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序幕3

「であるからして、この時求める解は」

約半年間、聞き続けた声が静寂とは言い難い、室内数名の小声での会話が聞こえる教室に響く

大学の講義とは全てが全て自分にとって学びたい内容では無く、人間興味が無い物には集中できないのが必然であり、そもそもこの講義に興味が無いのに何故この場にいるかと問われれば

必修講義であるから としか答え様がない


「出席とテスト半々だからなぁ・・・」

そういうもんだから仕方がない、納得しろと自分に言い聞かせる様に小さな溜息と共に呟く

こういう時に友人がいれば気が紛れるのだが、昨夜、口約束した友人の姿は始業時に無く、遅れてやって来る事も無く、つまり俗にいう遅刻である

と言っても約束した相手はそもそもこの講義を受講していない、つまり暇潰しに遊びに来るだけなのだが



まぁよくある事だと気分を切り替え、少し気を他所に向けていた間に更新されているモニターに映し出されたスライドに目を向け、要点と思われる強調されている箇所のみ大学既定の携帯端末に入力し、鞄から自前の携帯端末を取り出し検索画面を呼び出し文字を入力する


当然検索する単語はVRMMOである

昨夜はそのまま寝たため検索しなかった事を、真面目に講義をしてくれている教授には多少申し訳ない気持ちはあるが それはそれこれはこれ、と割り切り検索をかけようとした瞬間、不意にその端末を後ろから取り上げられる



「はーい嶺次君減点10点ー」

手を離れた瞬間、一瞬教授に没収されたのかと考えるが、聞き慣れた声と振り向いた先にある顔で誰がやったのかを理解した

正確に言えば、こんな子供みたいな悪戯をしかけてくるのは一人しかいないのだが


「大和・・・お前さては後ろで寝てたな?しっかも寝っ転がって・・・」

大学の講義室が満員になる事はテスト当日でもない限り早々無く、今現在真面目に受けている生徒たちも間隔を空け座っている以上、学生一人が椅子に寝転がって睡眠を貪るのは容易いことであり、何より分かりやすく頭に腕か何かが乗っていた痕跡であろう赤い痣が残っていた


「待ち合わせ先で寝て居れば寝過ごす事は無いからな!」

片手に持った携帯端末を投げ返し、親指を立ててどや顔をしているところ悪いが、結局きっちり遅刻自体はしている訳なのだが、このペースで雪崩的にボケてくるのを一々相手するのも面倒なわけで

ハイハイとスルーし、手元に帰ってきた携帯端末で検索を再開しようとしたところ、横から来た手に止められる


「フッフッフ・・・実は兄者に良い情報がありまして」

後ろの席から軽い身のこなしで1段降りて隣の空席に着地し、如何にも三下の様な台詞を吐きながらごま擦りする様が異常に似合うのはなんなのだろうか


「だーれが兄者だ、そもそもお前の方が1個上だろ上・・・」

そう、大和と呼んだ相手は自分より先に入学した年齢上で言えば先輩であり早々接点は無かった筈だった

何故そんな彼が2回生の自分と今このような関係なのか、普通であればサークルの先輩後輩やバイトで知り合った等の推測をするだろうが落ちはいたって簡単で情けない物である


「お前はこんなんにならないように必修講義はサボるなよ♡」

講義数は多数あれど必修講義は少数なのだが、1個でも落とせば次学年に進めない必修講義をよりにもよってピンポイントで1個落としたのである

しかも落とした理由がVRMMOに集中し過ぎたと言うのがやらかした感しかない

しかしまぁ、おかげで人生の先輩ではあるが、今ではこうして同年代の友人と同じ様に軽いノリで接する事ができ、褒めると調子に乗るため声に出しては口が裂けても言わないが、よい友人なのである


「という感じで話し戻して、あれから調べたんだなこれがな!」

どうやらあの後大和は寝ずに只管新しいゲームを探していたらしい

そりゃ睡眠時間足らずに講義室で寝ながら待つ判断になるなと、変なところで頭が回る点に多少関心しつつ、態々新しいゲームを調べてた事に感謝し、自信満々で見せられたVRMMOのサイトに目をやる


「VRMMO・・・いやタイトルそのままなんだが・・・

しかもCβテストは終了しましたってまだ始まってすら無いんだが?」

自信満々に見せられたそれが、タイトルすらなく更にはサイトにも最低限の情報しかない物であり、それ見せられ内心期待していた心の高まりが音を立てて崩れていく

と同時にある程度の諦めの感情も沸きだし、仕方ない直ぐ見つかる筈もないと自分をそれ以上落胆させないように強がりの虚勢を張る自分に、殴りたくなるようなテンプレにやけ顔の大和が別のページを見せつけてきた


「サイトじゃないな・・・これCβテストの内容じゃねぇか・・・

一体どこからこんな情報を・・・そうかっ」

出た言葉を最後まで吐き出す事も無く、結論に思考が行き着く

廃ネットゲーマーであればその友人も然り、つまり友人が運良くこのCβに参加しておりその情報を貰ったと言う事なのだろうと

やはり持つべき者は友、これはいつの時代も変わらない素晴らしい物である


「良かれと思って旧友に連絡とって見つけてきたぜ!褒めろ!」

隣で一応、真面目に講義を受けている生徒に気を使ってか小声で騒ぐ大和の声は正直余り耳に入ってきていなかった


VRMMOを初めてプレイしたのは2か月前のSF作品SDGO、通称Star Dust Glorious Onlineであり、宇宙を駆け巡るゲームで様々な惑星を冒険できるSF準拠なシステムでSF系ゲームでは一番人気なのだが、2年ンも経つと流石にある程度のゲーム性の成長限界が見え始めここ数か月はサービス開始時ほどの勢いもなく良くも悪くも落ち着いてきたゲームであった

それに加え新規勢は古参に対してどう足掻いても越えられない資産面や積み重ねてきたノウハウが自分には厳しく感じてしまい、目がつき無理なく行ける段階までやろう と事前に決定していたのである


勿論疑似的とはいえ初めて宇宙空間を体験出来た点は代え難い素晴らしい経験だとは思っているが、どんなゲームでも人には向き不向きがあるのが現状のゲーム二分化が証明している

単純に自分に合わなかっただけ なので酷評する気は無く、良いゲームだったと誰かに聞かれたら答えると思う


それに比べるとこの名無しのゲームは今から開始で全員同時スタートで差が生まれにくいというポイントは何にも代えがたく、大和の友人が書いたレビューによるとβ時点で多数の都市が存在し探索時間が足りない程であり、他にはやたら惜しんだ文面でやらないと後悔する事を長々と、一番力を入れてプレゼンされていた


「んじゃ他に候補も無いしこれやるとして、次のテストか正式何時なんだ?

後、男の拗ねるに需要はないからやめろ」

文面にはその記載が一切なく、公式も次回更新をお楽しみにという画像のみでありこれ以上の情報は得る事が出来ず、出所である無視し続けた結果拗ねた振りをする大和に尋ねる


「無いかーあると思うけどなー俺はなー

この先は直接聞いてくるからじゃあ先に帰るわ!また今晩な!!」

切り替え速く、席を立つと講義中であるにも関わらず、大和は荷物を纏めて講義室から走ってでていってしまったが、そもそも大和はこの講義を受講する必要もなく単位も必要ないため問題ないのだが、

必然的に大和を追った視線の行き着く先は元々の席の隣にいた自分であり、教授や他の人間のやや冷ややかな目が突き刺さり、申し訳ないという作り笑いで誤魔化すしかないのであった

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