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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
3周目 第3話 雷魔潜む魔術都市
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第3話 雷魔潜む魔術都市⑰

「ハァハァハァ……」


 膝をつき、ただ一点を見つめるメニシアの身体はあざだらけで服装もボロボロ。

 視線の先にいる半身悪魔と化した男子学生の全身を纏う電気はさらに強まり、それもう雷を纏っているのではないかと思ってしまう程だ。


(さすがに速すぎます――サクラさんでさえ避けきれないのだから当然ですか)


 サクラほどの俊敏性もなければビリンほどの耐久力もある訳ではない。

 地力は、稽古をつけてもらっているとはいえ今のこの状況だと無いに等しい。

 半ば一方的にやられているが、あれが悪魔であるのなら短剣が有効打になるはずなのだが、そうなると男子学生がどうなるかがわからない――。

 それに、この状況を打破しないと、ビリンの命が危ない(・・・・・・・・・)

 食堂のある校舎に目を向けると、壁が抉れるようにしてビリンがもたれかかる。

 直前に、強烈な一撃がビリンを襲い、楯もろとも殴り飛ばす。

 その衝撃は凄まじく、校舎が全壊してもおかしくなかったのだが、大楯エイジスがある程度の衝撃を吸収したのだろう。

 骨は何本か折れているかもしれないが、ビリンは気を失っているのだけ済んだ――と思った矢先にビリンの身体を男子学生が纏う雷が蔓のように絡みつく。

 いや、絡みつくというよりは、ビリンを苗床にするかのように寄生している。

 気を失っているが、その表情は徐々に血の気が引き、苦しみも見え隠れし始めている。

 ビリンにまとわりつく雷の蔓は命を蝕むものなのかもしれない。

 そんな不安を抱きつつ、今に至る訳だが……。


(一体どのタイミングで蔓がビリンさんを襲ったのか――まさか彼の一撃……? だとしたら私やサクラさんも――)


