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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
3周目 第3話 雷魔潜む魔術都市
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第3話 雷魔潜む魔術都市㉖

 パワーアップしたグランの攻撃は非常に厄介だ。

 範囲の広かった攻撃はさらに範囲を広め、一撃の威力も大きく高まった。

 正直まともに受けたら一撃死をするのではないかというくらいだ。

 そうならないのも、ビリンの大楯エイジスの能力によるものだろう。

 冷静さを欠いているのか、距離を取りながらでも攻撃可能な雷による攻撃以上に物理的な攻撃多用するようになり、容易に楯に触れてくれている。

 結果、攻撃力が削がれ、その分エイジスの防御力となっている。

 加えて、雷による攻撃も、エイジスで防ぐことでその力を吸収し防御力の糧として活かしている。

 ビリンが引きつけつつ守り手としての役割も果たしているので、比較的安心して詠唱を行え、強力な魔術を放てている。

 やはりパワーアップが原因なのか、明らかに冷静さを欠いているので、先程だったら避けられていたであろう攻撃ももろに受けている。

 だが、そう簡単にはやられてくれないからやっかいだ。

 それが長く続くので、二人は決め手を欠いている状況だ。


「めんどくせえなあ!!! とっとと死にやがれ!」


 物理ではないので攻撃力が下がっていない雷攻撃を放つ。


「――咲け! エイジスの花よ!」


 大楯を前に構え、楯の中心から開花するように開き、雷を吸収、再度閉じて元の姿に戻る。


「なに!?」


 流石のグランも驚きを隠せない――が、真に発揮されるのはここから。

 ビリンはまだ構えを解いていない。


「これで終わりだと思うなよ――放て! エイジスの花よ!」


 再び、中心から開花するように開くと、今度は完全に開き終えたのと同時に、先程吸収した雷の攻撃を先程以上の威力(・・・・・・・)をもって放たれた。

 威力と同様速度も上がっており、目で追うことも出来ず、気づいた時にはすでに直撃していた。


「――ッ……て、めえ……殺す、殺して、ああああああああ!」


 綺麗に風穴が開いているのにもかかわらず、勢いが止まらず急接近する。


「本当に化け物だな、正真正銘――だが」

「ええ。――チェック」


 グランが進む道中の一部分が一瞬光り、それに気付くことなくグランはまんまと嵌った。


「あああああぁぁぁぁぁぁぁ……」


 子どもじみているとは思ったが、今の冷静さを欠いたグランならかかると考えていたが、まさかここまで綺麗にかかるとは思わなかった。


「……どんだけ深くしたんだ?」

「まあ、それなりには――ですが、これで終わるはずがないです」

「それもそうだ。落とし穴一つで終わるならさっきの一撃でくたばってるはずだしな」


 気を緩めることなく、得物を構え待つ二人。

 来たところを狙うべく予め魔術の準備を整える。

 一分も経たぬうちにグランは飛翔して穴から脱出した。

 穴の真上で止まり、二人を見つめる。

 エルドラルはいつでも魔術を放てる状態。

 それはビリンも同じだ。


「――フゥ……」


 一息つき、その瞬間グランの身体から黒いオーラのようなもの現れる。

 グランを中心に全方位にそれは広がっていく。


「なんだ!?」

「――攻撃性を感じません、いったい……」


 二人の身体を通過したそのオーラには、エルドラルが言ったように何かしらの攻撃と言う訳ではなかった――が、なにかあるはずだ。


「――□□□□□□」


 グランの口からは、この世の言語とは到底思えない謎の詠唱が吐き出される。

 詠唱と共にグランの身体が先程のオーラと同じ色の光に包まれ、詠唱を終えるとその光は花火のように打ちあがった。

