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偽装告白の行方は?

本日の3回目の更新です。

……………………


 ──偽装告白の行方は?



「この先だ。あとは任せたぞ、東雲君」


「お、おう」


 どうしてこうなったのか納得いかないところはあるが、俺はこれからバスケ部のマネージャーである熊野先輩に告白する。


 これも高雄さんが羽黒さんを守りたいという思いのため。俺の中で羽黒さんとの思い出が走馬灯のように流れる────。


『ギガトリプルヘッドシャークタイフーンってタイトルなのにいつまでもサメ出てこないし!』


 あのときの羽黒さんの映画選びのセンスには絶望したな……。


『はい。唐揚げひとつあげる』


 俺=唐揚げひとつの等価交換にはびっくりしたな……。


『何か似てるよね、私と芽衣ちゃん』


 思い込みが激しいのには呆れたな……。


『私、全然えっちな話とか興味ないから! 全然興味ないから!』


 同人誌に興味示して自爆したのは可哀そうだったな……。


『で、でもさ。正式な告白までにイベントや好意を積み重ねていきたい思いもあるし……。それにそういうイベントを飛ばして、いきなり告白してフラれるのも怖い……』


 それでいて阿賀野には慎重すぎる辺りはおかしいな……。


 いや。ちょっと待て待て。俺、羽黒さんにろくな思い出がないぞ……?


「東雲君?」


「だ、大丈夫だ。行ってくる!」


 俺は『もしかしたら俺凄くどうでもいいことのために恥さらしになってない?』という邪念を振り払って体育館裏へ。


 そこには既に熊野先輩が待っていた。


「ん? 君が私に用事って言う1年生?」


「は、はい!」


 怪訝そうに話しかけてくる熊野先輩に俺は頷く。


 制服姿の熊野先輩はジャージのそれのときとは印象が違って、凄く可愛く見える人だった。おっとりとしていた優しげな印象が強く残る。そんな人だ。


 俺は今からこの人に告白するのである。


「用事って何かな?」


「あの、ですね」


 ここで躊躇っても仕方ない。覚悟を決めろ、東雲蒼空!


「付き合ってください!」


 がっと頭を下げて俺はそう告白した。


「えっと……。これまで君と何か接点あったっけ……?」


 凄く戸惑った顔でそういう熊野先輩。


 そりゃそうだ。見ず知らずの1年がいきなり告白して来たら、熊野先輩だって困惑するだろう。この作戦やっぱ滅茶苦茶だったぞ!


「陰ながらバスケ部のマネージャーしてるところ見ました! それで、選手に優しい熊野先輩のことが好きになって……」


 俺は急遽好きなった理由をでっちあげて熊野先輩に伝える。


 天竜がいつか言っていたな……。『お前、ときどき息するように嘘つくよな……』って……。今となっては否定できないぜ……。


「そっか! けど、ごめんね。お付き合いはできない、かな」


「やっぱり好きな人がいるんですか?」


 俺が聞きたいのはこれだし、高雄さんが聞きたいのもこれだ。


「うん。一応好きな人がいてね……」


「それって同じバスケ部の……?」


「知ってるの?」


 熊野先輩が驚いた表情を浮かべて俺の方を見つめる。


 まさか本当に阿賀野と……? あいつマジで浮気している女の敵だったのか……?


「それは────」


「そうなんだ。バスケ部の部長の龍田(たつた)君が好きなの」


「え?」


 龍田・イズ・誰?


「龍田君はひとつ上の先輩でね。バスケ部のマネージャーになったのも彼が部長になったからだし。そういうわけだから本当にごめんね! 君の思いに応えられなくて!」


「あ。いえ。こちらこそ申し訳ない」


 熊野先輩が頭を下げるのに俺もペコペコと頭を下げる。


「じゃあ、君の次の恋が実るように陰ながら祈ってるよ」


 最後にそう微笑んで熊野先輩は去った。


「……滅茶苦茶いい人だったな……」


 見ず知らずの人間が突如として告白してきたのに嫌な顔をひとつせず、逆に俺の恋が実るように祈ってくれるとか。もしや、熊野先輩はこの世に舞い降りた天使ではなかろうか……?


