますわ』
「だって? どーする?」
「そうだね。ただ、闘う場面は僕そんなに」
「うーん。俺とかマリアーノ入れた『スカベンジャー・クロニクル』は基本的にバトルアクション以外……ストーリーモードが多いようで少ないしね? 二人だけだと再現には物足りないし……かと言って、他の魂宿りしてる連中起こしても」
『では、その再現のようにもちぬいを配置してみては? 主さまは初心者ですもの』
「あ、そだね。俺らが配置しちゃえば」
ぽんぽんと二人の会話が進んでいき……もとのねんどろいどサイズになって、衣装を着替えたナルディアとマリアーノちゃんはテキパキともちぬいたちを配置していく……??
ゲーム、というのは遊戯って意味らしいけど……どんなのかはあとで遊ばせてもらえるか、アツシに確認するとして。二人が配置を終えた頃に、決めポーズがあったから僕はシャッターを切った。
「どんな感じで進めていくの??」
『主さまは、わたくしたちのゲームでは遊んでいませんので。少しわかりやすい『軍議シーン』を再現しますわ。台詞はわたくしとナルディアで他のキャラクターの分は負担しますわ』
『ハルヴァスとジーニアスが俺?』
『では、リシャロスとファルクはわたくしが』
「……話し合いだけ??」
『動きはなんとなく入れるよ』
『あとは、主さまのお好きなタイミングで』
「はーい」
そこからどうなるかな、と観劇みたいでいいかとウキウキしていたんだけど……想像以上に、真剣な軍議の再現に魅入ってしまった!! シャッターは時々……押せていたと思うけど!?
『ジースティルン国の馬鹿野郎に、お痛……ねぇ?』
『愚か者の制裁? ぬるい仕打ちは致しませんわよ??』
『おいおい、マリアーノ? 俺ら雇われ人なんだから、適度でいーんじゃね?』
『うふふ。暗殺を担うわたくしのように、裏のドブ水の味を知っている者には……上からのお達しを考慮していましてよ?』
『…………マルス、こっわ』
『……本名、何故今言いました?』
なんか、すっごくマリアーノちゃんの演技??いや、ゲームとやらでは喋ってた言葉のまま?? 心臓がズキュンと打ち砕かれた感じがするんだけど!!?
冷酷な微笑みもなんだか麗しく見えて、シャッターが止まらないよ!!
次回はまた明日〜