 他に男子学生の攻撃を受けたのはメニシアとサクラ。

 だとしたら、ビリンと同じことが二人を襲う可能性が極めて高い。

 それがいつなのかわからないが、サクラが戻るまではメニシアしかこの場で戦える者はいない。


「これはいったい――何の騒ぎですか!?」


 本校舎のほうから教師らしき人物ら数名が出てきて、現状に驚きを見せる。

 彼らの声に反応するように男子学生は後ろを振り返る。


「な、なんだ――!?」

「ば、化け物ッ」

「って、あなたはもしかして――」


 一人、彼の正体に気付いた教師がさらに言葉をつづけようとした刹那、教師らの目の前にすでに彼は移動していた。

 そして、教師らに容赦のない一撃が降りかかろうとしていた。


「やめろぉぉぉッ!」


 声を発したのと同時に、男子学生の振りかざしている腕に目掛けて短剣を強く投げる。

 その思いに呼応したのか、ありえない速度――それはまるで光速と言っても差し支えないくらいに一瞬で目標に突き刺さる。

 短剣が刺さった箇所には血が流れるのと同時に、紋章が浮かび上がる――。


「滅ッ!」


 瞬間、突き刺さる短剣は光の粒子となりそこから消え、メニシアの元に戻って来た。

 そして、男子学生は苦しみ始める。


「あなたがたは、学生さんを避難させてください!」

「あなたは……メニシアさん!?」


 メニシアの名前を口に出す者が一人いたが、それは昨日ビリンともに授業を受けた際のその授業の担当教師であった。


「いいから早く!」

「わ、わかりました――」


 メニシアに言われた通り、教師らは各々学生をその場から遠ざけ、避難するよう呼びかけ誘導を始める。

 慣れているのかどうかは知らないが、その行動はとてもスムーズだ。

 そして、肝心の男子学生はというと――。


「……微々たるものですか」


 ダメージが無い訳ではないが、それに近いほどに効いていないように見える。

 悪魔を含めた魔を冠するものんは絶大な威力を発揮するメニシアの短剣なのだが、ここにきてほぼ無傷となると対策のしようがない。

 先程の苦しみから、無意味ということはなさそうなのだが――。


「本当にどうしたらいいのか――」


 その姿は突如メニシアの前から姿を消した。


「――!?」


 既に遅かった。

 消えたことに気付いた時にはすでにメニシアの背後に移動しており、確実に仕留める一撃を放とうとしている。

 男子学生が変異した悪魔は考えた――三人の中で特に厄介なのは、この短剣の使用者であるメニシアであることを。

 これは、今までサクラたちが戦ったどの悪魔も考えた、いわば共通認識――。

 メニシアが振り返った時には、すでに拳が目の前にあった。

 何も考えることも出来ないこの刹那――。


「――天上・闘風ノ打撃――」


 さらに男子学生の背後を取ったサクラが、暴風を纏った刀身を空に打ち上げるようにして叩き、吹き飛ばす。

 その一撃により、彼の身体は重さという物理を無視するように軽々と浮かび、勢いそのままに第二校舎とは真向いの別校舎の壁に衝突する。


「大丈夫……じゃないよね」

「サクラさん……二人とクオンは――!?」

「少し離れたところで待機してもらってる。ビリンの楯程ではないけど魔法壁を張ったからある程度の心配はないはず」


 辺りを見渡し、目当ての対象を視界にとらえた。

 もたれた状態で気を失っているビリンだ。


「想像以上の事態だけど、それ以上に植物みたいなものが絡まってるけど、なにあれ」

「わかりません……気づいたらもうあの状態でして」

「少しずつ伸びている?……ビリンの命を生命力に変換してるのかな」

「それって――」

「うん、まずい状況だね――って、メニシア!?」


 突如、サクラに持たれるようにして倒れ込むメニシア。

 触れた感じの体温は高い。

 熱がこもっているのか……ただ、状況はさらに悪化の一途を辿ってってしまっているようだ。

 メニシアの身体に全体に、ビリンと同じように蔓状の何かが寄生するかのように絡みついている。

 植物ではなく、雷――雷属性の魔力が蔓状となって二人を蝕んでいる。

 やはり原因はあいつなのか――そのようなことを考えている間に奴は再びこの場所に戻って来た。

 メニシアを道の端に連れて行き、横にする。

 再度刀を構え直し、切っ先を男子学生に向ける……。





「六道神流・二ノ太刀――天上・闘風ノ打撃……」


 刀身は再び暴風を纏う。

 先程と違うのは、刀身に纏う暴風が鍔をも飲み込み、サクラの全身に行き渡り、刀身同様にそれを身に纏う。


「……鎧ノ太刀(よろいのたち)


 名が体を表すように、それはまさしく暴風の鎧。

 触れるものすべてを容赦のない暴風の攻撃が襲う――言うなれば自動防御……。

 ただし、これを易々と使える代物ではない。

 触れるものすべてに傷を負わせるということは、至近距離で、しかもそれを身に纏っている本人に対しても同じこと。

 相手程ではないにしろ、自身も暴風による攻撃を受け続けている状態ということもあり、それを長く使用することが出来ない。

 常時治癒状態という加護が付加されているのなら永続的に使用できるが、そういう訳でもないので、持って四分弱といったところ――それまでに決着をつける!


「――ッ!」


 大きく踏み込み、瞬時に男子学生との間合いを詰めるサクラ。

 流れるように刀を切り上げる。

 暴風を纏っているので、打撃の一撃と化しているが十分だ。

 彼の身体が再び宙に舞うが、それを見越していたのか舞い上がったのと同時にサクラに手のひらを向ける。

 そして、サクラに最初の一撃を与えた斬撃が、無数となってサクラに襲い掛かる。


「――無駄だよ」


 その言葉通り、無数の斬撃は、暴風の鎧によって相殺される形で消滅していく。

 焦りを見せた後、悪魔化した半身が雷を帯び、その雷が右腕に集約される。

 足場のないはずの空中で、まるであるかのようにその場に一瞬止まり、サクラのいる方へと突進する。

 それに迎え撃つようにして刀を構え――。


「エンチャント――攻撃、天上・闘風ノ打撃!」


 雷を纏った拳と、暴風を纏った刀身が激しくぶつかり、それ中心にすさまじい衝撃が辺り一帯を飲み込んで行った……。




「「……」」


 離れた位置からとはいえ、二人の凄まじい攻防を見て、無意識に口が開き、その開いた口がなかなかに塞がらないモネとネロの二人。

 その光景に慣れているのか、ネロに抱きかかえられているクオンは特に何か反応することもなく、ただこの戦闘に双子同様見入っている。

 戦闘による衝撃等の被害はこちらにまで及んでいないが、少しでも近づけば、少なからず巻き込まれてしまう。

 故に、今いる場所にいるようにとサクラから言われた。

 それもあって二人の戦闘に見入ってしまっているのだが、そのせいでこちらに近づく気配すら気づかなかった――。


「おーい、君たち!」

「「――ッ!?」」


 いきなりの言葉に肩をびくつかせる二人。

 それはクオンも同じで、抱きかかえているネロから離れ地面に着地、その瞳や威嚇は敵対者に向けるものであったのだが――すぐにそれらは治まった。


「……えっと、たしか……」

「エルドラル……だっけ?」

「モネさんにネロさん。それにそちらの猫はクオンさんでしたか」


 その人はエルドラルであった。

 他の教師たちと違って遅れて校舎を出たのは、サクラたちが来る前に校舎の地下にある書庫で話し合いに向けた準備をしていたからだ。

 それで外の騒ぎについて気づかなかったのだが、一人の教師がその騒ぎについて報告したことで事態に気付き、急いで外に出た。

 外に出ると、半身が異形であるその人とメニシアとサクラが戦っていたので加勢しようとしたのだが、さらに奥に二人の子ども――モネとネロがいることに気付き、戦闘に巻き込まれないよう回り道をして二人の元に駆け付けたの。


「それにしても――メニシアさんに……あれはビリンさんですか!? まさか二人が……それに、あれは……植物? いや、魔力状の何かでしょうか」


 二人の置かれている状態を見て即時に判断できるのは、さすが魔術学校の教師というところだ。

 だが、判断は出来てもその正体について確定したと言う訳ではない。

 長年、魔術学校の教師をやっていても、実のところあれに関しての情報は一切知らなかった。

 それは、魔術の域を超えて魔法の域に属する何かなのかもしれない。


「考えたところでしょうがないですかね……ッ!? 皆さん今すぐ私の後ろに! 魔術障壁を展開します」

 そう言い、二人とクオンの前に立つと、瞬時に半球型の障壁が覆うようにして展開される。

 何のことかわからなかったが、すぐに理解した。

 猛烈な衝撃がエルドラルたちに襲い掛かったのだ。


「――ッ!?」

「なに、これ……」

「――サクラさんと敵方の攻撃がぶつかり合い、その衝撃がこちらにまで及んでいるのでしょう――すさまじいですね」


 エルドラルの魔術障壁がほんの少しでも遅れて展開されていたら、それは間に合わず、ここにいた者は全員衝撃で吹き飛ばされていた――それほどまでに強烈だ。


「――えっ」


 衝撃のぶつかり合いの末、力負けをしたのは――サクラの方だった……。

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