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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
4周目 第4話 呪われた天使
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第4話 呪われた天使⑨

 店を出たサクラたち。

 空は店に入る前と違い、雲に覆われていた。


「あらら、これは一雨降るかしらね……空にいる時は雲の上だから雨が降ること自体珍しいんだけど……着陸してるし……」

「別に全く降らない訳ではないでしょ――ってクオン」


 ずっと沈黙していたクオンは、店にいる時から妙に大人しかった。

 ……と思いきや、ご飯が運ばれた時は今までに見たことがない勢いで食べていたので特に心配はしていなかったのだが、店を出た途端にサクラの胸に飛びつき、懐に入ろうとしていた。


「ものすごい勢いで食べていましたからね……眠くなったのではないですか?」

「あんなに夢中になってるクーは初めて見たかも……」

「……(コクコク)」


 サクラの懐に入ったクオンは、顔を見せた後そのまま寝てしまう。


「まあ、いいけどさ――」


 サクラ自身、クオンの行動自体珍しいとも思わなかった。

 久しく見ていないだけで、これまでも何回かあったこと……そのまま寝かせてあげたほうが互いに損することはない。


「サワン、この後はどこに行くの?」

「そうだね、一雨降りそうだからというのもあるけど、それを抜きにしても行きたいところがあるんだよ……六聖教会(ろくせいきょうかい)という教会にね」




 魔法と魔術に必要な魔力には、火、水、土、風属性と分類され、使用者は使用者は自分の魔力に応じた魔術、魔法を使用する。

 日常生活に溶け込んだ魔術……いわゆる一般魔術も例外ではない。例えば夜の時間帯に明かりが欲しい時は火属性の魔力が必要。大体の機器にはこういった用途に該当した属性の魔力が込められている。

 しかし、これら四つの属性以外にも二つの属性が存在している。

 それが、光と闇。

 この二つの属性は魔術において魔力を使用できる物は存在しておらず、魔法のみとして世間に認知されている。

 それはこの二つの魔力が魔術において必要ないから。加えて魔力としての光と闇の二属性は他の四属性よりも強い力を秘めており、単純に魔術に使用する媒体が持たないからだ。

 これら六属性にはそれぞれの属性を司る精霊が存在していると言われている。さらに精霊は女神の眷属とも呼ばれており、精霊同様に女神も各属性に対応した女神が存在している……これらを信仰対象としているのが、サワンがこれから案内しようとしている六聖教会――。


「――六聖教会は、それぞれの属性を司る精霊と、精霊を眷属とする女神がいて、それらを信仰している集団のこと……この世界において最大宗教みたいなものかな。実際に各地に教会があることだし」

