第4話 呪われた天使⑮
「昼間から堂々と良いご身分だなぁ!」
「「!?」」
突然の出来事でキルライナとシャルは顔を離し、重ねていた身体も離れた……いや、離されたという表現が正しいだろう……突如として現れた第三者のこの男の一撃によって――。
気が付くと間合いに付け込まれていた二人だが、それに気が付かなかったのはサクラとサワンも同じだった。
「彼はいったい……完全ではないとはいえ今の二人に攻撃を入れられるなんて」
「……シュウラ」
「え?」
サクラの口から出た単語……人名あろうその単語にサワンは疑問を覚えたが、当のサクラは納得がいっているようだった。
「敵味方関係なく僕が今まで出会ってきた人の中で強いと思ったことがあるのは両手で数えられるくらい……その中でシュウラは間違いなく最強と言っていいくらいの強者だよ」
「……」
だとしたら納得がいく。
あの状態の二人は絶対と言っていいほど離れない――それだけの防御力を誇っており、サワンが知る限りでは瞬間的とはいえ最強の盾とも言える存在……それをたったの一撃で状態解除したのだから。
「誰だてめえは!」
「邪魔すんなぁ!」
「知らねえよ――」
右腕を伸ばし、左手を伸ばした腕に重ねる。
右手には周りの空気を絡ませるように大気からエネルギーを吸収し、集約させる。
「お前らみたいな超絶迷惑なバカップルのせいで静かなところも騒がしくなるんだよ……失せろ――空の波動!」
最高潮に達したエネルギーは、シュウラの右手から離れ、キルライナとシャルに向けて放たれる。
「そんな攻撃――」
「!? キル、まずい――」
何かを察したシャルだが間に合わない。
キルライナは魔術銃を向けて放たれたエネルギー波を相殺しようとするが、迫りくる速度が速すぎて間に合わず、避けることも出来ずにそのまま飲み込まれ、遥か彼方へと飛ばされてしまった――。
「……噓でしょ」
サワンは、自身が夢を見ているのではないかと言わんばかりの光景を目の当たりにする。
あの二人がこうもあっさり撃退されてしまったのだから……サクラの言う通りそれほどまでの実力者なのだろう。
「災難だったな、サクラ」
何事もなかったかのような反応を見せながらサクラたちに近づくシュウラ。
「こっちに来てたんだね、シュウラ」
「ガランダールに用があったのは事実だが、本当の目的は天上大陸だからな……ってそっちは初めてか」
サワンの方に視線を向ける。
こうしてみるといたって普通の少年。だが、隙など一切ない強者そのもの――。
「俺の名はシュウラ。サクラとはつい最近はじめましての関係だが、まあよろしく」
「え、えぇ……私はサワンマイラ……サワンでいいよ。それにしても、サクラの言った通りとはいえあの二人を……」
「あの二人……? ああ、あいつらか」
未だに現実を受け入れられないでいるサワンだが、当のシュウラはそうではないようだ。
「確かに強い二人なんだろうけど、油断しすぎだろ、あれ」
「一つ聞いても?」
「なんだ?」
「確かにあの状態の二人は油断そのものだけど、それを補うだけの防御――鉄壁さを持ち合わせているのだけど、それをどうやって二人を引き離したの」
ずっと持っていた疑問をシュウラにぶつける。
シュウラはその質問に対してあっさりとした回答をする。
「確かにガッチガチだとは思ったけどさ、すべてのものが頑丈ってことはない……たった一つの脆い所にそれなりの一撃を加えた……ただそれだけのことだ」
「……そう」
仮にそうだったとしても、そのたった一つの脆い箇所をあの時間で見つけ出して攻撃をした……サクラの言葉の通り、シュウラという男はサワンから見ても間違いなく強い。
「で、あんたはどうなんだ?」
「?」
「今のやり取り的にあいつらの仲間……て感じでもないな」
「間違ってはないけどそれはあくまで昔の話……今はサクラたちの味方。大天使に誓ってね」
「わかってるって、じゃなきゃサクラが斬りかかってんだろ」
「失礼な、僕はそこまで短気じゃないよ」
「俺と初めて会った時割とノリノリだっただろ」
「私も初めて会った時仕方がないとはいえ斬りかかって来たよぉ」
「やっぱりやってんじゃねぇかよ」
「フフフ」
和やかな会話。先程まで戦闘があったとは思えない雰囲気だ。
「それにしてもお前の猫、マジで肝が据わってんな」
「? ……ああ」
何のことだと思ったが、シュウラが指さした方向を見ると、岩の上でクオンが丸まり寝ている姿が映る。
「危ないと思ったから離れて待っててとは言ったけど……確かにそうだね」
「ある意味サクラと似てるかもね」
「俺との戦闘の時も似たような感じだったしな――」
「――サクラさーん!」
都市の方角、離れたところからサクラを呼ぶ声が聞こえた。
「みんな……」
メニシアにビリン、モネとネロが走ってサクラたちに近づく。
「おい、さっきの爆発音はいったい……ってシュウラ、何でここに?」
「というかサクラさん、上着は!?」
「ホントだ」
「寒くないの?」
「そう言えば脱ぎ捨てたままだった――」




