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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
3周目 最終話 破壊
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最終話 破壊⑦

「ハア……ハア……」

「……正真正銘の化け物だね、そんな体で――」


 グランドカリバーの一撃を防ぐことが出来ないと判断した破壊の魔女は瞬時に回避行動に出たが、間に合わなかった。

 上半身左肩を中心に抉られ飛ばされた。

 心臓を貫いても生きている――そもそも心臓が無いから意味のない話だが、どのような攻撃もしぶとく生きていた破壊の魔女は、息こそ上がっているものの、今回もしぶとく生きている。


「正直、驚いているさ……その攻撃をもう一度見れたのもそうだけど……私があの時(・・・)見た一撃よりも遥かに強力な一撃だった……訂正するよ、あなたは強い……さすがあの人と私の娘だ――」

「そんなこと言ったってどうせ死なないんだろ。現に即死ではなく今も生きている」

「なに……やせ我慢さ……さすが聖剣の一撃だ……」

「さっきまでいた場所は異常なまでに魔力が充満していた……それも悪魔因子に近い……だから最大に近い威力て放てた」

「……そんな能力だったねぇ……邪なる魔力を浄化、吸収して強力な光の一閃となって放たれる……まさかあの技を私が受ける日が来るとは……笑えてくるわ」


 自嘲的に言葉を吐く。

 それもそうだろう――。


「……なんで……」

「……」

「なんでお父さんを殺した……なんで裏切った……」

「……」


 サクラの旅の目的は父を殺し、生まれ育った村を滅ぼした破壊の魔女……サクラの実の母を殺し、復讐することだった。

 だが、破壊の魔女がそれに至った経緯をサクラは知らない。


「それは……ッ」


 突如、破壊の魔女が苦しみ始めた。


「……?」

「あああ……ぁぁあぁぁあ……ああぁぁぁぁああぁぁあぁぁぁああああああああああああああああああ――」


 何か(・・)を抑えるようにしていたが、サクラの放った一撃でその抑えが効かない。

 即座にその何か(・・)が破壊の魔女から解き放たれようとする――いや、静まった(・・・・・)


「……」

「……なんだ……?」


 領域魔法内の永遠とも言える広い空間に静寂に包まれる。

 そして、静寂を打ち破るように破壊の魔女の皮(・・・・・・・)を被った何か(・・・・・・)が口を開く。


「……破壊の書……裏節――けもの




 身体が内側から歪な形で盛り上がる。

 その盛り上がりから皮膚を突き破り、破壊の魔女は人の姿から異形の存在へと姿を変えようとしている。


「……グランの悪魔化と同じ……いや、それとは違う別の何か……それに魔力も……」


 姿だけではなく、彼女の持つ魔力も、その姿に相応しい歪さへと遂げようとしている。

 それだけではない。魔力量も大幅に上昇している。


「くそ……」


 聖剣を中段に構える。

 先の一撃でグランドカリバーを放つことが出来ない。

 自身の魔力を消費すれば使えないことはないが、威力が明らかに低下する。

 そして、破壊の魔女の身体の変化というのは完了した。

 獣――先程口にした名の通りの姿へと遂げた。


「先の質問の答え……教えてあげるよ……簡単な話だよ――気まぐれさ」

「――!」


 サクラの全身に怒りという感情が行きわたる。

 ただの気まぐれで父は、友は、村は滅ぼされたのか。


「正直、この姿は嫌いだ――だが、やはり気分がいい……何もかもどうでも良くなる……だから名乗らせてもらうよ――我が名は破壊獣マヤ――お前……この世の全てを破壊のかぎりをつくす獣さ――」