「そうなんですか?」 


 メニシアがサクラの方を見る。


「確かにどこに行ってもあるね……でもメニシアの生まれ故郷のエリアスには無かったね」


 だとするとメニシアの反応にも納得がいく。

 サクラがエリアスに訪れた際には教会らしきものもなかった。


「ファルカスもそもそも僕たちは教会のある方には行ってないし、それはイリナもそうだね……そういえばアリストは……」

「建物が老朽化してるとかで一回建物ごと壊して一から建てるみたいだぞ」


 アリストの町にも無かったが、そういった事情があったのは知らなかった。

 だとすると、現状旅の中で教会が無かった町はエリアスのみとなる。


「別に無いからダメということもないよ。それにすべての町に存在しているわけでもないよ。実際私が旅していた時に訪れたいくつかの町も無かったしね~」

「精霊と女神信仰ですか……エリアスにもないことですし私とは縁遠い話ですね……」

「でもメニシア……いや、サクラたちもかな? 教会関連のものは見たことあると思うよ」

「……そんなもんあるのか?」

「まあ、見ればわかるさ……そろそろ着くよ」


 移動しながらの会話、見えてきたのは見るからに大きな建物で、誰もが教会だろうと思える建築がなされている。

 サクラたちの視界に映る建物こそ、目的地である六聖教会の大聖堂だ――。




 サクラたちがエデンに入る前、視界の奥に映る遠くからでも感じる圧倒的な存在感を放つ城……天上大陸を統べる大天使が住まう居城だとサワンは言った。

 その居城に負けないオーラを放つ建物も同時に視界に入っていたサクラたち……それが、目の前に存在する六聖教会の大聖堂。

 ここに来るまでに人の数も増えてきていたが、大聖堂を中心に圧倒的な数の人が行き来していた。


「それじゃ入ろっか――」

「……人多すぎだよ」

「大丈夫ですかサクラさん……」

「相変わらずだな、慣れないもんか?」

「……えぇ」


 サワンのテンションとは真逆の雰囲気を醸し出すサクラたち。

 どうやらサクラは人酔いしたようだ。


「とにかく中に入りましょうか。中でしたら座れる場所もあるでしょうから……」

「サク~、大丈夫~?」

「……早く行こ」


 サクラに寄り添いながら、サワンを置いて大聖堂の中へと向かう。

 そして取り残されたサワン……そこに起きてサクラの懐から飛び出したクオンが、サワンの肩に乗る。


「ニャ~」

「……クオン、私は寂しいよ……とほほ」


 と、言ってる暇があるなら早く追いかけた方が良い。そのようなことを考えて急いで後を追いかけた――。




 大聖堂の中は、外見から想像できる通りの広さを誇っていた。

 見上げると遠くにある美しく、芸術的なガラス張りの天井。

 晴天であれば太陽の光が、室内に明かりを照らしていただろう……あいにくの曇天により薄暗い環境になってしまっているが、魔術器具の明かりにより幾分マシとなっている。

 それに、大聖堂にいる人や流れる音楽が、曇天に負けない聖なる雰囲気を出していることにより完全に暗い雰囲気というのは避けられている。

 人混みにより少し体調を崩したサクラは、入り口そばにある教会椅子に座り様子を見る。


「……大丈夫ですか?」

「ん……外よりはマシかな……でも、中も人は多い」

「それは世界中から見ても大きい部類の規模を誇るからね……と言っても外部の人は少ないけどね」


 大聖堂の中にいる人数は目視で数えきれないほど。だからと言っていっぱいいっぱいというわけではない。


「一応この大聖堂も天上大陸の観光地の一つに該当する場所でもある。観光客自体そう多くないけど」

「それで、どうすんだよ。一応ここが一つの目的地みたいなこと言ってたけどよ」

「う~ん、ここに来たのも案内がてらただ来たかったというのもあるしな~。言ったでしょ、観光地として該当する場所って、だから選んだ……正直他に案内する場所は無いんだよ……つまんないし」


 最後の一言が住まう者ならではの言葉と言えよう。


「――サワンマイラ様」


 それは、音もなくやって来た。


「「「――!?」」」


 サクラにメニシア、ビリンは唐突な来訪者に身構える。

 モネとネロは、来訪者の美しい容姿に驚きよりも見惚れてしまっている。


「……びっくりした~、いつも言ってるじゃん、気配を消して近づかないでって、ねぇクオン」

「ニャー」


 サワンの反応からして日常茶飯事なのだろう。

 ただ、クオンに返事を求めるのはどうかと思うが……。

 唐突な来訪者は、サワンと同じ天使。

 見た目はモネとネロが見惚れるくらいには美しい……いわゆる美少年という奴だ。

 サワンの例があるので見た目と年齢が一致しているとは限らない。


「それでカルナ、用件は何?」

「……ジャルダルク様がお呼びです」

「……カルナが来るくらいだからまさかとは思ったけど、やっぱりね」


 聞き慣れない名前……サワンは、カルナという名の天使が現れた時点である程度の予想はしていたようだ。


「それで、いつ? 今とか?」

「最短でも今夜……都合が良ければとジャルダルク様は仰っておりました。難しければ翌日でも大丈夫だそうですが――」

「良いよ今夜で……サクラたちは今晩も私の家で――」

「失礼ながら、今回はサワンマイラ様だけではありません」


 サワンの話を遮るカルナ。


「私だけじゃないってまさか……この子たちも?」

「はい、サワン様だけではなく、サクラ様たち一行もご一緒にとのことです」


 指定はサクラたちにも向いていた。


「……私よりサクラたちに興味ありそうだけど……ハァ、サクラたち、今晩時間ある?」

「大丈夫だけど……」


 サクラは他の者の顔を順に見る。


「私は大丈夫です」

「同じく」

「みんなが行くなら行く~」

「……(コクコク)」

「……これが答え」


 サクラたちの答えは出た。

 サワンに関しては乗り気ではないが、こうなったら要件を蹴るわけにはいかなくなる。


「……わかった、今晩宮殿に向かえば良いんだね」

「はい……ご協力、感謝します」


 言い終えると、カルナはすぐに大聖堂を後にする。


「ハァ……ごめんね、面倒事に付き合わせちゃって……」

「別に構わないけど、僕たちに会いたいというそのジャルダルクって……」

「ジャルダルク――大天使ジャルダルク……天上大陸を統べる者にして、この世に存在する天族の頂点に立つ存在――」

「そのような方がどうして私たちに……」

「どうせ気まぐれだよ。でも安心していいよ、別にみんなを消すとかそんな物騒なことは絶対にしない人だしね」

「でもサワンはその大天使様とやらに会いたくねーんだな」


 先程のカルナとのやり取りからここまでどこか嫌そうな表情を続けている。


「会いたくないというわけじゃないけど……まあ実際会えばわかるよ……じゃあ気を取り直して、一応ここが現時点のゴール地点になるわけだけど――」


 サワンによる都市案内は、大陸そのものが観光地のようなものなので、どこへ連れて行くかという難しさがあるが、今回はここ六聖教会の大聖堂を暫定の案内のゴール地点としていた。


「正直ここ以外どこを案内したらいいかって言われたらこの後行く都市の最奥にある城――エデン宮殿になるわけだけど、どうせ後で行くことになるから他の場所が良いんだけどね……」

「自由行動で良いんじゃない?」


 このまま大聖堂で時間を潰すという選択肢もあるが、正直なところ何も無いので有意義な時間としては相応しくない。ゆえにサクラのこの選択肢というわけだ。


「良いんじゃないか? サワンがいるとはいえ私たち自身もある程度地理を共有できた方がいいしさ」

「私もありだと思います。ただモネとネロには保護者が必要かと思いますが……」

「サクってば子ども扱いしすぎだよ! ねぇ、ネロ~」

「うん……大丈夫だよ。それに……」


 ネロはサワンの方を見る。


「うん、さっきも言ったけどここは大天使が統べる地……命に関わるような危険は大天使は見逃す程ポンコツじゃないから大丈夫だよ」

「……サラッと馬鹿にしたよね」

「な、何のことかな~♪~」


 とぼけた表情を見せるサワンだが、いったい大天使とはどういった関係性なのか。

 それは後ほど嫌でもわかることだろう。

 話し合いの末、陽が沈んだタイミングまでが自由行動の時間となった。

 カルナとのやり取りで大天使と会うのは今晩――今日中だったらどのタイミングでも良いだろうということで食事を済ませて行くという話になった。

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