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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
3周目 第3話 雷魔潜む魔術都市
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第3話 雷魔潜む魔術都市⑮

「キャー!!!」


 謎の光に包まれ、その後出てきたのは半身悪魔と化した魔術学校の男子学生。

 その姿を見た周りの学生たちは恐怖と混乱に包まれる。

 悪魔と化した男子学生と共に行動していた学生三人は、あまりにも急な出来事でまだ理解できていないようだ。


「お前たち、この場から離れろ!」


 ビリン自身はじめてことだが、衛兵時代の経験から冷静を保てている。

 学生たちに呼びかけながら、大楯エイジスと得物である槍を召喚する。


「で、ですが……」


 何とか振り絞って声を出した女子学生。その声はとても震えており、今にも泣きそうな表情だ。


「大丈夫……とは言い切れないが、お前たちの友だちは責任をもってお前たちの元に届けてやる」

「……」


 女子学生は勢いよく頷き、他の二人と共にその場を離れる。

 サクラも傷を癒した後抜刀、刀を構える。


「メニシアはクオンと一緒に後方待機、何かあった時に備えて」

「わかりました」

「にゃー」

「遠隔シールド展開!」


 大楯エイジスの能力の一つであり、対象者を囲うようにしてシールドを展開する。

 使用者に合わせて展開できるシールドの数、そして耐久性が変わってくるのだが、ビリンの実力なら余裕である。


「エンチャント……防御・俊敏」


 先陣を切ったのはサクラ。

 ただし、今までと違うのは、今回の相手は一応男子学生。

 どのように立ち回ればよいのかわからない。

 いつも通りにやると男子学生を最終的に殺しかねない。

 手加減をしていては先程以上の傷を負ってしまう。


「ハァッ!」


 迷っていてはしょうがない。

 サクラの決断は、峰打ち程度の斬撃を与える。

 だが、その斬撃は悪魔化したほうの腕で容易く防がれた。

 峰打ち程度とは言え、受け止めた腕に傷一つ付いていない。


「……困ったな」


 即座に離れ、再び攻撃モーションに入る。

 すると、彼の身体から電気が流れ始め、それは全身に行き渡る。

 悪魔化した腕をこちらに向けると……。


「――」


 言語でも鳴き声でもない、得体のしれない発声後、全身の電気が悪魔化した腕に集約し雷のごとく勢いよく発射される。


「……っ!」


 遠隔シールドがなかったら防ぐことが出来ず、それなりのダメージを負っていたはずだ。


「大丈夫かサクラ」

「シールドがなかったら危なかった。やっぱりこのシールドは相手の攻撃力を下げることが出来ないんだね」

「さすがにな、エイジス本体のみの能力だからな」

「今さらだけどそのランスはなんか能力とかあるの?」

「ない、この槍は支給されたものだ。使い勝手がいいから今も使い続けているけど、イエユリのジャスティス・アローやお前のエンチャントみたいに付加しない限りはただの槍だ」

