第4話 呪われた天使⑪
サワンの家に戻る道中……エデンを出た後の道中で、彼らは唐突に現れた――。
「やあやあ君たち……ちょっといいかなあ……」
サクラたちに話しかけてきた男女二人組……黒いワイシャツに少しボロついた黒いコートを身に纏う男と、黒いワンピースに白いジャケットを羽織る女。
見た感じ天上大陸――都市エデンに住まう人には見えなかった。
そもそもエデンのある方向とは真逆――天上大陸の入り口がある方向からやってきたので外部の人間であろう。
「……知り合い?」
「さあ……あれ? あなたたち、どっかで……」
「ひっどいなぁ……俺たちを忘れるなんてさぁ……サワンちゃん!」
「――!?」
男の両手が光ると、銃が手に取られており、すぐさま銃口をサクラたちに向け、発射した。
この展開を見越していたのか、サワンはすぐさま自身の片翼を巨大、硬化し、サクラと自信を覆うようにして発射された銃弾を防ぐ。
「やっぱり……弾は弾でも、魔力で作られた魔力弾……」
「ピンポ~ン、大正解~……さっすがサワンちゃん……この程度だと思うなよ!」
狂気的な笑みを浮かべる男がさらに乱射する。
「ニャ~」
起きたクオンの声や表情が心配そうにしていた。
「サクラ、クオンを懐に匿える?」
「クオン、こっち」
サクラの呼びかけに反応し、クオンはサクラの懐に潜る。
「このままじゃ防戦一方だよ……それにあの人たちはサワンを知っているようだった……」
「そうだね……そして私も彼らのことを知っている」
「じゃあ対策は……」
「あの銃弾は鉄の弾より殺傷能力はないから、痛いことには変わりないけど、飛び込むくらいは大丈夫……ただ、魔力がある限りは無制限というのだけが注意点かな……そして女性の方は――」
「戦いの最中にお話しとは余裕だね、サワン!」
話の中心となっていたもう一人の方の女が剣を持って空から突撃してきた。
「あれは僕に任せて、サワンは男の人を――」
「わかった」
片翼を元の状態に戻すのと同時に、サクラは地を蹴り、刀を持って、女の剣を受け止める。
「ヒュ~、やっぱりすごいね――」
「ハッ!」
話を遮るように、サクラは回し蹴りを食らわせ、男のいる方へと飛ばす。
「おっと!」
飛ばされて来た女を男は受け止める。
しかし、その行動が銃弾の嵐を止めることになり、守備に徹していたサワンを攻撃に転じさせるきっかけとなった。
「ハアッ!」
一気に間合いを詰めてきたサワンは、魔力を込めた拳を二人に振りかざそうとする。
「意外だね!」
男は銃で拳を受け止め、抱えられている女性が、さきほどサクラにやられた様にサワンに蹴りを入れる。
寸でのところでサワンは一歩後退するように避けた。
サクラともそこで合流し、互いに体勢を立て直し、再度構え直す。
「珍しい~サワンが殴り合おうとするなんて」
「変わろうが変わらなかろうが俺達には関係ないけどね……それに」
男はサクラを見つめる。
「はじめましての子もいるし紹介するよ……俺はキルライナ……この子はシャル」
「私たちは冥府の誘い……七司教に連ねる者……よろしくね」
「冥府の誘い……七司教……」
またしても出会ってしまった……。
面倒臭い組織……しかもこのような場所で……だが、起きてしまったものはしょうがない。
「正直俺らの目的は娘、お前じゃない」
「だからサワンを置いてさえしてくれば見逃してあげる」
「……サワンが目的?」
サワンの方を見ると、先程までと違ってその表情に緩さを感じられない。
歴戦の戦士のような、そのような表情だ。
「私があなたたちに何かしたっけ?」
「確かに俺たちに何もしちゃいない……だがな――」
再度、銃口をサクラたちに向ける。
「裏切り者を生かしておけるほど俺たちは甘くねぇんだよ!」
言葉の終わりが合図であるかのように、再び魔力で作られた銃弾の嵐が襲い掛かる。
だが、同じことを繰り返す程サクラも馬鹿ではない――。
「荒れ狂え――獄風!」
刀を地面に突き刺すと、魔力が刀を通り地面へと流れていき、サクラたちを守る盾のように地面から無数の竜巻状の風が現れ、銃弾を防ぐ。
「ワ~オ、ねえキル、あの子……強いよ」
「見ればわかる。あの風……一つ一つが途轍もない魔力を感じる……サワンさえどうにかなれば良かったんだけどな――」
リロードし再度放てる状態となった魔術銃。それを風に銃口を定める。
「ブラストショット――」
放たれた一弾が、風に直撃すると、弾けるようにしてすべての風が瞬時に消え去った。
「おい……あいつらはどこ行った」
風の消失と共に、サクラたちの姿も消えていた。
「逃げたの」
「そんなわけ――」
「「あるわけないじゃん」」
背後から二人の声が……風をおとりにサクラとサワンは二人の背後に回っていた。
「――五ノ太刀……餓鬼・雷切――」
雷を纏った刃がキルライナを襲う。
「――ッ!」
寸でのところで避ける……ことが出来ず、掠ってしまった。
「キル――」
「よそ見とは余裕だ……ね!」
またしても光の魔力を纏った拳がシャルに襲い掛かり、避けることが出来ず、直撃となってしまう。
勢いのまま後退してしまったシャルにキルライナ。
キルライナだけ掠っただけで済んだ……と思いきや――。
「――!?」
キルライナが膝から崩れ落ちた。
いや、何とか膝立ちで堪えることが出来たが、唐突に襲い掛かる痺れ……思い当たることと言えばあれしかない――。
「この刀傷か……」
「雷切に殺傷能力は無い。あるのは麻痺……斬られた所を中心に麻痺が広がっていく……心臓が止まるかはその人次第だけど」
「博打じゃねーかよ……だがまあ――」
どこか余裕を感じられる口調――。
すると、横にいるシャルが立ち上がり、細剣をキルライナの方へ向ける。
「シャル……やれ」
「はいはいっと」
次の瞬間――。
「――!?」
「……やっぱりか」
シャルがキルライナに細剣を突き刺した。
もちろんその箇所からは血が流れ始めていた……しかし、同時に別の何かが細剣に昇るようにして流れていく。
魔力でもない何か……だが、その何かから感じるのはサクラがキルライナに放った雷切の力――。
「雷切の力を吸収している……いや、食べてる?」
後者の表現の方がしっくりくる今映る状況。
突き刺した細剣が雷切の効果を食べている――。
さらにその効果が、細剣を通りシャルへと流れていく……まるで力を我がものへと変えているようだ。
全てを終えると、細剣を引き抜き鞘へと納めた。
同時にキルライナも立ち上がる。
見ると切られた服はそのままに、細剣による傷も含めて全ての傷が癒えていた……振出しに戻った状態だ。
「ごちそうさま! 強い子の力はやっぱり美味しいわぁ」
「さあ、第二ラウンドと行こうぜ――」