 ある程度の高さまで到達したのと同時に年を覆う程の大きさに広がる。

 刹那、地面から粒子状の光が昇天するように現れた。


「――パンデモニウム計画、最終段階……始動ぉ~」


 狂気的な笑みから放たれる計画の名前。


「――まさか、この光は……!?」

「エルドラルッ、あれ――」


 ビリンが言う方を見る。

 そこには宙に浮く学生の姿が数々とあり、その人たちは地面から昇天している粒子状の光に包まれ、同時苦しみだす。


「これは――悪魔化か」

「キャハハ、ご明察――」


 ここからは先に悪魔化した男子学生と同様の過程を辿り、一人一人が悪魔へと化していく……はずなのだが――。


「……あぁ?」


 グランの漏れ出た声には信じられないという心情が乗っていた。

 それもそのはず。

 確かに宙に浮いていた多くの人が悪魔化していった……しかし、それはモネとネロのような完全体ではなく、男子学生のように半身だけ、もしくはビリンたちのように蔓状の魔力が茨のように全身に絡みついているという状態だった。


「何でだ! どいつもこいつも! ざけんなっ!!!!!!」

「荒れてるな……だが」


 グランの発言から半身のみの悪魔化はどうやら失敗扱いと見て良いだろう。

 だが、そのことに対してグランは納得がいっていないようだ。

 十四年に及ぶ研究、実験の結果から失敗する可能性は……無い。

 グランが出したパンデモニウム計画の成功に対する結論だ。

 なのに失敗した……。


「……そうか、そうでした」


 エルドラルがボソッと呟いた。


「そうって、何がだ」

「聖剣です」

「へ……?」

「サクラさんが持つ聖剣は神器と呼ばれる七つの武器の内の一つなんです」

「神器?」


 聖剣には「魔を斬る」といった魔を冠するものに対して高い効果を発揮する能力が備わっている。

 そのような能力を有する武器を「神器」と呼ばれており、はるか遠く昔からその存在は確認されている。

 神器は全て七つ――一つは聖剣。

 そして――。


「ビリンさんの大楯エイジスにメニシアさんの短剣――真名()封魔ノ命(ふうまのみこと)、その二つは聖剣同様に神器に属する武器です」

「……だとしたら納得だな」


 今までの戦闘で見たエイジスの能力。

 それに初めてこの大楯と出会った際に遭遇した未知の体験(・・・・・)

 メニシアから聞いた話と照らし合わせると神器と呼ばれても不思議ではない。


「図書館で散々読み得た知識に加えて、実際にこの目で見たこともあるのにすっかり忘れていました」

「武器を見せたタイミングがそれどころじゃなかったからな。でも神器と悪魔化の阻害が何か関係があるのか」

「神器にはそれぞれ魔に対する固有の能力があると先程話しました。それとは別に共通する能力があります。それが魔の力の弱体化です」


 本当だとしたら、ビリンたちが悪魔化へ至らず、茨のように蔓状の魔力が絡みついていたり、男子学生のように半身のみの悪魔化というのは神器に共通する能力によりもたらされたものなのだろう。


「神器の数は三――モネさんとネロさんの鎖も能力を見るに神器と見て良いでしょう。つまり四つの神器の数だけ能力が増幅された――」

「――そういうことか」


 地に足を付けたグランがそのまま二人に近づいて来る。

 二人は得物を構え、すぐに動けるよう緊張を張り巡らせる。


「神器――その存在はわかっていた。聖剣の存在もだ……だがそんな効果があるなんて想定外……いや、想定しておかなければならなかった。小娘を見た瞬間(・・・・・・・)に対策を行えたはずだ――それ以上にこの場に聖剣以外の神器が三つ――それこそが一番の想定外すぎることだ」

「名が表す通りの代物ですからね。私も最後に見たのは二十年以上前……と言ってもすべてを見た訳ではありませんが、この場にそのうちの四つが存在していること自体驚きを隠せません」

