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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
3周目 第3話 雷魔潜む魔術都市
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第3話 雷魔潜む魔術都市⑧

 翌日。

 メニシアとビリンは、予定通り公開されている授業に参加する。

 その授業は、数ある中で比較的多くの学生が参加する。

 どうやら必須科目であるということが理由とのこと。

 メニシアは、サクラも参加しないかと誘われたが、そもそも二人と違って魔術を学ぶ理由がそこまで無いので、今日も図書館にこもろうかと考えていた。


「みなさん、少しよろしいでしょうか」


 ギルド職員に呼び止められる。


「本日は予定が空いているでしょうか?」


 ギルドには魔術学校に用があるとは言ってあるが、詳細なことは話していなかった。


「今日は……」


 メニシアが今日の予定について簡潔に話した。


「そうですか……」


 職員は少し困ったような顔をしていた。


「どうしたのですか?」

「実はみなさんに依頼を引き受けていただけないかと思いまして」


 内容は、前日の夕飯時に少し話していた、一部の地域の停電に関することだった。

 その地域の停電は昨夜一度復旧した……が、原因がわからないまま夜が更け、早朝になると再び一部地域で停電となった。

 ただし、範囲が若干広がった。

 今なお復旧しておらず、原因もわからず困り果てた頃、ギルドに白羽の矢が立った。

 停電の原因となる可能性の一つとして魔術によるものが浮上した。

 最初は魔術学校に依頼しようとしたらしいのだが、派遣できるものが現在おらず、結果、魔術学校と同等の技術や専門家が集うギルドに依頼をし、今に至るとのこと……。


「魔術が可能性の一つということは、他にも可能性があるの?」

「あるにはあるのですが、どれもこれと言い切れる根拠というものが足りなくてですね」


 そう言いながら依頼書を目の前に出した。


「停電時と停電中ともに魔力を感知しているらしくて……」


 だったら常に魔力を感じている、高い確率で魔術によるところなのだろう。

 ただ、現在は集中しないと感知できないくらいに微細。

 停電の瞬間に高魔力を感じ、それは昨日の停電にも言えることだ。


「でも、僕らである必要性はないよね」


 町もギルドに依頼を出したのであってサクラたちに直接依頼を出したわけではない。


「確かにいるのですが、あいにく本日は既に依頼を引き受けていまして、コウランさんに先程聞いてみた所、みなさんを依頼を出してみてはと言われたのです」


 コウランの仕業だった……。

 イリナのギルドにおいて一番の魔術の使い手は、本日の魔術学校の授業の特別講師として既に学校に向かったとのこと。

 その他の高ランク魔術師も別の依頼でイリナにはいないらしい。

 ギルドはどこも人手不足と言うが、イリナも例に漏れないようだ。


「いいよ、僕が引き受けるよ」

「意外だな」

「だって二人と違って暇だもん」


 正確に言うと魔法の方が専門なのだが、似ているものだし、魔力を使う時点でサクラにも理解できるところがあるだろうと考えた……まぁ、本当に暇であることが理由というのもあるが。


「ありがとうございます」


 そう言ってモニターに何かを入力する。


「手続きを済ませたのでサクラさんは一区にあるギルド支部に向かってください。そこで詳細をお伝えします」




 ギルドを出た後、メニシアたちと別れてサクラとクオンは一区に向かう。

 一区にあるギルド支部は区のど真ん中に位置しており、わかりやすい場所ではあるが、二区のギルド支部からは相当歩く。

 最初はバスに乗ろうと考えていたが、いざ乗り場に行ったら多くの人がバスを待っており、さすがにやめた。


「そういえば、僕も魔術をちょっとかじろうとしたんだっけ」


 そもそも、イリナについた当初、ついでに魔術のことについて学ぼうと考えていたが、教頭のエルドラルの話を聞いてからどこか満足をしてしまい、魔術を学ぶというやる気が現在失せてしまっている。

