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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
3周目 第3話 雷魔潜む魔術都市
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第3話 雷魔潜む魔術都市㉚

 悪魔因子を自身に取り込むことによって悪魔へと変貌したグラン。

 さらに魔術都市イリナ全体にばら撒いていた悪魔因子をすべて取り込むことで、半永久的に強化、回復するという規格外の力を得た。

 故にすべてを圧倒する。

 故にすべての攻撃は無効にするレベルで防御力を発揮する。

 故に小さな油断が生まれる。

 そう、自身最強の技を放つ直前までのその時間にそれは生まれる――。




「――ッ!」


 突如、背後から何かが首を絞めつけ後方へ引きこもうとする。


「――鎖?」


 サクラも突然のことで一瞬気が緩むが、その気の緩みが冷静に物事を判断することが出来た。

 鎖――グランの技の発動を直前に止めたものの正体だ。

 鎖と聞いて最初に思い浮かべるものはあの二人(・・・・)――実際に鎖の先を辿ると案の定だった――いや、案の定ではなかった。

 正確には半々と言ったところだろうか。

 双子であって双子ではない――。


「モネ、ネロ――でもあれは」


 姿を見せたのは二人ではなく一人。

 悪魔化した際に一人の姿となったモネとネロであった。

 違うのは、悪魔化していると言う訳ではなく、その姿は人間そのもの。

 隣にはエルドラルがおり、「月の魔女」の異名を持ちエルドラルの娘でありモネとネロの母でもあるサラーナの形見の魔法杖を鎖に添えている。

 エルドラルは魔法こそ使えないが、魔法使い並みの魔力を持っているので、魔術道具に魔力が不足しても自身の魔力で補うことで自身の魔力がなくなるまで魔術を行使することが可能だ。

 さらにサラーナの形見である魔法杖の特殊効果により魔法に近い技を使用することが出来、加えて自身の魔力をこの魔法杖を介することで他方に渡すことが可能であり――。


「行きますよ」

「うん!」


 合図と同時にエルドラルは魔法杖を介して鎖に魔力を流し込む。

 そのまま鎖の先端へ向かうよう沿うように流れていき、グランにも触れる形で鎖全体にエルドラルの魔力が満ちた。


「ぐっ……ぁあぁあああぁああっぁあ――」


 グランの表情は苦渋を浮かべ、そのまま声を漏らしてしまう。

 そもそも、グランがサラーナを狙った理由はサラーナの持つ類稀なる良質な魔力を保持していたからだ。

 質が高いがゆえにその魔力はあらゆるものに対して高い順応性を持ち合わせている。

 それはグランの目的とする「悪魔化」には最適であり狙われた理由でもあった。

 だが、サラーナの子であるモネとネロはそれ以上の良質な魔力を保持していた。

 故に狙われ、今の今まで実験の道具に使用され続けていた。

 そんな質が良く順応性が高い魔力をモネとネロ、その母であるサラーナが保持しているということは、サラーナの父であるエルドラルも例に漏れることはなかった。

 魔法が使えないという理由だけでグランからは見向きもされていなかったが、エルドラル自身サラーナに劣るにせよ負けないレベルの質と順応性を持つ魔力が流れている。

 その魔力を魔法杖に介してモネとネロの鎖に流す。

 加えてモネとネロの魔力も同時に鎖に流し込む。

 ここでグランが苦しみだした理由だが、そもそもこの鎖は神器であり、魔を冠するものに対して高い効果を発揮する。

 それは魔の力が強ければ強いほど新規の効果は比例するように強力になる。

 モネとネロの鎖は魔を抑える効果を持ち、対象者の行動を鎖で縛り拘束する。

 魔を冠するものに対する追加効果により、今のグランのように苦しみだす。

 それだけでも強力な効果を発揮しているのに加え、モネとネロ、エルドラルの順応性が高い魔力によってその効果が魔力に溶け込み、さらに強力な効果と化してよりグランを苦しめている。