「東雲君、どうだった?」


 俺がそんな感慨に浸っていると、高雄さんがやってきた。


「ご安心あれ。熊野先輩は阿賀野に欠片も興味なかったよ」


「本当か? しかし、振られたのだろう?」


「好きな人はいるけど阿賀野じゃない。別の先輩だった」


「そうなのか……」


 何やら考え込む高雄さん。


「となると、伊織は何故そこまで真剣に凛と付き合わないんだ?」


「それは俺に聞かれてもわからん」


 恐らくその問いは『生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え』を計算できる計算機でも算出するのは難しいであろう。


 あいつ、マジで分かねーもん。


「何だか東雲君を含めて方々に悪いことをしてしまったな……」


「熊野先輩、本当に無関係だったしな。まあ、疑問は解けたからいいだろう」


「一番迷惑をかけたお前がそう言って許してくれるならありがたい。だが、今日も飲み物ぐらいなら奢るぞ」


「ラッキー。じゃあ、奢ってもらおう」


 俺は高雄さんについていき、中庭の自販機に向かう。


「ん。古鷹?」


 そこで俺は中庭に古鷹がいることに気づいた。


「そうだった。すまん、古鷹。今日も昼飯、作ってきてもらうはずだったのに」


「ううん。しののめっち。何も言わなくていいんだよ」


「???? 何の話だ?」


 突然、仏様のように慈悲深い視線を向けてくる古鷹。困惑する俺。


「しののめっちに好きな人がいたなんて知らなかったぜ。けど、その、どんまい!」


 古鷹はそう言って俺の頭をぽんぽんと叩く。


 あれ? ひょっとしてさっきの見られた…………?


「いや待て。あれは、その、何と言うか……」


「深くは聞かないから安心しろって。それから今日のお昼はこれね」


 そう言って古鷹はラップされたサンドイッチを取り出して渡してくる。


 ううむ。誤解を解いた方がいいのだろうか? でも、下手に古鷹に話して高雄さんが企てていたことがばれると俺の立場もまずいことになるしな。


 正直、熊野先輩に告白したのは恥じていない。実際に付き合いたくなるほどいい人だったし、振られたあとも馬鹿にされたりしなかったし。


 というわけでは俺は自ら勇気を振り絞って告白したということにした。


「まあ、あれは男の勲章みたいなもんよ」


「またまた見え張っちゃって。傷ついたなら古鷹さんが慰めてあげてもいいんだぞ」


「遠慮します」


 俺は古鷹がからかうが、そんな挑発に乗るほど俺は安い男ではない。


「……本当に慰めてほしくなったらいいなよ?」


 それに対して古鷹は冗談なのか本気なのかよく分からない口調でそう言っていた。


「言わんて」


 俺がそう返したとき、高雄さんが俺の肩をとんとんと叩く。


「東雲君。事情を話さなくていいのか?」


「これは俺たちだけの秘密にしておこう。いろいろな人の名誉にかかわる」


「う、うむ。そうだな」


 俺が声を落として言うのに高雄さんが慌てて頷く。


 熊野先輩、優しくても一応先輩だから冗談で告白したってバレると怒られると思うのだ。それこそ怖い先輩を引き連れてきてぼこぼこにされるかもしれん。


 そう思えば内緒にしておくが吉でしょう。


「忘れそうになっていたが、飲み物を奢らせてくれ。そのサンドイッチに合わせるならコーヒーか?」


「ああ。アイスコーヒーね」


 高雄さんが尋ねるのに俺はそう返し、古鷹の隣に座った。


「ねえ、しののめっち」


「何だい、ふるたかっち」


 古鷹が声をかけてくるのに俺はそう返す。


「何でもない」


 しかし、古鷹はそう言ってによによしていた。


 こいつ、まさか俺が振られたのをネタにして楽しもうってつもりじゃないだろうな?


「人の不幸を笑うなよ。いつか自分に降りかかるぞ」


「笑ってないぜ~?」


「嘘つけ」


 俺は古鷹にそう返し、高雄さんが戻ってくるのを待った。


……………………

本日の更新はさっきで終わりだといったな。あれは嘘だ。


すみません! 溜め回のまま放置すると心配なので投稿させてもらいます!


では、面白いと思ってくださったら評価ポイント、ブクマ、励ましの感想などお願いします!

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