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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
4周目 第4話 呪われた天使
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第4話 呪われた天使⑲

 カルナに案内されるまま到着したのは、見上げるほどの大きな扉の前……扉を通り越して門と言っても否定されることはないほどの大きさだ。


「ジャルダルク様、客人方をお連れしました」

「――ああ、入るが良い――」


 カルナの発言の後、扉の先から返事か来た。


「では、入りましょう――」


 次の瞬間、扉がゆっくりと自動で開く。

 一行が扉の先に入ると、大きな扉に負けず劣らずの広さを誇る部屋……謁見の間。

 大天使と客人が相まみえるこの部屋の奥に、件の人物が座ってた――。


「良くぞ参った、サワン……それに、サクラ、メニシア、ビリン、モネにネロ、シュウラ……クオンもな――」

「私たち名前言ってないよ~」

「……(コクコク)」

「まるで神様ですね……」

「まるでも何も、神様みたいなものだよ(・・・・・・・・・・)……ジャルダルクは――」


 サワンはともかく、モネの言う通り、名を名乗っていないサクラたちの名を読んで見せた。

 メニシアを肯定するようにサワンは言ったが、この程度はジャルダルクにとって呼吸をするようなことを変わらない。

 むしろこの程度で驚いているようだと先は持たないだろう。

 それに――。


「威厳たっぷりな口調はやめた方が良いよ、ジャルダルク~……いつもの調子(・・・・・・)と比べるとダサく見えちゃうよ~」

「サワンマイラ様――」


 カルナがサワンを諫めようとするが――。


「よいカルナ……ハア~」


 謁見の間全体に広がるような大きな溜息を漏らすジャルダルク。

 すると、緊張感あふれる表情が一気に崩れ、緩さ極まる表情に変化する。


「ちょっとはカッコつけさせてよ、サワン~……せっかくお友だちと話してみたかったのに~」

「「「「「「……は?」」」」」」

「――ニャ~」


 突然の代わり様にサワンとクオン以外の皆、大天使の目の前にいるとは思えない反応をしてしまう。

 もっともクオンはやはり興味が無いようだが。


「ほら、いつも通りにしないからみんな呆れてるじゃん」

「そんなこと言ったって~、サクラたちは初めて会うんだから、だったらカッコいいところの方が良いじゃん――」


 二人の言い争いを遠くにいるような目で見守るサクラたち。

 同じくカルナも、半ば呆れた表情だ。


「……大天使と言うからには緊張する方なのかと思っていたのですが……」

「緩いね」

「あの口調、サワンの育ての親ってのも頷けるな……」


 サクラたちも、大天使のギャップに驚きを隠せない……いや、サクラは驚いているというよりクオンの興味が無いと近い感じ表情だ。


「――コホン、ジャルダルク様、サワンマイラ様」

「「あ」」


 カルナの咳払いで二人は我に返る。

 二人して少し恥ずかしがるようなしぐさを取る……まるで本物の親子を見ているようだ。


「全く……せっかく準備したのに……」


 頭を軽く掻き、自分が座っていた玉座に腰かける。


「改めて……ようこそだ、サクラたちよ。改めて名乗らせてもらおう……我の名はジャルダルク――天上大陸並びに唯一の都市であるエデンを統べる長だ……よろしくたのむぞ――」




「――それで、長さんはいったい僕たちに何の用がある訳?」

「さきほどのサワンとの会話でも申したが、単純にサクラたちと話がしたかった……興味あったというわけ……なるほど~……」


 言い終えると、一人一人をじっくりと見つめ流す。


「面白い人の子らだ……運命そのものと言っていい!」


 純粋無垢な笑顔で言うが、その意味がよくわかっていなかった。


「運命……ですか?」

「うむ、その最たる例が、お主たちが今所持している神器というわけだ」


 ここで神器という単語が出るとは思っていなかったのでサクラたちは各々の神器に目がいく。


「ちなみにシュウラよ、お主のそのナックルも神器である(・・・・・・・・・・)ぞ……と言っても、神器かはともかく、そのナックルが特別であることはちゃんと理解しておるようだが」

「……」


 ジャルダルクの指摘のまま、シュウラは自身のナックルに目をやる。

 まるで見透かされている……大天使たる所以なのだろう。


「……シューくんのそれも神器なんだあ……」

「……あの天使が言うならそう何だろ。だが……いや――」


 口がこもる……言いにくい何かがあるのだろう。


「シュウラもそうだがサクラよ、お主が身につけているそのブレスレットだが――」

「?」

「お主の得物である聖剣と同様に神器の一つ……シュウラのと同様に眠りについておるがな」

「……これが?」


 サクラが身につけているブレスレット……あの事件で死んだ友達にプレゼントした――言わば形見というやつだ。

 そもそもこのブレスレット自体、落ちていた石を拾いそれを型にはめ込んでブレスレットとして完成させた代物だ。

 ゆえに神器と言われてもピンとこない。


「ブレスレットというよりは正確にはその石が神器だな……と言ってもその石も元々はブレスレット。なぜかは知らぬが、ブレスレットが何かしらの理由で石に変化し、再度ブレスレットになった……というところかな……サワン?」


