第3話 雷魔潜む魔術都市㉗
光を放出しきった聖剣に輝きは失われ、元の状態と化した。
「――ふぅ」
「お疲れさん」
「……ビリン、エルドラルも」
離れていた二人がサクラの元に近づく。
「先程の一撃は――」
「あれは元々使えた技。ただあそこまでの威力は初めてだけどね」
「それは聖剣の真の――」
「うん」
聖剣が放つグランドカリバーは、この戦い以前から使用していた攻撃技。
今までは自身の魔力を用いて放っていたが、今回はモネとネロ、そして悪魔化した人たちから浄化し吸収した悪魔因子だった光を用いた。
それこそが本来の使い方で、威力はサクラの魔力による発動の数倍の威力を誇る。
さらにサクラの魔力も上乗せすることも可能だが、一帯がただでは済まない威力になってしまうと直感が叫んでいたのでそこまではしなかった。
だが、上乗せしなくてもその威力は凄まじい。
光が通過した道を中心に荒れ果てた光景が物語っている。
「だけど――っと、言ったそばから」
「主犯をやっても止まんねーのか!」
グランを倒しても、悪魔化した人々の行動が止むことはなかった。
それどころか、急激に殺意が増しサクラたちに襲い掛かる。
完全な状態ではないとは言え、威力に速度は洒落にならない。
「めんどいな……」
「聖剣で悪魔因子を取り除くことは――」
「可能だよ。でもビリンのその楯にも同じことが可能だと思うよ。さっきの技のように」
「さっき……花か!」
カウンター技である「エイジスの花」――対象の攻撃を花で包み込むようにして飲み込む。そして威力を倍増させて相手に放つカウンター技。
これを応用することでサクラの聖剣のように悪魔因子のような邪悪なる力を吸収、取り除くことが可能だ。
しかし――。
「――ッ」「ァァァ……」「――――」
「……なんですか、いったい」
突如として悪魔化した人々全員苦しみだし始めた。
時間を置かず、苦しむ人々から禍々しい光を発光――その光は各々から離れ、すべてがある一点に集まり、吸収される。
「まさか……」
「あれでもダメなんだ……しぶとい」
光を吸収したそれは、溢れたのか自信は光に包まれ、身体が膨張していき、それは歪な形へと遂げていった。
「あれはもう救いようがない……先生、構わない?」
「……致し方ありません。お願いします、サクラさん、ビリンさん」
「うん」「ああ」
エルドラルは魔術とアイテムを駆使して二人の魔力や傷を癒す。
ある程度まで回復したサクラとビリンは、歪な存在と化した雷魔人グランを迎え撃つ――。
「「……ぅ」」
二人が目を覚ましたの同時だった。
瞼が開き、二人に移りこんだ最初の景色は猛烈に気味が悪い赤黒き雲に包まれた空の天井――。
「あ、二人とも――よかった~」
「にゃ~」
聞こえてきたのは、怖いは少し高いが一人の男性の声と一匹の猫の鳴き声。
「二人とも気を付けて、布がかかっているだけで下は何も身につけてないから」
何のことだと思い、起き上がるのと同時に視線を落とす二人――モネとネロ。
メニシアの言ったことの意味をすぐに理解をしたが、特に恥じらうという様子もない。
「……ご、」
「ごめんなさい」
最初に発した言葉が謝罪だった。
いきなりのことで困惑をするメニシアだったが、すぐに先の出来事についてであるということを察する。
「別に、二人が謝ることではないです。そう、悪いのは二人を苦しめたあの人です。だから自分たちのことを悪く思わないでください」
二人の頭を優しく撫でる。
嬉しさもあり安堵もあるその表情。少し涙も浮かべている。
「それはそれとしてさすがにその格好のままではまずいですからね――」
メニシアは短刀を取り出し、二人を覆う大きな布を二つに切り分ける。
一人分を覆うサイズの布へと切り、崩れないように端と端で結び固定する。
「サク……大丈夫かな」
「……(コクコク)」
自分たちの意思とは無関係とは言え、先程までサクラと激しい戦闘を繰り広げていたのだ。
サクラもそれなりのダメージがあるはず……。
「まだ余裕がありそうな感じだったので大丈夫だと思いますし、信じましょう――」
ゴオォォォォォォ――――。
「――え」
「な、なに?」
「――ぅ、さむい……」
大地が揺れている。
いや、実際には揺れていない。
そう錯覚するほどのプレッシャーを感じる。
故に寒気が高まり微々たる震えが走る。
プレッシャーの発生源は恐らく――。
「……シア、行こう」
「え」
モネからこの言葉を聞くとは思わなかった。
同調するようにネロも頭を縦に振る。
正直なところあの戦闘に参戦したところで足手まといは目に見えている。
しかし、三人は神器があり悪魔化したグランには有効である。
それを加味してもやはりまだ足手まといと言えるだろう。
「ですが……」
わかっているとはいえ、二人の考えも理解できなくはない。
だが、言い出した本人たちの消耗が気掛かり……先程の会話から勝利したサクラより、敗北したモネとネロの方が、悪魔化していたこともあって消耗が激しいはずだ。
しかし、話を遮るようにメニシアの短剣が光り輝きだす。
「この光は……それに――」
短剣から双子に視線を移す。
同様に鎖も光り輝く。そして――。
「なに……これ」
「光ってる。僕たちも」
モネとネロの両者が短剣と鎖同様に光を放つ。
やがて二人と鎖の光は消失する。
「……うん」
「行こう、シアちゃん」
二人の目の奥の光は先程言った時とは違う。決心や覚悟だけではない。自信に見ているその瞳。
同時に再び、それも先程よりもより強く光り輝く。
二人は互いに間に片手をかざし、指を絡めるように繋ぎ合う。
そして、その身体は光へと成り、再び一つに――。




