ホワイトデーに贈るものは気をつけなければならない
ハロー。
突然ですが、俺は一ヶ月前のバレンタインデーでクラスメイトのあめちゃんこと雨木愛莉からバレンタインに本命チョコをもらった甘露純太あだ名は一部の人から味覚◯と呼ばれている者です。
俺のあだ名がなぜ◯覚糖かと言うと、UH◯味◯糖の純露(べっこう飴の名称)から来ている。
って、それは正直どうでもいい。
俺が言いたいのは、この本命チョコにどうやって答えればいいか、だ。
俺は正直なことを言うと、彼女を恋愛的な意味で好きではない。
ただの友達感覚だった。
しかし、告白されてしまったからには、OKするか、フルか、必ずどちらかはしなくてはならない。
これは、どちらにせよ関係が変わってしまうので、恋人は欲しいし、告白されてからやけに避けられていて、前みたいに一緒にいられない時間が寂しいのでOKするのは決まっている。
ただ、心配なのはこんな理由で付き合うのは不誠実なのでは?という話だ。
最近の中高生はそんなこと気にしてない人もいるだろう。ただ、好きでもない相手と付き合うのは不誠実だと俺は感じる。
だからこそ俺は悩みに悩んでいる。
そこで、俺は友人である天使恋こと天使に相談するため近所のカフェに呼び出した。
「なぁ天使、俺はどうすればいい?」
「俺は天使じゃねぇ天使だ。で、なんだ?」
「いやさ、前も話したと思うけど、俺バレンタインであめちゃんに本命もらっちゃったじゃん」
「おう、むかついてきたから帰るわ」
「待て待て待て待て待て!!!」
「はぁ…で、いとしの彼女ちゃんとどうしたんだ?」
「え?まだ付き合ってないぞ?だって、好きじゃないのに付き合うなんて不誠実じゃないか」
「は?」
そういうと天使は黙り込んだ。
そして、少し間をおいて、ものすごくでっかいため息をつき、俺に向き直った。
「お前、あめちゃんが他の男といちゃついてたらどう思う?」
「ん?んー」
そう言われて俺は少し想像してみることにした。
あめちゃんが見知らぬ男と仲良く腕を組みながら歩いているところや、キスしているところを想像する。
すると、なんだかモヤモヤしてくる。
「なんか、モヤモヤするな。で、これがなんだ?」
「は?お前マジで言ってんの?」
「いや、なんのことだよ?」
そういうとまた天使はでっかいため息をつき、心底イライラしてるのがすぐわかるぐらい俺を睨みながらこういった。
「とりあえずホワイトデーには飴でもあげなさい。これは命令です」
「支配?」
「しばくぞ。まぁ、あとはそのついでにデートとか色々やってみやがれ」
そういうと天使はイライラしたまま帰っていってしまった。
と言うか、なんで飴なんだろう?……………あっ、そっか、飴ちゃんとあだ名のあめちゃんをかけてるんだな。
なるほど、確かにそれはいい。よし、あいつの言う通り飴をホワイトデーにあげよう。
そう思いながら、天使がいってたデートの方の意味と実行するかについて考えながら俺も帰路にいた。
◆◇◆◇◆
翌日、今日は月曜日3月13日。
そして今は放課後!今日もあめちゃんと話せずじまいだったため寂しいと考えつつ、帰宅する前にショッピングモールにより、ちょっとお高いキャンディを購入し、家に帰った。
せっかくだから俺のあだ名のもとであるU◯A味覚◯の純露もといべっこう飴は自分で手作りすることにした。
運がいいことに明日は高校の卒業式があるため、俺ら在校生は休みになる。
しかも両親は共働きのため明日は1人だ。だから午前中にべっこう飴を作り、午後からデートに誘おう。
そう考えた俺はさっそくあめちゃんに連絡をした。
『あめちゃんあめちゃん、明日の午後空いてる?空いてるならホワイトデーのお返しのついでにどこかでかけない??』
送ってからすぐ既読はついたが、返事は来ず予定でも確認しているのかな?とか考えつつ気長に待つこと約30分。
ようやく返事が帰ってきた。
『大丈夫だよ。何時ぐらいからがいいかな?』
『んー、お昼を食べてくか食べていかないかによって変わるかな?』
『じゃあ、一時位に集合で、一緒にお昼食べてかない?』
『いいねそれ!そうしよう!』
そこで会話は止まった。
