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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
3周目 第3話 雷魔潜む魔術都市
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第3話 雷魔潜む魔術都市㉙

「夢の大樹」は対象者を睡眠状態にするだけではない。

 眠りに落ちた対象者の魔力を吸収し、使用者の魔力となる。

 常時魔力を消費し続けるという領域魔法の弱点を「夢の大樹」は実質解消している。

 つまり、対象者の魔力が切れるまで発動し続けるということになる。

 使用者を殺すことで魔法を止めることが可能だが、使用者であるサクラの実力的には並大抵の敵だと相手にならない――要は弱点があるようでない完全な魔法とも言えるだろう。

 こうしている間に眠りに落ちたグランの魔力は、大樹を経由してサクラの魔力として吸収され続けている。


 グランの魔力により咲いた花の一輪がゆっくりとサクラの目の前に落ちてくる。

 それを受け止め花弁を甘噛みする


「ここまでまずいの初めてかも」


 それだけグランの魔力は悪魔色に染まっていたのだろう。

 それにしてもグランの保有する悪魔因子は本当に作り出したものなのだろうか。 

 本人も生粋の人間と言っていたので、それを信じるなら、ただの人間がどのようにして悪魔因子に辿り着いたのか……。


「サクラ、まだだ!」

「は?」


 ビリンの指摘に疑問を浮かべたが、その時にはすでに遅かった。

 無論、サクラは油断などしていなかった。

 どんなに強力でもあの状態のグランなら「夢の大樹」の効果から抜け出すことなど容易いだろうと考えた。

 結果は予想通りだったのだが、目覚めて一発目の攻撃だった。

 魔力を吸収されているにもかかわらず、その攻撃は今までで圧倒的に高い威力だった。


「――ぁっ……」

「――ッ、サクラ!」


 ビリンはエイジスの楯で雷撃を防げたが、サクラは防御が間に合わず横腹を抉る様にかすめた。


「――」


 グランの瞳には生気が一切感じられない。

 別に死んだということではない。ただ、「夢の大樹」出現前後では明らかに雰囲気が変わっている。

 それは攻撃にも表れていた。


「こいつ、また攻撃の重さが――」


 またしても上昇した攻撃力。

 一撃の重さは聖剣で受けきるので精一杯。

 これでいて速度も速いと来た――エンチャントによる耐久の付与があるとはいえ、それも時間の問題だ。


「――ッ」


 瞬時に何かに気が付いたグランは、攻撃を止めすぐに後ろに下がる。

 次の瞬間、グランのいた地面から光の矢――ビリンのジャスティス・アローが射貫くように上空へと放たれたが、瞬時に躱された。

 だが、サクラにとっては、たとえ瞬間的な出来事であったとしても、その時間は命拾いをしたのと同時に体勢を立て直すには十分な時間でもあった。

 先の一撃で負った傷を癒す。

 さらに自身にエンチャントし能力値を全体的に再度底上げをする。


(――まずいな……)


