表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
3周目 第3話 雷魔潜む魔術都市
38/160

第3話 雷魔潜む魔術都市⑥

「僕以外の……魔女」


 エルドラルの言葉に一番驚いているのが、同じ魔女であるサクラだった。


「……まぁ、数年前に亡くなってしまったのですけどね」


 その魔女はもともと体が弱かったようで、魔術学校に在籍していたが授業以外ではあまり表に姿を現すということが少なく、亡くなったのも病気によるものだった。

 身体は弱いが、魔法使いではないエルドラルが見てもその素質というのは天才的だった。

 そしてまだ若かった。


「惜しい人を亡くしました。その体質や素性もあって最低限の繋がりしかないのですが、私を含めたその少ない繋がりを持つ方々が口をそろえて人望の厚い人であったと言います」


 それはエルドラルの表情や口調からも伝わる。


「会ってみたかったですね」

「そうだな、サクラと合わせた場合の反応見てみたしな」

「どういう意味」

「ハハハ、私も同感です。あなた方に合わせてみたいですね……でも彼女は本当に来世では幸せになってもらいたいですね」


 何かを含んだ言い方。

 その表情に薄っすらと陰りが見える。


「……?」

「……あ、すみません、余計な一言でしたね」

「ちなみにその一言について聞いてもいいもんなのか?」


 少し考えた末、「あなた方に隠す意味もないですしね」と彼女に会ったことを簡潔に説明する。

 彼女は結婚していて、双子を身籠っていた。

 しかし、そこから不幸の連続が立て続けに起きた。

 出産直前に夫が不慮の事故により帰らぬ人となり、出産後しばらくして生まれた双子が揃って亡くなった。その原因もいまだにわかっていない。

 立て続けのことで彼女の精神状態というのは、最悪と言っていいほどズタボロだった。

 エルドラルを含めた周りのケアもあって少しずつ、少しずつ元気にはなっていった。

 ただ、完全に立ち直った訳ではないので、その表情には以前とは違い影というのが見え隠れしていた。


「その件から数年後に彼女は安らかに眠りにつきました……だからこそ来世では幸せになってもらいたいです」

「……」


 内容は違うが、サクラも絶望的な経験をしている。

 だからこそ彼女の人生は、サクラにも共感できるところがあった。

 同時に、一つの考えが浮かんだ。


「魔女って”不幸”が宿命なのかな」

「サクラさん?」


 サクラにしろその魔女にしろ、何かしらの不幸を経験している。

 サクラも多くの魔法使い、魔女に出会った訳ではないのでわからないが、自分も彼女も想像を超える経験をしている。


「サクラさんがどのような経験をしたのかは想像もできません……ですが、彼女は最期まで表情が良く笑顔でした。それはまるで幸せな人生だったと思わせるようなものでした」

「え?」

「確かに彼女はどん底を見ました。実際に自死を選択しようとしていましたからね……でもそれは彼らを悲しませるだけだと言って最終的には立ち直れました。最期は彼らの分も十分に生きれたのかもしれないと満足をしていました」


 強い……彼女は体は弱いが精神面は本当に強かったのだろう。

 人望も厚いという意味がわかるかもしれない。


「失礼を重々承知の上ですが、サクラさんもどうか諦めないでください」

「……」

「今のあなたは絶望のどん底にいた彼女思い出すような感じがしました。だからこそ、お仲間を大事にしてください」

「……」


 この言葉は、絶望を経験したサクラには深く刺さった。

 刺さるのだが、その経験が迷いを生む。

 何故なら経験が経験だから……メニシアと出会ってから少しずつ柔らかくなってきているとはいえ、クオン以外誰一人として心を完全に開いていると言う訳ではない。

 いつ裏切るかどうかわからない……その悲しみは二度と味わいたくない。

 次は必ず崩壊するかもしれない。

 その思いが少なからず壁を生みだしている。


「……コホン、申し訳ないです。何も知らない老いぼれが説教などと」

「いいよ、アドバイスとして受け取る」

「ありがとうございます。長くなりましたが、紹介状もありますしご自由に図書館を利用してくださいな……あと、一部ではありますが授業を受けてみてはいかがでしょうか」


 基本的には外部の者利用は図書館といくつかある食堂の一つだけなのだが、ギルドの紹介状を含めて魔術学校が認めれば、特例で一部の授業を受けることが可能だ。

 文字だけでは得られない収穫があるかもしれない。

 特にビリンにとってはありがたい話だ。


「どうするの?」

「いい機会だし受けてみることにするよ」

「私もビリンさんと同席します」


 ビリンとメニシアの当分の目的が決まった。

 サクラはというと……。


「僕は図書館にいるか、クオンと昼寝をするかのどちらかかな」


 受けられる授業というのは、どれも受講人数が多いらしい。

 イリナに来て、人の多さに体調を崩したサクラが、人数の多い授業室に行く理由がない。

 サクラの場合は、二人と違って知識はあるから、補うという意味で本だけで十分なのかもしれない。


「ちなみに、今日皆さまが受けることが可能な授業は終わってしまっているので明日以降該当の教室にお越しください。最後にお困りごとがありましたら図書館隣の職員棟の一階にある教頭室にいますので尋ねてください」


 そう言ってエルドラルはこの場を後にする。

 ビリンとメニシアが受けられる今日の授業は終了してしまったとのことなので、当初の目的通り図書館にそのまま一行は向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