俺は約束を取り付けれたことに満足し、明日に備えて早めに寝ることにした。
◆◇◆◇◆
朝起きて、朝ごはんを食べて両親を見送る。
そして、見送ってからべっこう飴を作り出す。
正直簡単で、焦げさえしないようにすればいいのだからほんとにありがたかった。
ちょっと凝った形にしようか迷ったけど、流石に初心者だから大人しくクッ◯パッドで1番上に出てきたやつをレシピ通りに作った。
一応試食ということで出来上がったのをじぶんでもたべてみたが、普通に美味しかった。
これならだいじょうぶだろうと、思い、昨日買っておいたキャンディを俺が作ったべっこう飴と一緒にラッピングし、完成した。
これからはデートの準備をしながら気長に待ち合わせ時間になるのを待つ。
その間俺はめちゃくちゃ服に悩んだり鬱陶しいほど念入りにチェックしたりで、あんまりのんびりする時間がなかった。
あっという間に12時30分になり、そろそろ家を出ようと思い最終確認だけして家を出た。
待ち合わせ場所は、昨日もお世話になったショッピングモール。
その西側の入り口で待ち合わせをする。
少しするとあめちゃんはちゃんと時間通りに来てくれた。
Web小説とかでよくある待ち合わせ場所を勘違いして振られたと思ってすれ違うみたいなことはなかったのでちょっと安心した。
「こ、こんにちは純くん。待った?」
「こんにちはあめちゃん。全然待ってないよ」
「そっか、それならよかったや!じゃ、早速お昼どこ行く?」
そう言ってトコトコと歩きながらあめちゃんは俺に聞いてきた。
ちょっと見栄張ってお高い店に行って奢るとか言ってみたい気もするけど、俺の財布はそんなに余裕がないため普通に俺とあめちゃんでたまに行くファミレスに行くことにした。
ファミレスに着くと、今日は珍しく少し空いていた。
ラッキーだと思い適当な席に2人で座る。
「ごめんね、いつものファミレスで。代わりに今日は俺が奢るから」
「ええっ!?わ、悪いよそんなの!私もちゃんと自分の分くらい払うから!」
「うーん、じゃあ、割り勘にしない?」
「ま、まぁ、それでいいよ」
割り勘にすることが決定した。
とりあえず何を注文しようか考えながらメニューを見てると、『ホワイトデー限定‼︎』って書いてるのを見つけた。
「あっ、あめちゃんあめちゃんみてみて。ホワイトデー限定だって。これ、美味しそうじゃない?マシュマロチョコとかマシュマロココアとか」
「えっ…」
マシュマロチョコとマシュマロココアをすすめてみるとなんだかすっごくあめちゃんの顔が暗くなった。
マシュマロ嫌いだったっけ?とか考えながら普通に俺たちは注文した。
少し待って、来た料理たちを俺たちは食べ始める。
まだ顔が暗いあめちゃんがちょっと心配だったけど、普通に食べてはいるので体調が悪いとかではないのだろう。
そう言うことなら前読んだ恋愛漫画であった『あーん』と言うものがしてみたくなった。
ただ、それはこのあとデザートで頼んであるチョコレートパフェでやると決めているので、その気持ちは抑えて少しシェアしないか提案してみる。
「ねぇあめちゃん、そっちの料理も美味しい?」
「えっ、あっ、うん」
「そっか!ならさ、俺のも食べていいからちょっと分けてくれない?しぇあしよしぇあ」
「えっ…あ、うん!いいよ!」
シェアの提案をするとあめちゃんの顔はさっきより随分明るくなった。
これでちょっとは安心だな、とか考えつつあめちゃんからもらった料理を食べてみる。こっちもめちゃ美味かった。
そんなこんなで料理を平らげ、デザートを食べる。
そして、俺はこの時を待っていたと言わんばかりにひとくちふたくちパフェを食べてからスプーンにパフェを掬ってあめちゃんの口に近づける。
「あめちゃん!これもすっごく美味しいよ!ほら!一口どーぞ」
「えっ、あっ、ありがとう」
「ほら!あーん!」
「あ、あーん」
「どう?美味しいでしょ?」
「うん、美味しかった…じゃあ今度は私のあげるね。あーん」
「へっ?」
俺はこの瞬間思考が完全に停止した。
そして、次の瞬間あり得ないほどの情報が絶え間なく脳に流れ込んできた。
可愛い!!ただその場の雰囲気で普段より可愛く見えるだけじゃない!!何だ!!分からん!!分からねば!!