 正確には完全には失せていない。ただ、今回のギルドの方がサクラの中での優先順位が高かっただけのことだ。


「まだ来たばっかなのになかなかに濃い時間を過ごしてるな~」

「にゃー」

「クオンと一緒って言うのも相当久しぶりだしね」

「にゃー」


 クオンはサクラの肩に飛び乗りサクラに頬ずりする。

 このペアでの行動というのもメニシアと出会う以前以来、サクラの言うとおり本当に久しぶりのことだった。

 別に数ヶ月、一年以上経ったと言う訳ではないのに長い月日が経過したかのようだ。

 それだけ、メニシアと出会ってからというのは濃密な時間だったのだろう。

 クオンは人の言葉を離すと言う訳ではないが、長い付き合いから人と会話をする並みに意思疎通が可能。

 久しぶりのクオンとだけの会話を楽しみつつ、気づいたら一区にあるギルド支部の近くまで来ていた。




 ギルドの入り口が見えた所で、その目の前に大柄な男がいた。

 誰かを待っているかのようだ。

 サクラがさらに近づくと、男はこちらに気付いたようで、サクラの方に向かって勢いよく近づいて来る。

 瞬間、サクラは警戒を強め、刀に手を伸ばしいつでも抜刀できる構えを取った。


「あなたはもしやサクラ殿か?」

「……そうだけど」

「失礼、私は一区のギルド支部の長を任されている者です」


 ギルド関係者だったようだ。

 一応警戒を緩め、刀に伸ばしていた手も引っ込めた。


「改め、依頼を引き受けていただき、感謝します」

「で、詳細は?」


「こちらに」と男が現場まで案内をする。

 場所的には町の北側に位置する。


「……」


 視界に映る光景がサクラを驚かせる。

 なぜなら魔術都市に相応しくないであろう高くそびえる壁がまるで何かを隠すかのように(・・・・・・・・・・)その場所に存在する。


「何、あれ」

「あぁ、あそこは廃区と言われる所でしてね――」


 男が言うには、何十年も前に廃区と呼ばれる地にて大事故が発生して、そこに人がいるには危険極まりないという理由で封鎖した地区。

 その壁は、イリナを守る外壁と同等の高さで、サクラの現在地からだと一切何も見えない。

 廃区と呼ばれているようだが、確かにこの表現は正しいとは思いつつ、イリナと言う都市と内側から隔離している様にも捉えらる……少なからずサクラはそう感じた。


「それでですね、停電はここら一帯で起きておりまして」


 事前に聞いていた通り、大規模な停電ということではないらしい。

 本当に狭い範囲での停電。

 狭いのなら原因もすぐに特定できるような気もしなくはないのだが……。


「本当に原因がわかってないの?」


 この男からは聞いていないので改めて確認する。


「そうですね。魔力自体は感じるのですが、如何せん微量なものでどこからなのかが判明できないのですよ」


 実際に魔力は感じるものの、男の言う通りそれは微量であり、魔女であるサクラも同様になかなか魔力の発生源が特定できない。

 ほんの少しでも濃く感じることが出来れば楽なのだが……。


「あのさ、あの壁の向こうには入れないの?」


 サクラが指したのは外壁並みにそびえる壁。

 男は意外だったようで少々驚いている。


「許可が降りれば入れないことはないのですが、肝心の権限のある者が学校にいないので」


 ということは校長か理事長、もしくは両名ということになるのだろう。

 確かに二人とも学校にはいないと言うのは教頭のエルドラルに聞いたのだが……。


「エルドラル……教頭はどうなの?」


 決定権や権限を持つトップが不在の時はそのすぐ下の者にもそれらの権限を持つようになる……サクラの持つ社会のイメージ。


「そうですね、可能性はあるかと……それにしても何故廃区に?」

「だって、あそこに停電の原因となるものがあるかもしれないじゃん」

「……あ」


 今気づいたような顔をしているが、イリナのギルド支部の人は抜けているのだろうか。

 それともギルド全体なのか……ともかくサクラは内心どこか呆れている。


「いくら立ち寄らないからって頭に入れとかないのもどうかと思うよ」

「も、申し訳ない」


 ぐうの音も出ないようだ。


「じゃあ行くから」


 呆れからなのか、はやく済ませたいからか廃区へと向かう。


「ちょ、ちょっと待ってください」

「……なに?」


 男性に引き留められるサクラの表情は、少しイラっとしており、口調にもそれが伝わってきた。


「廃区に立ち入ることが出来なくて――」

「だったら扉を切り刻めばいいだけじゃん」


 サクラは、危険と言う理由だけではなく、単純に施錠していて廃区に立ち入ることが出来ないと思っている。


「先程も言いましたが、権限の持つ者から許可を頂かないと立ち入れなくて――」

「そんな悠長なこと言ってたらここの人たちの不満、爆発するんじゃないの」 


 それもそうだろう。何せ、不可解な停電は過去に無く、それだけで人々は不安に駆られるだろう。

 サクラ自身は、誰がどうなろうが知ったことではない。第三者の目線で見た所感を述べただけだ。


「……」


 男性は黙る。

 黙っているよりはどうしたらいいのか、あたふたしているという感じだ。


「……ああもう!」

「サ、サクラ殿!?」


 サクラは刀を抜き、男性に突きつける。


「二つの選択肢、ここで僕に切り刻まれるか、今すぐエルドラルに連絡するか、どっち!」


 苛立ちが頂点に達しているサクラ。

 普段だったら容赦なく殺そうとすることも珍しくない。

 実際に、ギルドの最高であるSSランク冒険者に重傷を負わせるほどには痛めつけた。

 今回のようないきなり殺しにかからず、選択肢を発生させたこと自体成長した?のだろうか。

 本当にメニシアと出会ってからのサクラは、大きく変わりつつあるのだろう。


「……わかりました、エルドラル殿に連絡をします。しばらくお持ちください」


 サクラは刀を鞘に納め、男性はポケットから携帯型の通信機を取り出して、魔術学校に連絡をする。

 すぐにエルドラルに連絡がいき、こちらに来るようだ。

 その通り、そこまで時間がかかることなくエルドラルがやって来た。

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