 策が無くなった訳ではない。

 しかし、グランのパンデモニウム計画の規模がこの町全体――あるいはそれ以上の範囲にまで及んでいるのだとしたら、相当の悪魔因子が拡散されている。

 それらをもしこの瞬間にでも吸収したら、放つ攻撃全てを回復しつつさらに自信を強化していくだろう。

 感じる魔力の感じを見ても、消費される魔力と違い悪魔因子は体内に止まり続けている。

 つまりはグランの体内から悪魔因子を取り除く以外、悪魔因子を減らす術はない。

 それ自体はモネとネロの件で実践済み。

 ただ、今のグランを見てもそれが容易ではないことくらい想像は付く。

 せめて、数秒でも(・・・・)足止めすることが出来れば良いのだが――。


「――」


 突如大きな羽を大きく広げ、宙に浮く。

 そのまま徐々に上昇し、一定の場所に到達するとその場で停止する。


「なんだ……?」

「魔力の流れが……まさか!?」


 グランは右手人差し指を高らかに掲げる――すると、小さな魔法陣が展開。同時に極小の光の球体が出現。

 その球体は少しずつ肥大する……周りの空気――それだけではなく、魔力といったありとあらゆるエネルギーを取り巻くように吸収している。


「さすがにあれはだめ――ビリン、まだ技は撃てる?」

「撃てる――だけど数発が限度だ」

「だったら数発分を一回に凝縮して放つことは――」

「わかった。だけど少し時間は貰うからな」

「うん」


 正直、数発を一発にすることで強力な一撃へと昇華させたジャスティス・アローを放つことで何が変わるかと聞かれてもわからない。

 それが数発なら話は変わってくるが、そのようなことを言っていられる状況ではない。

 一発しか撃てないのなら、同等以上の威力を誇る攻撃をサクラ自身が放てばよいだけのこと。


「修羅・一閃――爆!」


 聖剣から刀へ切り替えて放った爆炎撃。

 一閃の軌道を相手ごと飲み込むその炎の一撃は、サクラの魔力を上乗せたことで通常時よりも威力は増加している――はずなのだが。


「これもだめなの……」


 光の球体は爆炎をも飲み込みさらに増大していく。

 あらゆるエネルギーを吸収していくその様はブラックホールのようだ。

 場合によっては最大級のジャスティス・アローすら吸収してしまうだろう。

 だとすると――。


「本人を直接叩けばいい――!」


 刀を構え直し、宙に留まるグランに斬りかかる。

 しかし――。


「――!?」


 球体から悪霊のような存在が姿を現し、接近するサクラを簡単に押し返そうとする。

 サクラは空気をも斬る「修羅・一閃」で悪霊を斬っていくが、斬っても斬っても球体から新たな悪霊が出現し続けていく。


「めんどくさい!」


(ビリンはジャスティス・アローの発動に向けて溜めていてアシストは望めない。エルドラルもあの球体に攻撃を吸収されるだろうからそっちもだめ――)


 半ば詰みかけたこの状況。

 その時、球体から出現し続ける悪霊の数が急激に増加した。


「なっ――」


 数多の悪霊がサクラを襲い、斬る間もなくそのまま地面に押しつぶされてしまう。


(サクラ――)


 今すぐにでも手を貸したい。

 しかし、ここで溜め続けたジャスティス・アローの発動を中断しては水の泡となってしまう。


「――技の発動に集中して!」


 サクラを押しつぶしている悪霊が次々を聖なる光へ――そして浄化され、悪霊に押しつぶされたサクラが持ち替えた聖剣にすべて吸収される。

 聖剣を構え直し、グランを睨みつけるように立つサクラ。


(あの数を吸収してもまだ足りないな……)


 普通だったら十分な数を吸収できている状態なのだが、相手が相手なのでそれだけでは意味をなさい。

 吸収した悪霊も、悪魔因子のごく一部に過ぎなかった。

 せめてあの球体を斬ることが出来れば話は変わってくるのだが、それは死と隣り合わせというもの。

 だが、悠長に考えている時間はない。

 考える暇が合ったらとにかく行動に移せ――だが、その時間が瞬間だったにせよ遅かった。


「――接続完了」


 この一言で球体の動きが止まる。

 そして、大地や空気といったあらゆるものが震える。

 全ては強大に成長した球体が発する魔力によるもの。


「――やるしかない」


 あれがどのような攻撃をするのかわからないが、ジャスティス・アローで阻むことはすでに不可能――だとすると、サクラに残された唯一の道は聖剣で光の球体を斬るしかない。

 斬ってジャスティス・アローをグランに直接射貫く。

 極限までに集中力を研ぎ澄ます。


極ノ魔(きわみのま)――」


 球体の標準をサクラに合わせるように腕を伸ばす。

 サクラもすでに斬る体勢に入っている。

 球体の魔力は秒ごとに未だ上昇――。


「パンデモニウム――終わりだ」


 技の名を告げ終えた直後、不敵な笑みを浮かべ、グラン最強の技が放たれる――。

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