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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
3周目 第3話 雷魔潜む魔術都市
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第3話 雷魔潜む魔術都市㉘

 悪魔因子によって蝕まれ、悪魔化していた人々は、その悪魔因子を吸収され元の姿へと戻っていく。

 完全に抜けた人々は、同時にその場に倒れていった。

 グランにより吸収されていく悪魔因子は、絶命寸前の身体に癒しをもたらし、そして元の形を崩壊させる。

 歪な形、そして悪魔以上に不気味な存在へと遂げたグランの表情は幸せそのものと言ってもいい。

 もう手遅れだろう、すべてにおいて……だからこそ迷いなくサクラは斬りに行ける。

 サクラとビリンの攻守に、グランは先程以上のスピードによる攻撃で応える。

 スピードだけではない。攻撃の威力も自身の耐久面も圧倒的に上昇している。

 加えて、吸収した大量の悪魔因子により無尽蔵に近いレベルの魔力、さらに瞬時に傷を癒す回復能力も付与された。

 よってサクラも決め手に欠けている状態が続く。


「修羅・一閃――」

「ヒャッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ――」


 サクラの一撃をグランは腕で防ぐが、その腕はあっけなく斬り落とされ、二撃目で肩付近まで斬られる。

 だが、攻撃を止めることなく襲い掛かる。


「こいつ――」


 何かに気が付いたビリンは、光の楯を二人の間に出現させ、そのままグランを後方へ勢いよく押し出す。

 同時にサクラも後方へと下がり体勢を立て直す。

 しかし、光の楯による体当たりはそこまで効いていないようで、そこまで後方へは下がらず、まるでバーサーカーのように攻撃の手を緩めることなく再び襲い掛かる。


「――腕が」

「再生してやがる、いつの間に――!?」


 斬り落とされたはずのグランの腕は、最初から何も無かったかのように綺麗に再生していた。

 それだけではなく、先程よりも動きに速度が増しており、遂にはサクラの目にも追うことが出来なかった。


「――ッ!」


 気付いた時にはすでにサクラの間合いに侵入し、回避も不可能な攻撃をサクラはもろに受けてしまった。

 サクラが捉えきれなければ、ビリンには到底無理な話――瞬間的にそう考えてしまったのが駄目だった。

 すでにグランはビリンの背後を取っており、それに気付いた時には、放たれた一撃により吹き飛ばされていた。

 救いだったのは、エイジスによる常時自動防御によってある程度ダメージ量を抑えることが出来た。

 それでも大きい一撃に変わりない。


「ヒャッヒャヒャ――いや~無様ですね~先程の威勢はどこに行ったのやら。さっきの技をもう一度……あ、もう撃てなかったりして――ざまあヒャッヒャヒャヒャヒャ――」

「……あおり属性高すぎるでしょ」


 だが、強ち間違いと言う訳ではない。

 一度はグランを倒した光の一閃「グランドカリバー」をもう一度使用すれば間違いなくグランを倒すことは可能だ。

 しかし、先の一撃で聖剣に溜めこまれていた魔力をすべて使い切ってしまった。

 サクラの魔力を使用することも可能だが、大量の魔力を持っていかれるだけでなく、サクラの魔力との細かい性質の違いなどによって威力も最大限に放つことが出来ない。

 それだけでも本来は十分なのだが、それだとグランを倒しきることは出来ないだろう。

 グランの持つ魔力や悪魔因子を奪うことが出来れば話は変わってくるのだが――。

 

「――ッ」

「おら寝てんじゃねーよ!」


 いつの間にかサクラのすぐそばに移動しており、奴隷に対してのように容赦ない蹴りサクラの腹に入れる。

 強すぎる蹴りに跳ねるように転がり飛ばされる。


「――ハァ……ハァ」


 聖剣を地面に突き刺し、寄り掛かるようにして立ち上がる。


「ふむ。魔法による傷の回復ですか。回復したところ体内に蓄積されていくダメージが回復することはない……どこで限界を迎えるか楽しみだなぁ~」


 狂気で歪みきった笑みを浮かべるその表情。

 完全に人間を辞めているその姿に言えるかどうかは別にして、初対面時のボケているようでどこか優しそうな表情はどこに行ったのか……。


「ハァ、ハァ……フゥ……」


 息を整え、聖剣を中段に構える。


「ビリン、割と離れてて(・・・・・・)

「――! わかった!」


 何かを察したのか、ビリンは即座にその場を離れる。

 サクラがこれから何かをやる(・・・・・)ことを理解したビリンに対して、グランは未だに理解できていない。


「何ですか~? いまさら何をやっても無駄なんだよ!」


 雷を槍を生みだし、サクラに攻撃しようとするが――。


「ねえ、あなたは知ってる?」

「あぁ?」


 突如、謎の言葉を語りかけてきたサクラに対して、動きを止める。


「夢には二種類の夢があることを――」

「――ハア?」

「一つは途中で終わる夢。一つは永遠に覚めることのない夢――。

 どちらの夢にも共通するものは一本の大きな大樹。その大樹はどんなに見上げも果てがない。

 果てしないその大樹には大いなる意思を持っている。それは選択――」

「――何言ってやがるんだ」


 意味不明な語り。

 狂人並みの魔人と化したグランに残された研究者としての悪癖がここに来て出てしまった。

 そう、嵌ったのだ……サクラの術中に――!


「……ぁ?」


 ふと身体が重くなるような感覚に陥った。

 重力等の物理的な重くなるとは違う。

 それはまるで……そう、人に必ずしも訪れる睡魔(・・)に――。


「単純な話――いるかいらないか……いらない子は夢から覚める。いる子……大樹のお気に入りはそのまま覚めぬ夢に囚われることを――」


 すると、サクラを中心に大地が揺れる。

 背後に何かが陽炎のようにゆらゆらと少しずつ姿を現す……それはまるで大樹そのもののようだ。


「――ゆらりゆらりと現れろ、夢の大樹」


 語りから想像される大樹そのものが出現する。

 その大きさは魔術学校など容易に覆うほどだ。


「あなたの間違いはただ一つ……僕の語りを止めなかったこと」


 その言葉も聞き取り辛い。

 サクラの言う通りなのだろう……根の研究者気質がここに来て仇となってしまった。

 今のグランだったら感情を殺し完全にバーサーカーになることも可能だった。

 もしもの時に消さなかった自分の甘さに反吐が出る。

 ……考える余裕もなくなってきた。


「なんだぁ……これ、は……」

「名前の通りだよ。対象者に夢を見せる領域魔法」

「領域……魔法だと……!?」


 領域魔法は普通の魔法と違う点は魔力の消費量にある。

 広範囲に効果が行きわたる領域魔法は、範囲に応じて消費する魔力も上昇する。

 今回サクラが使用した「夢の大樹」の範囲は魔術学校を――いや、見た感じ本気ではないことからこの都市すらも飲み込む程の範囲まで広げられるであろう。

 魔術学校全体を範囲にするだけでも相当な魔力の消費であるはずなので、そう考えると――。


(どんだけの魔力量なんだ――へたしたらあの女(・・・)より……)


 グランが知り得る中でサクラの魔力量は間違いなく一番と、この光景を目にしたら認めざる負えない。

 だが、それを考えるよりも徐々に強くなる睡魔に諍えなくなっていく――。


「……」


 そして、グランの意識が完全に消失。

 消失と同時に大樹にいくつかの花が美しく咲いた――。

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