《光年の囁き──検閲下の共鳴詩学》
言葉の仮面舞踏会
鉄の幕が夜の帳を下ろし、
言葉は鎖に繋がれた鳥となる。
それでもなお、影の隙間を縫って、
囁きは風に乗り、星へと跳ねる。
検閲の刃は冷たく鋭く、
真実を切り裂く月の鎌のよう。
けれど、心は密やかな階段を昇り、
禁じられた窓辺で愛を歌う。
ロミオは鍵のかかった塔の下で、
ジュリエットは鉄格子の向こうで、
言葉という薔薇を手に握り潰し、
血と棘をまといながら手を伸ばす。
壁は耳を持ち、風は裏切り者、
それでも二人の声は川となり、
監視の目を泳ぎ越えて流れ、
夜の海でひそやかに抱き合う。
検閲は嵐、意見は灯火、
吹き消されぬよう息を潜めて燃える。
ロミオとジュリエットのように、
禁断の果実を分け合い、永遠を誓う。
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Yohaku Tamago’s whisper in silence.
『仮面の解纜』
鉄の幕の裏側で
言葉たちが
鎖を
踊りの鈴に
鋳直す夜
検閲の鎌が
月のふりをして
穂を刈る間も
密やかな階段では
愛が
禁じられた文法で
辞書を書き換える
(ロミオの血はインクに
ジュリエットの棘は
カンマに変わり
壁の耳を
すり抜ける
川の五線譜が
完成する)
『灯火の生態』
意見という蛍が
監視の網に
触れるたび
一度死んで
その死骸の
発光器だけが
また点滅し始める
── これが
私たちの
進化の
過程です
『永遠の契約書』
禁断の果実の
種を
舌の下に
隠したまま
キスするたび
検閲の嵐が
通過後の
静寂で
芽吹きの
音を
増幅させる
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星屑の反響
『鎖の旋律』
鉄の幕が鐘を鳴らす夜、
鎖は鎖であることを忘れ、
踊りの鈴に姿を変える。
言葉たちは仮面をつけ、
検閲の目を鏡の裏に隠し、
星の粒子となって舞い上がる。
『蛍の遺伝子』
監視の網に焼かれた蛍は、
灰の中で光の卵を産む。
死骸の発光器が脈を打ち、
闇を切り裂く遺伝子の歌となる。
進化は静かに、けれど確実に、
網の目をすり抜ける羽を編む。
『舌下の森』
禁断の種は舌の下で眠り、
キスの湿気で根を張る。
検閲の嵐が過ぎ去ったあと、
静寂は土となり、芽吹きは樹となり、
言葉の森が空を突き破る。
その枝に、ロミオとジュリエットが腰かけ、
永遠を笑う。
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Yohaku Tamago’s whisper in silence.
『星屑の黙示録』
第一幕:鎖の天文学
鉄の幕の裏側で
銀河が鎖の長さを
測り直している
── ひとつぶの鈴が
天の川の
星座線を
書き換える夜
検閲官たちは
鏡の向こうで
自分たちの影を
逮捕し続ける
第二幕:蛍の考古学
監視の網に引っかかった
光の化石が
発掘される未来
灰の中から
新しい目が
孵化するたび
闇の地層が
一枚
透ける
第三幕:舌の気象学
種が口内で
天気図を描き
「今日の降水確率」を
唾液で伝える
嵐の通過後
静寂の土壌から
言葉の菌糸が
電波塔を
優しく
絞め殺す
終章:共鳴の相対性
ロミオとジュリエットが
笑い声を
光年単位で
遅らせながら
地球という監房の
壁に
耳を当てる
(その振動は
鉄の幕を
星屑の
打楽器に
変えた)
◆共鳴するリズム
・「鋳直す鎖」=制約を芸術に転化する創造性
・「死骸の発光器」=弾圧されても消えない本質
・「舌下の種」=身体に刻まれた抵抗の記憶
◆共鳴する波動
・「鎖の旋律」=抑圧が逆説的に自由の音を生む瞬間
・「蛍の遺伝子」=死を超えて継承される抵抗の力
・「舌下の森」=内なる種が外へと広がる生命の連鎖
◆宇宙的連鎖
・「星座線の書き換え」=支配的な物語の更新
・「光の化石」=未来に発見される現在の抵抗
・「言葉の菌糸」=柔和で確実な侵食
・「光年の遅延」=抑圧された愛の相対性理論