俺は必死に今現状何が起こっているのかを考えに考えた。
そして、
「早く食べて?腕疲れちゃう」
の一言で我に帰った。
「あっ、ごめん」
「はいっ、あーん」
そう言って再び俺にあーんをしてくるあめちゃん。
正直今の頭の中にはもうかわいいと嬉しいとドキドキと言う感情が混ざっているせいでなんか逆に虚無になっている。
思考が処理する前に新たな情報(かわいいと言う情報ばっか)が無限に流れ込んでくるせいだろう。
そして、俺は思考を放棄した。
「ほら、あーん」
「あ、あーん」
「どう?美味しいでしょ?」
「うん、非常に美味しいけど、真似したよね?」
「あはは、バレちゃったか。まぁこれで、私の恥ずかしさが伝わったかな?」
そういうとあめちゃんは「あんまり簡単に他の女にやらないでよね」とか「こんなのバカップルくらいしかやらないんだから」とか色々言ってはいるが、俺の耳には全然届いていない。
だって俺には、恥ずかしいと言う感情が一切湧かなかったからだ。
あめちゃん恥ずかしいって言ってるからには、そう感じたんだろうけど、どうしてそう感じたかわからない。
だから俺は、思っていることをそのまま言うことにした。
「俺は、恥ずかしくなかったぞ?というか、嬉しいとしか思えなかったんだが…」
「えぇっ!?」
「もしかして、あめちゃんは嫌だった?ごめん、あめちゃんの気持ち考えてなかった…」
「え!いや!嬉しい!私もすっごい嬉しかったよ!てか嫌なわけないじゃん!!私一応言ったよね!?一ヶ月前好きですって!好きな人からあーんされるのが嬉しくないわけないよ!」
しっかり大声で叫んでくれたおかげで、周りから注目を浴びているのがすごくわかる。
そして、さすがにあめちゃんも気づいたようで、一気に顔を赤くしてから静かに席に座った。
「と、とりあえず、私は純くんが好きだから、あーんを嫌がるどころか、手を繋いだりハグしたりは全然ウェルカムだから。さっ、流石にそれ以上はダメだよ!?」
あめちゃんは1人あたふた?しながら顔を隠したりこちらをチラチラ見てきている。
すると、ピコン♪と俺のスマホから通知音が聞こえた。
確認すると、天使からだった。
内容は
『自分がまだあめちゃんを好きじゃないと思うのなら手を繋いだりハグしたりしてみろ』
と言うものだった。
俺はびっくりして当たりを全力で見回した。
あまりにもタイミングが完璧すぎるからだ。ただ、あたりに俺の知っている顔はなく、あいつがいないことは確かだ。謎すぎる
『天使!絶対どこからか見てるだろ!』
『何を言っている?と言うか、デート中にLIMEでやり取りはNGだぞ。相手からしたら誰と連絡を取ってるかわからんから色々疑いたくなるからな』
天使はそれ以降返事がなくなった。
別に、天使が言った言葉が気になったわけじゃないけど、別にそう言うわけではないんだけど、一応あめちゃんにいまさっきLIMEしてた相手は天使だと言うことを伝えてみる。
「あめちゃん?一応言っとくけど、さっきLIMEしてた相手は天使だからな?」
「あっ、よかった…」
伝えるとだいぶホッとしたと言わんばかりに安堵のため息を漏らした。
そして、そのあと俺らはゆっくりデザートを平らげ、店を出ることにした。
そして、ようやくこいつの出番が来る。
そう!俺のキャンディたちだ!!
なんか渡すタイミングなかったけど、今こそ渡す時だ!なんでかって言うと今まさにホワイトデーの話題だからだっ!!