「ああ……ああ、ああ、ああ、ああ……想定外が過ぎるんだよ! 神器が四つもあるって聞いてねえんだよ!!!!!!」


 暴走するかの如く、全身から雷撃が二人に襲い掛かる。

 別段速いと言う訳でもないので容易に防げたり、避けることは可能だ――。


「――ッ、なんだこれ、重すぎんだろ」


 速さを代償にその一撃は重くなっていた。

 防いだ際の衝撃が物語っている。

 エルドラルは回避行動に出たが、雷撃が落ちた箇所には地面が抉れ、あちこち凸凹状態と化した。


「進行速度が落ちたってだけで、進行自体が止まった訳じゃない! お前らにだって悪魔因子があることを忘れるな、時期に前みたいに苦しむ時間がやってくるんだからなキャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ――」

「――気持ち悪い」


 ふと、右手の感覚に違和感が走る。

 視線を向けると、右腕の付け根部分である肩から、綺麗に斬り落とされていた。


「ぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ」


 まともな声にもならない絶叫が辺りに響き渡る。

 いつの間にか背後にいたサクラが、刀でグランの右腕を斬り落とす。

 聖剣だと重さに加えて動きが大きいので、刀に切り替えての一閃――。


「てめえ、ざけんな!!!!!!」


 即座に止血をし、腕を再生させ(・・・・・・)、サクラを襲う。

 再び聖剣に切り替えて一撃を受け止める。


「ただ僕と同じ短気なのか、焦っているのか、どっちなんだろね」


 攻撃を押し返し、反撃に出る。


「あいつらはどうした小娘!」

「本性なんだね、それが――別にいう義理は無いけど、あなたが思い描いていた理想図通りでは全くないと思うよ」


 その言葉でグランの攻撃はさらに加速する。

 ビリンたちを攻撃した際よりも威力はさらに増し、動きの速度も上がっている。

 だが、負けじとサクラも応戦し、一進一退の攻防が続く。

 それを見る二人――。


「ここにいるということは――」

「二人は無事ってことで良いんだろうな。私はサクラを援護する」

「ビリンさんは守り、私は攻撃による援護ですね」

「ああ――」




「あの双子だけじゃねえ、寝てる奴らはどうしたんだ!」

「寝てる奴ら――ああ、あの子みたいに中途半端に悪魔化になったことたちのことかな」

「――ッ」


 この場における実験状況からサクラたちがいたエリア周辺、さらに学校敷地内全域が同様と見て良いだろう。だが――。


「だとしたら小娘がここにいやがるんだよ! 一人でも苦戦してたやつがよ」


 実際に半身のみにとどまったとはいえ、悪魔化した男子学生一人に苦戦しているところをその目で確かめていたグラン。

 それを踏まえたうえで、すぐにこちらに駆けつけることができるのだろうか。


「ああ……斬った(・・・)……それだけのことだよ」


 理解が追いつかない。

 たった一言――「斬った」……その意味を理解した上で言うなら殺したということになる。

 予めサクラについて簡単に調べた際、狂気的と片付けられる程度には殺すということに対して抵抗はなさそうに見えたのは事実。

 それでも、グランが「パンデモニウム計画」の最終段階を始動させてからそこまで時間が経過していない。

 そのようなことが可能なのか――いや、不可能と言っていい。

 一人一人の強さは最低限先の男子学生の時と同等以上に調整している。

 だからこそあり得ない……はずなのに――。


「……どうしたの」

「――ッ」


 明らかに強くなっている。

 グラン自身も悪魔化したことにより格段にパワーアップした。

 それこそ魔王に近づくレベルに――なのにそれを上回るレベルで強くなるサクラ。

 戦闘中にもかかわらず、その剣は鋭さに重さが上がっている。

 この瞬間においてもその成長は止まることを知らない。


「一つ教えてあげるよ」


 ふと呟くように話す。


「興味が無いんだよ!」


 話を遮り、暴力で語ろうとするグラン。研究者としては本当に異端な存在だ。

 やはり本質は研究者ではないのだろう――。


「いいよ、勝手に話すから――僕は強くなってない(・・・・・・・)

「――!?」


 動きが止まった。

 暴走状態に陥っていたグランの動きを止めるにはこの上なく十分すぎる言葉だった。


「強くなってないって、どういうことだ」

「そのままの意味だけど」

「じゃあ俺が弱くなったって言いたいのか!」


 再度攻撃に動き出す。

 それを聖剣で受け止め流す。


「あなたが弱くなったんじゃない……僕が本気を出しただけだ(・・・・・・・・・)