 一言で表すと、一方的だった。

 攻撃の一つ一つが圧倒的な暴力そのもの。

 速度も増してサクラは防戦一方状態。

 エンチャントで防御力を上げても、一撃が重く疲労が徐々にと蓄積されていく。


「攻撃しないのかぇ? ああ……攻撃できないんだったねぇ――」

「――雷鳴」


 頭上から強力な一撃が振り落とされる。

 だが、無傷に等しかった――。


「……この程度?」

「――ッ」

「だったら私の番だ……出でよ、剣たちよ」


 獣の目の前に複数の剣が召喚され、舞うようにして漂っている。


「舞え、剣たちよ――」


 荒々しい咆哮と共に、荒々しさとは真逆の美しき舞のごとく剣たちがサクラに襲い掛かる。


「クソ――」


 一点集中ということもあり、避けること自体楽だった。

 エンチャントで俊敏力を上げ、剣が当たるということはない――が、同時に止むこともなかった。


「いつまで持つのかな……」

「――ハッ!」


 聖剣を地面に突き刺す動作をするのと同時に強風を発動させ、身を宙に向かって逆噴射させる。


「再び荒れ狂え――獄風!」


 放たれる黒く荒々しい暴風が襲う剣を一掃する。

 暴風は、剣ごと破壊獣を襲う――。


「hhhhhhhhhhh――」


 如何なる言語にも聞こえない咆哮は地獄の業火を吐きだして暴風を相殺――いや、暴風を飲み込んで逆にサクラを襲った。


「――あああ!」

「――爆ぜろ」


 開いた口を閉じ、歯軋りする。

 放たれた業火は瞬時に爆発していき、飲み込まれていたサクラは防ぐ術なくまともに受けてしまった。

 身に纏っていた着物もほとんどが焼かれてしまい、全身も火傷のような傷を負ってしまう。

 着物もそうだが、生きているのが不思議なくらいだ。


「エンチャントが無かったら死んでいた……それだけではないか、聖剣――神器の能力も少しばかりあるか」

「……」

「私をこの姿にしたんだ……まさかここで終わりということはないだろう?」

「……」

「……折れたか――」


 呆れたとでも言うのか、サクラの今の姿を見て完全に殺すことに切り替えた。


「――死ね」


 口元に魔法陣が出現し、必殺の魔法が放たれようとする――。


「……一応聞くけど――」

「――!?」


 サクラの一言で魔法の発動を中断した。


「あなたは本当に破壊の魔女なの――?」

「……何が言いたい」

「いや……確かに魔力とかを見ても破壊の魔女そのもの……普通だったらね」

「……」


 一呼吸を置いて聖剣を構える。

 同時に火傷の傷も消えていく――治癒の魔法だ。


「あなたが獣になる前――苦しみ始めたのと同時に微妙だが魔力に変化があった。その変化は今も変わっていない……今までのあなたの魔力の質と大差ないけど何かが違う……そう、本当に微差だけど」

「……」

「もう一度聞くよ……お前は誰だ(・・・・・)

「……クク」


 破壊の獣が微笑すると――。


「クハハハハハハハハハ……そこを見破るか……半分正解だ! 私は破壊の魔女でありそうではない……これが答えだ……死ね」

「――ッ……あぁぁぁああああああ!」


 それ(・・)に気付いたサクラはすぐに回避したが、間に合わず、右腕を斬られてしまった。


「ハア、ハア、ハア……魔法刃……か」

「ご明察……破壊とは違うから私は好きではないけどねぇ」

「あの女じゃなくてお前の好みかなんかだろ……!」

「ふふ……一つ教えてあげるよ。別に私の意思は消えていないさ……ようは融合した訳さ……」

「融合……だと……?」

「ああそうさ……でも、そんなことは関係ない……お前もあのくそ猫のようにあの世に行くのだから……いや、行かないのか(・・・・・・)――」

「――ッ……ああああああ――!」


 完全に動きが低下し、容易くサクラは破壊の獣に手に囚われる。

 腕を斬り落とされ、耐性が明らかに低下したのに加え、囚われ握られるその強さが非常に強い痛みをサクラに与える。


「最期に何か言いたいことでもあるかぇ?」

「…………ぁ……」

「……なんだって?」


 風前の灯火と言うべきか……声すら発することが出来ないくらいに力が入らない。

 だから破壊の獣の言う通り最期のつもり(・・・・・・)で言葉を発した――。


「……触れたな(・・・・)