この絶好の機会を逃さんように俺はすかさずキャンディを取り出してあめちゃんにわたす。
「はいあめちゃん。バレンタインの時のお返し。キャンディだよ。中にあるべっこう飴は俺の手作りなんだ」
「わぁ!!嬉しい!よかった!!ファミレスでやたらマシュマロすすめてくるし、チョコパフェをくれるからそれでホワイトデーは終わりかと思ってた!」
「えぇ!?俺そんなに酷いやつじゃないよ!?本命をもらったんだから、それ相応のお返しはしなきゃだしさ!」
「あはは、2割くらい冗談だよ!」
「8割本気じゃんか!!」
「あははっ、でも、これが純くんの気持ちなんだよね?」
「えっ?あ、うん?」
「ふふっ、やった!純くんだーいすき!!」
俺がわけわからずに返答すると、もんのすごくニヤニヤしながら顔を真っ赤にしてあめちゃんが抱きついてきた。
そして、この瞬間、俺はさっきのあーんの時のドキドキとは日にならないほどのドキドキが溢れてきた。
ちょっと軽く心臓が破裂するくらいにはドキドキした。
でも、割とすぐに離れてくれたおかげで少し楽になったが、正直辺りの人に聞こえるかと思うくらい心臓がバクバク言っている。
俺は深呼吸をし落ち着かせ、ゆっくりとまた歩き出した。
今からは適当にショッピングモール内を見て回ることになっていたのだが、俺はさっきから頭に何も入ってこない。
そう、その原因はあめちゃんが俺の手を握って歩いているからだ。しかも恋人繋ぎ。
そして、チラッとあめちゃんの顔を見ると少し頬を赤くしながらニコッと微笑んでくれる。
死ぬほど可愛い。マジでキュン死するところだった。
結局今日は手を繋いだまんまで、お陰でもうほとんど何も覚えていない。
ただ、死ぬほどドキドキしたのと、あめちゃんの可愛さを浴びすぎたのは覚えていた。
帰り際「明日私がお弁当つぐってきてあげるから!楽しみにしてて!」と言って帰っていったあめちゃんは、すっごくニッコニコで幸せの絶頂にいるのではないかと思うくらい幸せそうな笑顔だった。
そして、俺はそんな笑顔をもっと見ていたい、そう思ってしまった。
そこでようやく気がついた。俺は、きっとあめちゃんが好きなのだ。
今まで気がつかなかった自分に無双◯一太刀でもかましてやりたくなってしまった。
どうして気づかなかったのだろう。よくよく考えればすぐにわかるようなことなのに…
改めて自分の馬鹿さを身にしみて感じたと同時に、どうやって告白しようと考えてしまった。
向こうは俺に告白してきてくれたのだから、振られる心配は恐らくない、ただ、俺に勇気がないだけだ。
俺は、そんな勇気のない俺を呪いながら、LI MEで『好きです。たった今、気づいた自分の気持ちです。こんな馬鹿な俺と、お付き合いしてくれますか?』と送って、返事も見ないで俺は眠りについた。
翌日の朝、見事に寝坊して俺は慌てて支度をして家を出た。
スマホを忘れてきたことを後悔したが、まぁ1日くらいなんとかなるだろうと考え取りに帰ることもなく学校へ向かった。
そして、俺が教室に着いたあと、少ししたらあめちゃんが教室に来た。
そして、俺を見るや否やすっごい早足で近づいてきて、バンっと俺の机を叩いた。
「純くん!!昨日のLIMEどう言うこと!!」
「えっ、あれは、俺の気持ちで」
「私たち付き合ってるんじゃなかったの!?純くんお返しに飴くれて、しかもそれが自分の気持ちだって言ってれたのに!たった今気づいた自分の気持ちって何!!?昼間の気持ちはなんだったっていいうの!!」
「えっ、ど、どう言うこと??」
俺がわけわからず、困惑していると、ふといつの間にか横に天使がいることに気づいた。
天使は口を開いて、こう言った。
「なぁ、知ってるか?ホワイトデーに送るキャンディーには「あなたが好きです」って意味が込められてるらしいぜ。おめでとう2人とも。これでお互いの気持ちにちゃんと気づけたな。末長く爆発しやがれ」
そう言って天使は颯爽と去って行こうとした。
ただ、まぁ当然俺たちが許すわけがなく。
「まっ、まぁまぁ落ち着け2人とも。俺のおかげでちゃんとくっつけたんだからな?よしとしよう!ハッピーエンドだ!それに、俺があの時お前に言わなかったらお前はまだあめちゃんにたいする好きの気持ちにすら気づけてなかったはずだぞ?な、感謝してくれや。で、ついでにその怒りも治めてくれや」
「「許すと思ってんの?(圧)」」
「逃げよ」
「「逃すか!!」」
そう言って2人で逃げ回る天使を追いかける。
悔しいことに、今回は天使が恋のキューピットだったため、あんまり乱暴はできないが、こうして意味もないことに大好きな人と2人で笑って過ごせるのは、すっごく幸せなことだと、俺は気付かされた。