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序幕

日本で機械を用いたゲームという物がこの世に生まれ早100年


最初は大きな据え置き機で始まった物が、持ち運び可能な携帯機になり、更に進化し通信機能を持ち顔も声も知らぬ相手と交流すら可能になったネットゲーム

其れは最早娯楽だけの存在というには遠い遠い物となり世間のゲームという認識が変わりつつあった世界で、多くのゲームを愛する人間は歓喜し期待した



「ゲーム世界が第二の生きる場所になるはずだ!」と



しかし日本という国、正確に言えば日本人という人種には致命的な欠点が存在していた

勤勉で真面目と言う要素は娯楽に使う時間を良くも悪くも惜しみ、そうした複数の要因が重なった社会がネット通信を用いたゲームの後釜に就いたのは


短時間で手軽に遊べ、持ち運びの容易な携帯型端末、足らない時間を金で買う課金で強くなる等の要素が主軸となっているソーシャルゲーム(以下ソシャゲ)と言われる物であった


数多のゲームの新作が発表されるもそれはほぼソシャゲであり、本格的なネットゲームがリリースされる事は稀なことに加え大半がソシャゲに食われ短い期間でサービスを終了していく様を見て嘆きの声をあげる事になった



「もうこのままソシャゲ主流のつまらない世の中になってしまうのか」



進化していくはずだったネットゲームの未来に希望を持っていた者達は減り、嘆きの声すら聞こえる事すら少なくなりこのまま過去の栄光と共に古き良きネットゲームは消滅していくと残り少ない希望を持っていた者達すら思っていたある年、日本だけでなく世界すら巻き込んだ転機が訪れる



「待たせたな、古き良きネットゲームを愛する者達よ!」



2058年1月1日、新年1日目あるゲームのリリース日がネットで発表された

その名前はVRMMO、つまり仮想現実大規模多人数オンラインVirtualRealityMassivelyMultiplayerOnline

上記単語の頭文字を取った名前であり最大の売り文句が実際のゲーム内で自分の代わりとなるアバターを操作し、まるで現実世界のように動く事が出来ると言う耳を疑う様な内容だったのである


結果、この年は新年早々かつてない程の大騒ぎとなり、めでたい新年だというのに既存の特別番組の枠を削減し、この件に関する特別番組が組まれ安全性や真偽を討論する場が設けられ日夜議論が続けられる大騒ぎになったのは言うまでもなく、そもそも先ずこの件を発表した方法が今まででは信じられない異質であった


開発者と名乗った男は全身着込んでおり顔は口しか見えなかったが、別にここまではいたずらで済む話であり、大事になる事は無かったが、その男がプレゼンを行っていた場所が問題だったのである


どう考えても今現在この地球上に存在しない中世時代の立派な城の玉座から始まり、場面が移り変わり見上げると頭上には広大な水が広がる海底の底の様な後継、挙句RPGゲームでよく見るような天空の島、止めに背景に見えるのは住んでいるはずの地球が映る他の惑星の地表


これには普段ネットゲームを知らない層すら関心を持つことは必然であった

技術が進歩してもタイムマシーンなんてものは存在しないし作れる筈もなく、宇宙進出すら一般人には未だ手が届かないはるか遠くの未来の技術でありそれが仮想現実と言え体験出来るなら1度は味わってみたいと思うのが筋である




斯くして新年早々世界を巻き込み大騒がせしたVRMMOの発表から数か月、度重なる審議、審査をくぐり抜けVRMMOはソシャゲの対抗馬として世に放たれる事になった


勿論決して少なくないバグや同時収容人数から来るラグの問題等の問題点は過去のゲームと比較できない数が挙がり、開発運営はその対応に追われる事となったのだが、この技術がこのまま消滅するのを良しとしない善意のボランティアが世界各地から集結した結果無事に3か月というテスト期間を終えこのまま正式が始まるのだと誰もが思って胸を高まらせていた者達を驚愕させる事件が起きた



「皆様ご協力ありがとう、大変残念ですが正式サービスはありません」



テスト終了後の公開生放送で開発者の全身フードの男が口角を上げながら、演技がかった動きと共に発した一言はその言葉は見ていた者達の思考を一瞬凍り付かせるには十分すぎる理解不能な発言だったのである


放送のコメント欄が滝のように流れ最早目で追うことすら叶わない状況、最早放送事故と言うには生温い程の暴動に至る間際であったが男の動きによりコメント欄は閉鎖され、そして画面の男は一言告げたのである



「此処からは貴方達が頑張る番です」



その発言と共に男の姿は消え、残された画面に映る物は一つの指定されたサイトと何かのパスワード

男が去り際に残した物はVRMMOを構築する基礎となる全てのソースコードであり、個人には到底扱えない代物だとしても企業が関われば話は大きく変わる

本来なら今生働かずに済むどころか、一生遊んで暮らせる宝物を置き土産として消えていったのであった



――――――――――――――――――――――――――――――――――――






「種は無事に撒けた、後は楽させて貰おう」


最早誰も干渉できない世界で男は一言呟いた、その真意を知る者は彼以外誰もいない



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