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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
3周目 最終話 破壊
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最終話 破壊③

「ここまでしたのですから、さすがに……」


 先程よりも大量の血だまり。

 原型を留めているのが不思議なほどにズタボロとなっている身体。


「……これで終わってるならとっくに――」

「終わっているねぇ」


 その瞬間、サクラの腹部に強烈な違和感が押し寄せる。

 恐る恐る視線を下すと、腹部から腕のようなものが飛び出していた。


「――ッ」


 サクラの腹部に口から血が止まらない。


「サクラさん!」

「よそ見はいけないねぇ、坊や」


 背後から聞こえてきた瞬間、振り返る間もなくメニシアは吹き飛ばされた。


「この――」

「遅い」


 ビリンの方を見ることなく、手をかざし爆撃を連射する。


「――ッ」


 止まぬ爆撃。

 一撃一撃が重く、徐々に後退していく。


「そろそろかね――ん?」


 見覚えのある鎖が視界に飛び込んできた。

 再び破壊の魔女を拘束しようとするが――。


「同じ手だとつまらないねぇ――」


 鎖を握りしめ、そのまま鎖を強く引っ張る。


「え――」


 予想外の行動に反応する前にそのまま引きずられる。


「面白い魔力の持ち主だけど――バイバイ」


 鎖を握らぬ手に刀を召喚し、モネロの心臓をそのまま突き刺す。


「――」


 抵抗することもなくそのまま力尽きるように地面に倒れる。


「モネ、ネロ――」

「耐えるねぇ……エンチャント(・・・・・・)


 ビリンの視界から破壊の魔女が消える。


「な――」

「――破連撃」


 魔法で生み出された三つの黒炎弾がビリンを襲う。


「――ッ、……ぅわああああああああああああ――」


 被弾した瞬間に全身を一気に覆うように黒炎が広がる。


「苦しいだろう――それはそうだ。その炎が消す方法はただ一つ――お前さんの命が燃え尽き、その身体が灰も残らず燃え尽きることだ」


 悪趣味なほどの笑みを浮かべる。

 その笑みを見ているものは一匹(・・)を置いて他にいない。


「おや、何故猫が……そうか、思い出した。あの時の子猫か……サクラとずっとにいたのかぇ……この子たちもそうだが、てっきり一匹狼でいるつもりだと思っていたからねぇ……」


 悪趣味な笑みを引き、その顔は至って真面目で、あまりにも冷たい表情で言い放つ。


「私を殺すという割には、生温いね」

「にゃー……」

「本当に、僕もそう思うよ」

「――!?」


 もう聞こえてくるはずのない声が響き渡る。

 破壊の魔女はその方向に目をやるが、あるはずのそれが無くなっていた。


「……まさか――」


 そう思い他の場所に視線を移す。

 想像通り……何も無かった(・・・・・・)


「いったい――」

「どうしたんだろうね」


 背後から聞こえてくるその声に対して躊躇いなく魔法を放つ。

 だが、その先にはまたしてもなにも無かった。


「あたるわけがない。だってあなたの映る世界には何も無いのだから――」

「なにも無い……ッ! 領域魔法(・・・・)か」


 その瞬間、視界は歪み、世界は一変する。

 気が付くと破壊の魔女は床にうつ伏せで倒れていた。

 同時に激しい痛みが襲う。


「どう? 夢から覚めた気分は……」

「……」


 声の主――目の前のサクラを見渡す。

 あるはずの傷や、汚れなどと言ったものが一切なく、ダメージすら感じられない。

 さらに自身は血だまりの上……これ破壊の魔女から流れ出ていることを理解する。


「一体いつからって言いたそうだね……最初から(・・・・)、この部屋に入る前からだよ――」




 玉座の間に入る直前――。


「クオン、ちょっといい?」

「にゃ~?」


 クオンの背にサクラは右手を乗せる。

 すると魔法陣が出現し、そのまま紋章のようにクオンの背に刻まれる。


「サクラさん、これは――」

「夢の大樹……僕の領域魔法の軸をクオンにしたんだよ」


 領域魔法の特徴である規模と魔力の消費の大きさはよく目立つ。

 しかし、使い方によってはある程度の隠ぺいも可能。

 その一つがクオンへの軸の移動。


「発動と解除の権限をクオンに移動させれば魔法の発動を悟られないはずだから」

「でもクーって魔法使えないでしょ」

「……(コクコク)」

「いや、もう発動させるよ。その上でコントロールは僕がする。申し訳ないけど狭い範囲だからみんなも掛かってしまうけど」

「そこはサクラさんを信じます」

「「うん」」

「……そう。ある程度は僕がコントロールするけど、クオンには二つの重要な事を任せるよ」

「にゃー……」

「大丈夫、クオンは何もすることないから」


 クオンの頭を撫でて、心配よと落ち着かせる。


「敵がいた場合と仮定して、一つはクオンを完全に視認した場合。その時に夢の大樹は完全発動する。二つ目はそうだな……解除条件だけどそれは敵次第だね――」




「――だから僕は二つ目の条件をこう定めた……お前がクオンを見て思い出すかどうか。それが解除条件だ」

「……だとしたらあの時、発動と同時に解除され始めるけど――」

「夢の大樹の完全発動から魔法の解除までにかかる時間はどんなに短くても一分はかかる。だからすぐに思い出せたところで一分は魔法にかかる――お前をにダメージを負わせるには十分な時間だ」

