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地球が完全な球体ではないように。

途中で小説のデータが飛んだのでかなり焦って書きました。ミス、矛盾等かなり多いかもしれません。

「おーい翼~」

「んん...?」


 重たい瞼を引き上げて回りを見渡そうとするも、

愛の髪に視界を遮られてなにも見えない。働くのを執拗に拒む脳を

むりやり回して気を失う寸前のことを思い返す。

確か人間界に行こうとしたら勢いで空に投げ出されて―――

ああ、それでそのまま死んだのか。


「おっ、起きた。」


 そういって愛が立ち上がり、髪のカーテンから視界は解放された。

改めて周りを見渡すと、どうやらここは天界ではない。

直接目に入る照明に目を細めつつ身体を起こすと、見知らぬ男が

顔を覗き込んできた。


「うわっ誰ですか貴方。」

「初対面なのに冷たくない?この非常識。」


 男はむすっと頬を膨らませる。初対面の相手の顔を間近で覗き込んでくるのも

かなり非常識だろうが。でかい図体に見合わない幼稚な仕草に呆れつつ

男を押しのけようとする。が、どれだけ力を入れてもびくともしない。


「おっ俺の胸筋を狙うとはお目が高いな?」

「は?」

「お前の胸薄っぺらいな~」


 唐突に無い胸を揉まれて不快感で喉の奥からうめき声が出る。

なぜ俺は初対面の男に胸を揉まれなければならないのだろうか。

手を引きはがそうとしても矢張りびくともせず腹が立ってくる。


「おふざけは置いといて治ったなら早く出てけなのです。」

「そんなにツンツンしなさんな、いろはちゃん。

 天使(ひと)が増えたほうが賑やかでいいじゃない~」

「...夢音がいいなら仕方ないのですけど...」


 少女――天使なので少女という年齢でもないか。細かいことはさておき

どうやら俺はこのいろはという少女に助けられたようだ。いろはの

ジトっとした目つきとは対照的に穏やかそうな夢音と呼ばれている女が

指に髪を巻きつけながらいろはをなだめる。


「迷惑でしょうし、すぐ出てきますんで...」

「いいのよいいのよ、外は危険だから此処に居たほうがいいわ!」

「えっ、危険?」

「外は穢れてるから、ずっといたら死んで戻れないわよ?」


 唐突に恐ろしいこと言われ、背中が氷のように硬直する。

とはいえ神様に穢れた人間を殺せと言われているので外に出なくては

ならないのだが...決まりが悪く目を伏せるといろはが口を挟む。


「夢音はサボリ天使()だから知らないのでしょうけど、

 人間界来るときにその穢れを少しでもどうにかしろって言われたのです。」

「ふうん。」


 興味なさげに夢音が首をかしげる。


「この子は殺しちゃうの?」

「この子?」

「時と場合によるなのです。」


 なんのことかわからず皆が目線を運んだ先に目を移す。

横で寝ていたのは天使ではなく人間、童顔だが子供ではなさそうだ。

穢れという程禍々しい雰囲気は彼から感じられない。


「殺さなくてもいいだろ、なあいろは~」

「へっ!?まあ水希がいうなら...」


 ぽっといろはが頬を赤く染め、恥ずかし気に目をそらす。

ああ、お前らそうなんだな、ああ、そうなんだな。ああ。

あからさまに照れるいろはに呆れに近い感情と共に居心地の悪さを感じる。

 「ごほんっ!」とわざとらしく咳払いをして愛が口を開く。


「と、とりあえず人が多いところに行けばわかるはずだよ!

 きつくなってもすぐ人気のないとこに行けばいいだけだし。」

「まあそうですね。」


 いろはが何か言いたげだったが気に留めず、立ち上がりドアに向かう

愛についていく。


「それじゃあいろはちゃん、いってらっしゃい」

「は!?なんで私が危険を冒してまで行かなきゃならないのです...」

「私が自ら危険を冒すわけないじゃない」


 いろはと夢音が数秒見つめあう。夢音の無言の圧に押されて渋々

いろはが俺の後ろに着く。


「いってらっしゃい、いろは。」

「...いってきますなのです。」


 相変わらずチョコがすぐに溶けてしまいそうな熱く甘い温度の

何かを送りあう水希といろはに呆れつつ先に進む愛を追いかける。

階段を上がると少し長い廊下が広がる。壁に貼られたポスターには

露出度の高い服を着た―――これ以上見てると愛といろはに殺されそう

なのでやめておく。細い道から大きい通りに出ると一気に車や人が

増える。じゃれあいながら歩く小学生二人組、物憂げに虚を見つめ歩く

青年、様々な様子の人間達と次々にすれ違う。

一方、俺はというと道を滑る影をぼんやりと眺めながら歩いている。

道をゆく人間を観察していると、愛がいきなり道端にしゃがみこむ。


「だっ大丈夫ですか?」

「だい、じょうぶっ...ちょっと苦しいだけ...」


 愛の取り繕うような笑顔が余計に痛々しい。たどたどしいその声は

俺に、というよりかは愛が自分自身に言い聞かせているようであった。

目が潤んでオパールのような瞳が揺れるたびにきらりと光る。

美術品のように作られたような美しさに見とれてしまう自分が憎い。


「ちょっと、突っ立ってないで薬カバンから出すまで愛を

 介抱するのです!」

「あっはい。」


 恐る恐る愛の肩に手をかける。プリズムの髪がふわりと羽のように揺れる。

愛が震えながらも俺の手首を掴んだ。その手はすごく冷たくて、それでも

確かに脈打っていて弱弱しい。

 ふと見上げると人間達は俺たちをちらりと見たと思えばすぐに通り過ぎて

ゆく。仕方のないことだ、人間に十分関わってきた俺が驚くことでもない。

ただ、どうしようもないやるせなさが心に引っ搔き傷を残してひりひりと痛む。

 愛の手を強く握ったその瞬間―――ぱき、天使(ひと)からとは思えない

無機質な音がする。音がしたのは間違いなく愛の手。


「うそっ、いやだ、ああっ...」

「愛、早く薬を飲むのです!」


 愛の煌びやかな瞳が大きく揺れる。これ以上のない恐怖を表情にうつし

震える姿は迷子の子狐のようだった。

 いろはが薬瓶のふたを開けようとするうちに愛の手から蒼が染み出す。

愛が手をいろはに差し出した勢いで蒼い血が飛び散る。


「痛っ!?」


 声がしたほうを見上げると薄桃のワンピースを来た十歳後半ぐらいの少女が

顔をしかめていた。

足元には愛の血がついていて、その足は酸をかけられたかのように溶けていた。

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