「なっ――」


 生まれたほんの一瞬の隙を見逃すはずがなく、サクラは一撃を入れる。

 さらにグランの背後からもう一撃が加わる。


「あぁ!?」


 振り返るとエルドラルが魔術を放っており、次々と襲い掛かるが、今度は雷撃で相殺する。


「背を見せてる場合?」


 サクラが背にもう一撃を与える。


「クソが――ッ」


 絶叫と同時に全身から雷の魔力が放出される。

 格段と威力を上げた雷撃は速度も増した。

 この場において、時間と共に強化されているのはグランの方だ。

 今頃だと全滅させていても良い頃合いだった。

 それをさせなかったのが神器。

 そしてサクラだ。

 話からして今まで本気を出していなかった――つまり本来の実力を隠していたことになる。

 加えて計画の遅行――グランにとっては屈辱そのもの――。

 感覚は押しているはずなのに、やられているのはグラン、それも一方的に近く。


「ハァ……ハァ……」


 ボロボロの状態のグランに比べて、服装が汚れている以外はほぼ無傷。


「ハァ……――斬ったとはどういうことだ」

「――?」


 サクラの真の実力もそうだが、「斬った」という言葉にも疑問があった。

 斬ったところで止まる代物でもない。

 身体が死んだとしても、その身体が消失しない限りは動き続けるように悪魔因子と魔力を調節した。

 仮に斬られて身体が真っ二つになったところで活動を止めることもない――。


「あ~……そっか……」


 聖剣について(・・・・・・)、今のグランは知るはずもない。

 そもそも知る者はこの場にいるのだろうか……。


「聖剣の能力――邪悪なものを斬る。斬った対象次第では邪悪なるものを聖なる光へと浄化し吸収する」

「なんだと……」


 神器についてはある程度の知識は持ち合わせている。

 このようなケースが想定されていたからだ。

 しかし、聖剣の真なる能力までは把握していなかった。

 いや、把握することなど出来るはずもない。

 それだけ聖剣を含めた神器に関する情報が足りないのだ。


(聖剣の真の力――楯や短剣、鎖もその可能性を頭に入れておいたほうが良いな……でも)


 グランが抱える謎が一つ解けた。

 確かにサクラは強い。

 彼女の言葉が真なら、今までの戦闘は抑えていたのだろう。

 同時に聖剣の真なる能力で、グランの悪魔因子が削がれていたのなら――それなら後れを取り始めたのも納得がいく。

 それでも厄介なことには変わりない。


「――ッ、めんどくせえな! だったらそれで斬って悪魔因子を浄化したということか!」

「正解――浄化してこの聖剣に吸収された光はどうなると思う?」

「知るか! ――サンダーバーストォォォ!」


 後方に跳躍、両手を前に突き出し、手の中に雷の魔力を集約し光線のごとく放つ。

 動じることなく聖剣を中段に構えたままのサクラだが、ゆっくりと聖剣を上に掲げ、聖剣は光を纏う。




「――あいつ」

「信じましょう」

「でもよ――」


 エルドラルは落ち着いている――それは勝利を確信しているような……そんな目だ。


「それに、あの光からは尋常ではない魔力を感じます」

「さっきサクラが言ってた吸収したっていう光かなんかか――」

「約束されたという大いなる勝利の剣――その一閃は魔王や神すらも飲む。そう言い伝えられている最強の剣――真の聖剣ともいえるその一撃の名は――」




「放つは大いなる勝利の一閃――グランドカリバー!」


 地面に突き刺さる勢いで振り下ろした聖剣から放たれる強大な光の一閃。

 衝撃は地面だけではなく周りの環境すらも巻き込む。

 強大な一閃は、グランの放った一撃と衝突――することなく容易に飲み込みグランを襲う。


「や、やめ――」


 放った一撃同様にその身体は光に包まれ、容赦なく吹き飛ばされる。


 

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