表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

序幕4

「相変わらず待ち合わせの時間を守る気ないよなお前って奴は・・・」

直接聞いてくると講義室を飛び出ていった4時間後、SDGO内で話すから待ち合わせ場所はいつもの所な

そう決めたのは誰でもない大和本人だった筈なのだが、指定された場所には当の本人はおらず、よもや1日に2回も待たされるとは思いもよらず、誰に聞かせるわけでもなく口から軽い愚痴が飛び出す



小さな溜息を吐きながらコンソール画面を呼び出し、フレンドリストを開くとこの2か月で交友関係が出来た知り合いの名前の一覧が出現し、今現在ログインしているか否か、又は最終ログインの日付が表示される

と言っても強調表示されているのは大和のSDGO内のキャラ名だけであり、他の名前は直近でも23日前、つまり彼らはもうこの世界から一足早くいなくなってしまったであろう事が推測された


現実とはかけ離れた世界であるネットゲームで態々実名を使う人間は早々いないことに加え、余程仲良くならない限りリアルの世界でも繋がりを持つ事は無いため、彼らとはこの世界だけでの友人であり、今後二度と会う事は無いと言う事だったというだけの話ではあるが、やはり残される事になった身としては惜しいと感じてしまうのは仕方がないのではないだろうか



一人でいると多少ネガティブな事を考えてしまうため、思考を切り替え現状の対処に気を向ける

恐らくゲーム内のマイルームで寝落ちしているであろう大和、どう起こすか


「・・・戸締りはちゃんとしてんだよなぁ」

ゲーム内で個人個人に割り振られる部屋がある建物へのワープポイント前まで辿り着き、リストから部屋に入ろうとしたが、入室が制限されており入る事が叶わず、思わず小言が飛び出る

となるとゲーム内で用意されている所謂、1:1チャット多くのゲームで色々な呼び方のある個人個人間のみ聞こえる会話状態に慣れた手付きで切り替え、ある単語を大声で叫ぶ


「留年!!」

大声で叫ぶとは言うが相手にしか聞こえない関係上、傍から見ても大きく口を開けて何かを叫んだようにしか見えず、この情けない二文字の言葉が他のゲーム内プレイヤーに聞こえる事は一切無く、これが1:1チャットの大きな利点である

何故起こすのにこの単語なのかと言うのは最早語る必要もない



「・・・寝てました」

数十秒位経過してから返事があり、案の定、ただ寝落ちしていただけだったらしく欠伸に加え生活音が聞こえ始めたため、知ってる とだけ返事を返し部屋から出てくるのを待とうとしたところ、部屋のロックが解除されフレンド限定入室可に切り替わった

つまりこれは外で話したくない会話であると察し、転送ポータルを操作し入室を操作すると徐々に自分の体が下から如何にもSF的な輝きを放ちながら消えていき、最後は視界が一瞬白い光に覆われたと同時に、全く違う場所に立っていた



「現実でもいつかこんな感じでワープ出来るようになるのかね?」

典型的な昔の人が考えた、未来はこうなるだろうというモーションで再現されたワープ機能は概ね好評であり、特に自分の父親位の世代からはあの時見た夢の世界が体験出来るとファンも多いらしい


「出来ないよりは出来るかもしれない って考えたほうが幸せだろうな?」

否定でもなく肯定でもなく、今後の自分たち次第だろうなと中々恰好付けた台詞で返しながら座るように促される

掘り炬燵に

そう、大和のマイルームはSF世界のゲームであるのに掘り炬燵が存在しており、挙句周りの家具も完全に古民家染みたハウジング内装なのである


まさかSFゲームであるにも拘らず、和風家具で自分の部屋を固める奴がいるとは普通思わないだろうし、実際自分の部屋は此れでもかというほどSF要素のあるマイルームに仕上げてあるのだが、人数が多ければ少数派の分母も上がるし、その少数派の中の変態の中にも度を過ぎた変態(誉め言葉)が生まれ、公式のモデル作成ツールで世界観ガン無視のこのような和風家具が作られてしまい、それを使う人間が出るという単純にそれだけの話である


まさかそれが数少ない身内だったとは考えもしなかった が



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