「ダメージだけかぇ……」

「この程度で殺せるのならとっくにやってる……」


 サクラも十分に理解している。

 破壊の魔女との実力差を。

 正直なところ一人で勝てるとは思っていない。

 今回(・・)は仲間がいるとはいえ、それでも勝てるかどうかわからない。

 そもそもこの段階で破壊の魔女と戦うなど思いもしなかった。

 今回の戦いは想定外すぎる――だが、やるしかない。

 だからこそ、直前までの嫌な予感も含めてある程度の作戦を練ることが出来、それを行動に移すことが出来た。

 それでも、実際に目の前にすると、圧倒的な魔力も相まって殺せるイメージが全くと言っていいほど湧かなかった――。


「そこのお友達も無傷……一本取られたねぇ……」




 突如として発生した大きな揺れ。


「――!?」

「なんだ……」

「怖いよシア~」

「……うー」

「……まさか」


 メニシアの予感は的中した。

 それはサクラも同じ――。


「魔力が……なんだ、この強さ」


 揺れの正体は強大な魔力によるもの。

 その発生源は、サクラの目の前で倒れる破壊の魔女。

 すると、血だまりが突如として沸騰し始め、そして血と同じ強く不気味な赤く輝きだす。

 そして、何事もなかったかのように破壊の魔女は立ち上がる。


「傷が回復している……だと」

「領域魔法をコントロールすることで私が気付かぬ間に攻撃しダメージを与える。結果的に私はそれに最後まで気付くことなく地に伏せた――素晴らしい魔法センス……サクラ、あなたは現代において最高――いや、歴史的に見ても最高の魔法使いだよ」