「くそ……ああああああ!」


 鎖から抜け出そうと必死に暴れ抗うグランだが、暴れれば暴れるほど鎖の縛りがより強力となり首を絞める。

 これも神器の鎖の能力の一つでもある。

 さらに鎖は本数を増やしグランの身体の縛ろうとする。

 しかし――。


「ああああああああああああああああああ!」


 最後の足掻きのように溜めていた球体の持つエネルギーをサクラに目掛けて放つ。

 だが、サクラも何もしていなかったわけではない。

 この間すでにサクラは跳躍しており、すでに球体の放ったエネルギーと接近しようとしていた。

 跳躍と同時に精神、集中力を研ぎ澄ませ、斬る体勢となっていたサクラは、何の迷いもなくそのエネルギーを斬る――。

 流れるその剣筋はエネルギーを発する球体に到達――。


「はああああああ!」


 派手さもなく、綺麗な一閃――光の球体は一閃のように綺麗に二つに分かれ、放たれたエネルギーと共に聖なる光へと浄化され、聖剣に吸収されていく。


「っっっざけんなあああああああああああああああああ!」


 怒り、憎しみ、そして悪魔因子の暴走などすべてが噛み合ったことにより急激に限界まで強化されたグランは縛り付ける鎖を勝る勢いで強引に引きちぎり、サクラに襲い掛かろうとする――。


「――ぁ」


 謎の感覚がグランに襲ったのと同時に視界に大きな光の一矢が映りこむ。

 一瞬の疑問の内、すぐに理解する。

 先程まで技のチャージをしていたビリンが放った最大級のジャスティス・アローであることを。

 だが、どんな技であろうと、どんなに身体に風穴が開こうとも今のグランには関係のないことだ。

 すぐにでも回復する――はずだった。


「な……ぜ……っ!?」


 どんな傷でも瞬時に回復するはずのこの身体がいつまで経っても回復しない。

 いや、回復はしているがその速度があまりにも遅かった。

 まさかと思い、ジャスティス・アローが放たれたであろう位置を振り向く。

 そこには発動者のビリンがおり、加えてメニシアもそこにはいた。


「……まさ、か……」


 グランの予感が的中した。

 メニシアの手元には光の粒子が集束しており、最後はナイフ状の形態に姿を変えた。

 そう、グランが恐れていた神器の一つである短剣「封魔ノ命」だ。

 能力は魔を滅する――だが、これは魔法や魔術、弱い敵に対してのことだ。

 真の能力は魔を封じること。

 魔を冠するものに対するすべてを封じる。

 攻撃技などを封じ、そこに至らなくても弱体化させる。

 対象者が悪魔などの魔を冠しているものであってもそうだ。

 行動や能力なども封じたり弱体化させる。

 さらには毒のような効果をも与える。

 まさに魔を冠する者にとっては「毒」そのものと言える神器だ。

 そして、ビリンのジャスティス・アローに封魔ノ命を乗せて放った。

 この効果により、グランの能力等は封じられ――と言いたいところだが、メニシア自身の戦闘経験などが未熟であることに加え、対象者であるグランが強大過ぎるというのもあってそこまでに至れず、弱体化で止まっているのが現状。

 しかし、それだけでも十分だった。

 回復だけではなく、能力も含めたすべてにおいて弱体化。

 加えて神器共通能力である魔の弱体化もあってさらに効果は上乗せ。

 このタイミングが最後のチャンスなのだが、ビリンも今の一撃でグランに通じる攻撃手段を失い、エルドラルも魔力の受け渡しに加え、先の戦いの消費もあってこちらも不可。

 メニシアもモネもネロも決め手になる攻撃手段を持ち合わせていない。

 現状唯一の頼みなのがサクラしかいない。

 球体を斬った後止まることなく流れに身を任せたサクラは、そのままゆっくりと下降している――その手に光を纏う聖剣を構えた状態で。


(あの球体がどれほどの悪魔因子かは知らないけど、これなら十分だ)


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す――――――」


 完全に頭に血が上ったグランは、両手を開いた状態で重ね、中心魔力を集中させる。


「再び放つは大いなる勝利の一閃――」

「死ねぇぇぇぇぇぇ!」


 サクラが放つ前にグランが雷の光の光線を放つ――。


「グランドカリバー!」


 そのようなことお構いなしに、空中で聖剣を勢いよく振り降ろし強大な光の一閃を放つ。

 弱体化したグランが放つ光線を容易に飲み込み、今度は言葉を発する間もなく、グランをも飲み込んだ――。

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