「でも、何をしたところであの男子学生の身体を傷付けることになるけどね」


 半身悪魔化しているとはいえ、その持ち主は男子学生。

 すでに死んでいたら話は別だが、それさえわからない状況では今のところ打つ手なしといった状況だ。

 メニシアの短剣を使うのもありだが、あれは魔を滅するもの。魔だけを滅するのか、魔に侵食された者をも滅するのかわからない。


「さすがにあの子で実験するわけにはいかないもんね」

「そうだな……って!?」


 無駄話をしている間に、男子学生は気付けば目の前に現れていた。

 瞬間移動なのか単純に物凄い速度で来たのかはわからないが、さすがに反応するのが遅かった。


「クソッ!」

「……っ!」


 ビリンは大楯で振り下ろされた悪魔化した腕の一撃を防いだ。

 その一撃はハンマーのごとく重い。

 瞬時にサクラにも一撃を与える。

 シールドがあるとはいえ、その重い一撃によりサクラはメニシアたちのいる方へ吹っ飛ばされた。


「サクラさん!」


 その勢いは凄まじいもので、すぐにメニシアの横を通り過ぎた。

 さらに、後を追うようにしてすぐに別の何かがより勢いよく通り過ぎていく。

 それは、サクラを捉え重いアッパーを加える。


「……っ!」


 追加の一撃を防ぐことも避けることも出来ず、サクラはもろに受ける。

 高く打ち上げられたサクラを逃がすまいと、男子学生は跳躍し、ハンマーよりも重い一撃をサクラに与え、建物に叩きつける。

 そしてすぐにメニシアのいる所まで移動し、さらにもう一撃を与える。


「速すぎだろ、こいつ」


 速いだけではなく、一撃一撃の威力が重すぎる。

 片腕だけでこれなのだから両腕だったらと考えると……そしてもう一つ、ビリンは気になることがあった。


「なんでパワーダウンしねぇんだよ」


 大楯エイジス本体の能力は、攻撃を大楯本体で受け止めると、攻撃した対象者の攻撃力を削り、削った攻撃力分をエイジスの耐久力に加えていくというもの。

 実際にサクラも経験したことだが、あの時はアンエンチャントをすることで、エイジスにかかった付加を無効化した。

 しかし、今回に関してはそこが機能していない。

 それが何故なのかはわからないが、これだとカウンターに行動を移すことが出来ない。

 防戦一方とはまさにこのこと……。


「……うっ」


 重すぎる一撃は、ビリンを限界へと落とし込もうとする。


「ビリンさん……」

「シアちゃん、大丈夫?」

「大丈夫……とは言い切れないですね、悔しいです」


 成長しているという自覚はあるものの、いまだにサクラやビリンのいるステージに立てていない自分が歯がゆく、そして悔しいくてたまらない。

 それでも、この状況でモネとネロ、そしてクオンを守れるのはメニシア自身しかいない。

 いや、守れるかどうかもわからない。


「クオン、モネとネロを連れて逃げてください」

「にゃ!」

「シアも逃げようよ」

「(コクコク)」

「私も逃げられるものなら逃げたいです。ですが、逃げたところで状況が変わるかと聞かれたら変わらないと思います。でしたら、この状況を打破してくれる可能性がある人が来るまでの時間稼ぎくらいは出来るかもしれない……それに私は賭けてみたいと思います」


 向けるその笑顔は恐怖が混じっている。

 ただ、モネとネロが何が出来ると言う訳でもない。

 メニシアの選択がこの状況においては正しい選択なのかもしれない。


「私が、短剣を放ったのと同時に逃げてください」

「でも……」

「頼みましたよ、クオン」

「……にゃー」


 どこか渋そうなクオンだが、覚悟を決めたメニシアはすでに短剣を悪魔化した学生に放った。


「にゃー!」

「クー……行こうネロ」

「うん」


 メニシアの言われた通りに、クオンたちは逃げるようにしてその場を後にする。




「……ッ、痛い」


 激しい連続攻撃により、空中へ飛ばされたのちにサクラが今いる建物に叩きつけるように重い一撃をもらった。

 屋根が受け止めることなく、勢いのまま屋根を突き破り、抉るように地面に衝撃が伝わる。

 痛いの一言で済んでいるのは、ビリンの大楯エイジスの遠隔シールドとエンチャントによる自身の耐久値の上昇によるものだ。


「いくら僕自身を速くしても、それを上回れるとな……って、あれ?」


 痛みを堪えながら起き上がった視線の先には、サクラにとって既視感のあるものがそこにはあった。


「女の人の、石像……?」


 それは女性を模った石像。

 以前、全く同じ石像をエリアスの森を抜けた先の公園内にもあった。

 メニシア曰く、エリアスの町内にも石像は存在しており、そのことから世界各地に存在しているのではないかという推測していた。

 各地を旅しているサクラはというと、石像に全く言っていいほど興味が無いので、見かけたことがなかった。


「石像があるってことは、やっぱりあちこちにあるのかな、これ。それにしても綺麗だな、この石像の女の人」


 石像自体はそこら辺の石や、美術館等にある石像と比べると綺麗ではあるが、それ以上に石像として模られている女性の容姿がとても美しく綺麗であった。

 散々興味が無いと連呼していたサクラでさえ、その美しさに惚れ惚れしてしまう。


「……って、いやいや、惚れてる場合じゃないってば。早くビリンのところに戻らないと――」


 一度戦ったことがあるからビリンの防御面に関しては心配していないが、シールド越しとはいえ、あの一撃を受けて妙な違和感を覚えた。

 嫌な予感がする――。

 それを胸に急いで建物をあとにしようとするのだが、意外なものがサクラの足を止めた。


「え……?」


 その正体は石像だった。

 石像の瞳から突如強く輝きだす。

 ここまでの強さではないが、以前見た石像も似たように瞳が輝いた。

 あの時は何も無かったのだが、今回も別段何かがあると言う訳でもない……。

 

 バンッ!


 すると、サクラの向かおうとしていた方向から強い音が聞こえ、石像に気を取られていたサクラは身体をびくつかせる。

 それは、閉ざされていた入り口の扉が勢いよく開かれた音だった。


「お前たちは――」

「サクちゃん!」

「……いた」

「にゃー!」


 いたのは、クオンに連れられてきたモネとネロだった……。

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