「どうだか」

「本当だよ、最強の魔法使い(・・・・・・・)である破壊の魔女たる私がいうんだ」

「……」


 緊張が走る。

 対面した当初と比較しても明らかに違う雰囲気をまとっている。

 明らかに手加減されていた。

 いや、今でも本気で見られていないだろう。


「聖剣――解放……」


 聖なる輝きを纏う聖剣、それを構えるサクラに油断の一文字も存在しない。

 一瞬の気の緩みが死に直結する。


「そんなに怖い顔していると、可愛い顔が台無しだよ」

「黙れ――」


 サクラが動く。

 エンチャントによる俊敏性を底上げした瞬時に間合いを詰める――サクラの得意戦術の一つ。

 だが、先制攻撃を破壊の魔女はいとも容易く防ぎ、カウンターを仕掛ける。


「おや」


 光の楯がカウンターを防ぐ。


「短剣といい鎖といい、本当に神器は面倒臭いねぇ」


 指を鳴らし発動する全方位の魔法攻撃。

 それも楯が防ぎきる――ビリンを除いては……。


「咲け、エイジスの花よ!」


 大楯エイジスが光り輝くと、開花するように光は広がり、そのまま魔法攻撃を吸収し、光の花は閉じる。


「――?」

「放て、エイジスの花よ!」


 すると、再び開花した時はカウンターのように吸収した魔法攻撃を放つ。


「なるほどカウンター技か――」


 元は自身が放った攻撃。

 防ごうとするが、モネロの鎖「神の戒め」がそれを妨害し、拘束するように再び伸びてくる。


「同じ手が二度も通じるとでも」


 軽く飛んで鎖を避ける。

 そのまま飛行魔法で空中に留まり、一冊の本を召喚する。


「破壊の書一節――破」


 詠唱後、サクラたちの足元に魔法陣が出現する。

 同時に爆発が発生し、それぞれを吹き飛ばす。


「まだ終わらないよ――破壊の書二節――壊」


 次にそれぞれの上空に魔法陣が出現するとそこから炎の風が襲い掛かる。


「――ッ、エイジスの楯よ!」


 先程の爆発違い、一瞬でも時間がある。

 即座に楯を展開し皆を守る。


「ハッ!」


 その隙を見てメニシアが短剣を飛ばす。


「単調だねぇ。破壊の書――」

「多重!」


 詠唱の間もなく短剣は複数に分身する。


「――!? 三節、塵」


 少し驚きはするが、分身した短剣の目の前に魔法陣を出現し、それを通過した短剣は塵のように粉々になる――が、しかし――。


「――ッ」


 一本だけ魔法陣が間に合わずすりに抜けていき、破壊の魔女の脇腹を掠るように彼方へと通過し、光の粒子となって消滅する。


「――刻!」


 かすめた箇所に出現する紋章。


「……」


 なにも反応がない。

 破壊の魔女もメニシアも……。


「やはり――」


 メニシアにはある一つの疑問が浮上していた。


「私が一撃目に刻んだ紋章が消えてませんよね。二つ目も消えていない」

「確かに。でもそれがどうしたんだ――」

「破壊の魔女ほどの実力者なら魔獣などと違って滅することが出来なくてもある程度封じることが出来ます。それは彼女も例外ではないです」


 短剣「封魔ノ命」の能力は二つ。

 一つは弱き魔を滅するというもの。

 一つは強き魔は動きや能力、魔を冠する攻撃を封じるというもの。

 これらは使用者の実力に伴うので、メニシアが最強だった場合、破壊の魔女を滅するということも可能になるのかもしれないが、現段階では到底不可能だろう。

 ただし、封じるということは可能だ。

 現に破壊の魔女には二つの紋章が刻まれており、完全ではないもののある程度の制限はかかっている……はずなのだが――。


「短剣の効果は確かに発動しています。なのに彼女は封じる前と変わりない威力の攻撃を平然と仕掛けてくる……」

「――さっきからあいつが放つ攻撃に魔力を一切使って(・・・・・・・・)いない(・・・)――そうだろ?」

「正解……固有魔法って言うんだよ、坊や」


 固有魔法。

 その人にしか使えない唯一無二の魔法。

 体質や環境など様々な後天的な要因で能力が決まる。

 先天的な要因もあるが、そちらの方が珍しい。

 固有魔法は、一般的な魔法同様に魔力を使用して放つのだが、唯一違う点は、魔力を使わず(・・・・・・)に使用することが出来るということだ。

 例えば自身の体力、空気や植物等が持つエネルギーなどを得ることで使用することが可能になる。

 ただし、この場合だと魔力を使用した時より多少威力は落ちる。

 しかし、魔力を使用していないので「封魔ノ命」や「神の戒め」などの魔に干渉する効果は基本的には効かない。


「そして、落ちた効果はある程度実力で補うことが出来る。だからこそ私は魔力を使用するのと同等の威力を放つことが出来る」

「じゃあ、意味ないじゃん」

「そんなことないよ坊や……いや、この場合は娘になるのかぇ? まあ、どっちでも良いが、魔力を使えないのはある程度不便なんだよ。今は私が流した血で代用してるけど、血も無限じゃないからねぇ……とっとと解除したいものだよ――!」


 その視線はメニシアに向けられる。


「――ッ」


 凄まじく伝わるそれは――死。


「シア!」


 メニシアの目の前を勢いよく通り過ぎたのは複数本がまとまり、トルネードのように流れた鎖だった。

 そして、その鎖がメニシアを守ったのだと理解する。


「反応が速い――サクラの教えの賜物かねぇ」

「魔法……使えるじゃん」

「あぁ……別に魔力を使えないと言う訳ではないからねぇ。言っただろう、不便だって」


 破壊の魔女が放ったのは一般的な魔法だった――。


「私が使った三つの魔法――破壊の書って言ってねぇ……固有魔法を応用して作った魔法なんだよ」

「破壊の書――見た感じ破壊に特化しているようだけど……なるほどね、お前の固有魔法は――」

「実の母親に向かってお前とは……別に良いけどねぇ、そうだ、私の固有魔法は――破壊」


 言い終えると、再びメニシアに対して攻撃を仕掛ける。

 今度はビリンの大楯エイジスもあってさらに防げているのだが――。


「クソ、面倒だな」

「ごめんなさい」

「別に、メニシアは悪くねぇ――」


 モネロが攻撃に専念しているが、破壊の魔女はそちらも上手く立ち回っている。

 次第にあちらも防戦一方になりつつある――。


「――輝け、雷鳴!」


 突如として強烈な雷の一閃が破壊の魔女に落とされる。

 サクラが放った自身最強クラスの一撃を誇る魔法。


「続け、雷鳴!」


 さらに一回、さらに……と、何度も放ち続ける。


「ハァ、ハァ……」


 ある程度回数を重ねたあと発動を止め、膝をつく。

 その手には魔法杖が握られており、それが力が抜けたサクラの支えになっている。


「す、すごいな……」

「はい……それに――」

「……綺麗だった」


 魔法の発動後、その名残として綺麗な光が散り散りとなって辺りに舞っており、それはまるで美しき雪景色を見ているかのようだ。

 その美しさとは対称的に、景色の中心に倒れ込むのは、雷鳴による度重なる一撃で黒焦げと化した破壊の魔女その人だった――。

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