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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
3周目 第3話 雷魔潜む魔術都市
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第3話 雷魔潜む魔術都市⑳

「魔力って――まさか!?」


 メニシアの脳裏に過る一つの可能性。

 だが、それは否定される。


「確かに魔力は感じますが、魔術道具で作ったのなら微々たる魔力が稀にあったりしますので、このクッキーもその類かと」

「うん、それに本当に微々たる量だからあの魔力と同じかどうかは流石にわからないけど」

「そうですか」

「魔力の話が出たので、その流れで先程の件について話を進めます。サクラさんも気付いているかもしれないのですが――」

「……共通の魔力(・・・・・)ってこと?」

「ええ」

「?」

「――そっか、メニシアは知らないよね。エルドラルは魔力を感知できるんだよ」

「といってもサクラさんほどではありませんが」

「つまりエルドラルさんって――」

「いえ、私は魔法使いではありません。突然変異のごとく私だけ魔法を使用することが出来ない――まあ、それで困ったことはありませんが」

「なるほど――それで、共通点というのは」

「零区で戦った魔獣の魔力と悪魔化した男子学生が纏っていた雷と僕たちを蝕んだ魔力の蔓が全く同じ魔力なんだよ」


 正確には、魔獣の魔力ではなく、これまた男子学生同様に魔獣が纏っていた雷から感じた魔力のことを指す。

 つまり零区の件から先の件までの一連の出来事は同一の可能性が高まった。


「だけど問題なのは、それくらいしか情報しかないってこと」

「……手詰まりな状態ですか」

「これらの魔力の出どころがわかれば追跡のしようがあるのですが、全くと言っていいほどありませんからね――」

「じゃあさ、零区絡みでさ、この子たちについての話を始めようよ。本来の目的だしさ」


 そもそも、今回エルドラルの元に集まったのは、零区で出会い、保護したモネとネロについて話し合うためだ。

 直前に大事件に巻き込まれたので、それどころではなくなってしまった――。

 話の中心である二人はというと、紅茶と共に用意されたお菓子を食べながら仲良く会話している。可愛いものだ。


「二人とも、ちょっといい?」

「なに? サク~」

「(モグモグ)」

「二人とも、零区ではずっと二人で過ごしてきたの?」

「そうだよ……あ」

「どうしましたか?」


 何か思い出したかのような反応をするモネ。


「いつもじゃなかった」

「(ゴクッ)――たまにだけど男の人が来てた」

「男の人――?」


 興味深い単語が出てきたところで、話を遮るようにして――。


 コンコンコン


 扉をノックする音が聞こえた。


「……大丈夫でしょうか」

「別に良いよ、大事な要件かもしれないし」

「ありがとうございます――入っても大丈夫ですよ」

「し、しつれいしま~す」


 扉が開かれ顔をのぞかせるのは、先程保健室にてクッキーに関する話を提供した男子学生だった。


「おや、どうされましたか?」

「あの、さっきのクッキーの件で言いそびれたことがあるんですけど……」


 まさかのクッキーの件、再び――。


「全く関係のないことだとは思うんですが、これも一応伝えておこうかなって――、そのクッキーってグラン先生がグラン先生のお客さんから貰ったみたいで」

「お客――ですか?」

「はい、よく来てはいつもたくさん貰っているって言っていたので――一応伝えておこうかなって。本当にごめんなさい、絶対に関係ないってことはわかるんですが――」

「大丈夫ですよ。大したことないかもしれませんが、手掛かりが無いこの状況においては、貴重な情報となり得ます。ありがとうございますね」

「い、いえ、こちらこそありがとうございます! 一応これだけなので大切な時間を使わせてしまって申し訳ございません、それでは失礼します」

「はい、彼らにもよろしく伝えてください」


 男子学生は会釈をしてその場を離れた――。


「……それにしても妙ですね」

「何がですか?」

「客人が来たということは、その記録が残っているのですが――」

「残ってないの?」

「いえ、一階の受付にある来客記録を見ていないので何とも言えないのですが、グラン先生に来客というのが結びつかなくてですね」

「というと?」

「彼がこの学校の教師として来任して以降、彼に来客が来たという話を聞いたことないもので」

「それって――」


 先の男子学生の話の通りなら、グラン教師の発言に偽りがあることになる。

 そしてこの部屋に来る前にすれ違った際の話も――。

 すると、一つの疑問が生じる。


「なぜそのような嘘をつく必要があったのか、ですよね」

「話を聞いた感じだと、別に客人を呼ぶことは禁止していないんだよね」

「教師と来客それぞれ事前に申請していただくことが条件にはなりますがね――ですが、彼にはそういったことはなかった。過去の来客者リストを見てもいなかったはずです」

「じゃあ、確認しに行く?」

「確認も手ですが、だから何だ?……という話になりますがね」


 現在欲しい情報は一連の謎の魔力の正体に関することであって、一教師の疑惑を確かめることではないし、優先順位も下がる。


「後ほど私が受付にて確認するとして――」

「ん? ……ああ」


 エルドラルが向ける視線の先に眼をやると、瞼が重そうな表情をしている双子――それもそうだ。昼前とはいえ、その間は疲労が生まれない訳ないほどの激しい戦闘を行っていた。

 双子も然り――双子に至っては、武具として覚醒した鎖を初めて使用したのだ。その疲労は、サクラたちに勝るほど。

 事実、メニシアも同様で、初めての戦闘後は疲労によりエリアスのサクラが宿泊していた宿に着いた瞬間に気を失ったくらい。


「モネ、ネロ、寝ていいよ」

「うん……」「――すぅ……」


 すでにネロは意識が落ちていた。

 直後にモネも眠りについた。


「ここで寝かせてあげてください――いま大きめのタオルを持ってきますね」

「ありがとうございます」

「でもわかる、さすがに僕も眠いかも」


 大きな欠伸をして答える。

 サクラも疲労がないはずがない。その欠伸が答えとなっている――。

 タオルを持って来たエルドラルは、双子をソファに寝かせ、持って来たタオルをそっとかける。


「色々ありましたからね――二人もこの調子ですし、サクラさんも休憩を取った方がいいです。どうでしょう、続きは本日の夕方にするというのは――」

「まあ、症状的にもそのくらいにはビリンも回復している頃だろうし僕は良いよ」

「私も大丈夫です」

「では、その時間に――確認したいことがあるので私は席を外しますが、サクラさんもメニシアさんもこの部屋で自由に過ごしてもらって大丈夫です」

「いいんですか?」

「ええ、無論部屋を出て学校施設内を探索するというのも大丈夫です。立ち入り禁止の部屋にその旨の張り紙が貼られているので、その張り紙が貼られた部屋や施設以外に入らなければ問題ないです」

「気になったことがあれば探索するかもね――ふぁ~、僕もちょっと仮眠を取るよ。メニシアはどうする? 一応僕がいるからこの部屋の心配は無いけど」

「でしたらビリンさんの様子を確認しに行きます。時間はそこまでかからないと思うので終わり次第すぐに戻ってきますね」

「うん」

「決まりましたね、私はこれで」


 各自の行動が決まり、エルドラルとメニシアは部屋を出る。

 残ったサクラは、聖剣と魔法杖、刀をテーブルの上に置き、双子同様にソファに横になる。

 そう時間はかからずにサクラも眠りについた――。

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