「――!?」


 何かに気が付いた破壊獣はサクラを手から離すが、既に遅かった。

 手から離され、地面に落ちたサクラの全身から桜の花のような淡いピンク色の光を放つ。


「……私の名前の由来……覚えてる……?」

「何を言って――」

「桜の花は一定の期間を過ぎると散っていく……だけどさらに月日が経過すると再び満開に咲き誇る……一度散ってしまっても諦めなければ再び再び咲きほこれる……諦めない事……そして美しい心を持つような子に育ってほしい……それが僕の名前の由来……覚えてる?」

「……」

「……まあ、べつにどうでも良いけど……この由来のような魔法を作ってみたんだよ……本来の用途とは違うけど……まあ、最期だし(・・・・)――」


 すると、破壊獣のサクラに触れていた方の手がサクラが放つ輝きと同じ光を放ち始めた。


「魔法の名前は……桜……桜のように散って、桜のように咲き誇る……本来は、自身の身体能力上昇系の部類だけど……あなたの破壊と同じ……反転(・・)させてみた……」

「……いったい……!」


 固有魔法ではないから魔法の効果の反転は比較して楽だろう。

 もし、サクラの言う通り能力上昇系の魔法だとするなら、反転なので能力下降系の効果になるのか……いや、本当にそうなのだろうか。

 能力を低下させたところで今のサクラがどうにかできるとも思えない。

 ――最期。

 言葉の途中でボソッと呟くように吐き捨てた単語。

 最期だとするなら能力上下昇降系の魔法を使用するだろうか。


「……!? まさか――」

「ふ……気づいたところでもう遅いよ――」


 言葉の直後に破壊獣は力無くその場に膝から崩れ落ち倒れた。


「力が……入ら――」

「確かに……能力低下も出来たけど……言ったでしょ、最期って……だからね、壊死させたよ……ただ、さすがに全身は無理だったけど……でも、動きを止めるには十分すぎる……」


 限界の身体に鞭を撃って、何とか立ち上がる。


「グランの悪魔因子を植え付けるやり方の一つ……ただ触れるだけってのを参考にしてみたけど……完全には無理……いや、一割も行っていないかな……今の僕の身体は呪いそのもの……安易に触れたら私は呪いを貰いますよって……言ってるようなもの……」

(声も……声帯まで……だが――)


 発声できないからといって魔法が使えない訳ではない。

 幸い、魔力も封じられているわけではない。

 詰めが甘い……破壊獣マヤはそう思い、負けは無いと確信してしまった――。


(――!? 今度はなんだ――?)


 サクラに触れた手を中心に全身所々歪な形で光を発し始めさらに力が入らなくなる。

 加えてその箇所の光がより強さを増していった。


「光っている場所は呪われる……そこを中心に呪い……壊死が始まり行動が制限されていく……本来のサクラの効果を反転させた形だから……闇桜かな……?」


(……身体が……熱く……いや、感覚が……)


「……いま、熱いと感じたよね……すぐに感覚は、消えたと思うけど……修羅・一閃の炎を……本来刀に凝縮するところを……僕自身に凝縮させた――」

「……!?」

「凝縮された炎を爆弾のように放つのが修羅・一閃、爆……つまり僕の身体は今、爆弾そのものって訳さ」

「ぁ……」


(そんなことして……いったい何を……)


 サクラから説明された行動自体サクラ自身に何のメリットもない。

 自分から自爆しますと言っているようなもの。

 サクラ自身が爆弾になったところで、いくら動きを封じられているからといって破壊獣マヤを倒せるに至らない。


「……僕の呪いを、移したって……言ったよね?」

「……ま、ぁ……」

「そうさ……呪いと一緒に修羅の炎も……送ってやった……光っている箇所すべてが……爆弾だ……」


 その表情に躊躇いも何もない。

 むしろあの女を殺せることに喜びを感じているような表情――眼だ。


(私を殺すためだったら自分の命を平気で犠牲にする……こんなの――)


「……さよなら」


 ニヤリとした表情に、最期の言葉と共に、サクラは魔法を起動。

 自身と破壊獣マヤの身体は、爆弾のよう強力な爆発によって内部から木端微塵に破裂し、復讐の炎が草原を焼き尽くしていった――。

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