 ここでなぜサワンの名が出てきたのかわからない。

 そう言えば、先の戦いでサワンはサクラのブレスレットを要求しており、サワンにブレスレットがいかぬようキルライナとシャルは阻止した。


「もともとそのブレスレットは私の物だったんだよ。まあ、得物だよね。確かに神器だけど魔王を倒した後はジャルダルクの言う通り眠りに着いたんだろうね……反応が無くなってね。でもね、ヒロとマヤの子が生まれたって聞いてね、その子にプレゼントしようと思ってヒロとマヤに渡したの……その子の性質的にもお守りとしてピッタリだと思って……まあ、なんで石になったのかはさすがに知らないけど……ジャルダルクは知ってるんじゃない?」

「意思だよ」

「……?」


 サワンにはジャルダルクの言っている意味がわからなかった。


「運命と言ってもいい……神器の意思が自身の形を何の変哲もない石に姿を変えた。幸い眠りについていることもあって力など感じることは皆無だったが」

「……なんでそんなこと……」

「――あの女(・・・)か」


 どうやらサクラには思い当たる節があった。


「マヤ……彼女の存在だね。ブレスレットは後の出来事について予期していたのではないか――だからその姿をただの石へと変えた。ブレスレットの効果自体彼女は認知しているはずだから、そのままの状態だったら必ず破壊される……」

「いったい、ブレスレットの効果って……」

「神器が魔に対して強力な効果を発揮するのはみんなも知っている通り……それを踏まえてブレスレット――ヘブンズ・ノアは、魔への耐性を上げる。それだけじゃない、神器共通の能力である魔の弱体化をさらに強力にして発動させるドーム状の領域を展開する……さらに私が使用することで神聖力っていうのが追加されてね、魔に対する耐性がさらに強力になるだけじゃなくて、サクラが使うエンチャントみたいに魔に対する攻撃力を上げたり、さらに浄化能力や回復能力もあったりするんだよ」


 話を聞いた限り、サワンが使用することで真に力が発揮される代物のようだ。


「だったらこれはサワンに返した方が良いよね――」


 サクラはブレスレットに手を伸ばして、外そうとした時――。


「――待て」


 ジャルダルクが行動を制止する。


「ヘブンズ・ノアをサワンに渡すのは今じゃなくていい……」

「なんで?」

「なんでも……と言ったところで納得するはずもないか……だが、今ではないことは確かだ」

「……また未来視(・・・)?」


 サワンの口から出た単語はサクラを除く一行に対して十分な驚きを与えるものだった。


「チートじゃねえかよ、それ」

「未来視だけど未来視じゃない……現に未来視だったらサワンの家出やその原因を止めている」


 ここまでのジャルダルクの性格を見るに、確かに未来視だったらサワンの家出等を止めているはず。


「そもそも仮に未来視だったとしたらむしろ未来を変えてしまうということを考えたら止めもしないか……だが、未来視と言うには不完全な代物、それはあまりにもぼやけすぎているというものなのだよ――」


 ジャルダルク曰く、未来視ということには変わりないのだが、未来視と言うにはその情報はあまりにも断片すぎると言うものだ。

 ゆえに、その前後がどうなっているのかは詳細にわからない。

 今回のブレスレット――ヘブンズ・ノアの件がその例だ。

 詳細に言えないのは、完全な未来視ではないというのが理由になっている。


「そもそも我のこの中途半端な未来視が全てだと思わぬことだ……未来視など()の領分だしな――」

「あー、お姫さんか」


 初めて出てきた「姫」という単語が意味するところは、サクラたちはもちろん知らない。

 話を遮るようにしてシュウラがジャルダルクに問いただす。


「大天使は俺の得物が眠ってる状態だと言ったよな」

「いかにも」

「それは未来視でこの得物を見たからか?」

「いや、我はその神器が目覚めているところを知っているからだ」


 長き時を生きる大天使ならシュウラの得物であり、神器とされるナックルが眠りにつく前の状態を知っているだろう。

 先の発言から、シュウラもそのことを理解しているようだ。


「その神器の眠りを覚ます条件はお主だ、シュウラよ……わかっているな」

「ああ、言われなくてもな……そのために天上大陸に来た理由の一つでもあるしな」


 シュウラが天上大陸を訪れた理由は修行。

 今の話からするに、眠りについているシュウラの得物を覚醒させることが修行の理由の一つのようだ。

 

「ふぅ~、これで言いたいことも言えた……サワンのことについても本人から聞いたようだし」

「大天使は自分が話したいからと言ってたけど、サワンのことについて話そうと僕たちを呼んだ感じ?」

「それも一つある。神器についても呼んだ理由の一つ。だが、先に話したがいわゆる世間話と言うものをしたかっただけだ……茶菓子もあるぞ」


 ジャルダルクは、そばの小さいテーブルに置かれている「茶菓子」を見せる。


「だったら夕方とかに呼んでほしいかな。この時間だとご飯も食べて来たし――」

「だって~、やることいっぱいあったんだも~ん……カルナに文句言ってよ~、スケジュール組んでるの――」

「ジャルダルク様はご自身の立場をもっと自覚してください。緩すぎます。民に示しが尽きません――」


 カルナの言う緩いというのは皆が同感するところ……言いたいことを言ったからか、緊張感が緩み、サワンの養父と言える雰囲気が漂う。

 この光景を見ていると、従者であるカルナが二人の親のようにも見える。

 すると、三人の様子を遮るようにしてサクラが口を開く。


「ジャルダルク、あなたに一つ聞きたいことがある」

「ふむ……」


 まるで聞かれることを事前に予見していたかのような態度……不完全とはいえ、未来視の能力を持っているなら当然なのかもしれない。


「あなたはサワンより遥かに永い……何千年の時を生きている存在だ。なら知っているはずだ……魔王が二人いた(・・・・・・・)ことについて――」

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