第3話 雷魔潜む魔術都市④
翌日。
すっかり調子を取り戻したサクラ。昨日のが嘘のようだ。
「元気になって良かったです」
「そうだな」
「じゃあ、今日から行動再開と行こうか」
各々荷物を持って部屋を出る。
施設の案内所と先日対応したギルドの受付の女性に挨拶を済ませた。
女性からは「お体は大丈夫ですか?」と心配されたが、急だとは思えない程の対応をしてくれたことに感謝を述べて建物を出る。
この後は、当初からの目的である魔術学校内にある図書館を目指す。
「そういえばさ、僕が起きた時二人ともいなかったけど」
「稽古ですね」
「稽古?」
「私は別に思ってないが、足手まといだと感じるんだとよ」
「足手まといってメニシアが?」
不思議そうというか、メニシアが足手まといであるということに疑問を感じているというような表情をするサクラ。
「別に、メニシアは足手まといになってないよ。だってアビルの時もイエユリ……というよりは乗っ取ってたやつだけど、それら相手に結構良いアシストをしていたよ」
「……」
実際にどの戦闘時のメニシアの行動は、絶妙なタイミングであり、メニシアがいなかったら窮地に陥っていた可能性もある。
確かに戦闘経験もその実力もまだまだ未熟ではある。
しかし、サクラからもビリンからも見ても、未経験とは思えないくらいのセンスをメニシアからは感じる。
だからこそ、両者ともに悲観する必要が無いと思っていたのだが……。
「でも、わからなくはないかな」
「え?」
「僕も師匠との修行の最初の頃は結構焦っていたというか、早く強くなりたいと思ってたから荒れたんだよ」
「何かわかる気がするな」
「あ?」
睨まれたビリン。その眼はマジだった。
「話を戻すけど、ある時に師匠に殺されるんじゃないかというくらいにボコボコにされて……」
「なあサクラ、お前は強いくなりたいんだろ?」
「だから――」
「だからこそ、今は耐えた方が良いんじゃねーのか?」
「……?」
「耐えに耐えた後、最後にそれを爆発させたときは最高の快感で快楽だぜ! かぁ~っ、酒が飲みてぇなぁ!」
(一瞬でも真面目に聞いた僕が馬鹿だった……)
けれど、何故だか師匠の言葉はサクラの中では歯車が噛み合った、そんな感じがした。
師匠にボコボコにされて以降、サクラの荒々しさというのは影を潜めていった……また師匠にボコボコにされて次こそ死んでしまうのではないかという恐怖が生まれてしまったのも多少ある?
「焦る気持ちはわかるけど、焦ったところで成長も出来ないし、焦ることにより変に成長する可能性もある、それにさ……」
「別にこのまま何もしないなんてことはないぞ」
「どういうことですか?」
「もともとメニシアと旅を始めてから少しは考えていたことだけどそんな余裕も無かったしでね、船に乗る前にビリンと相談してさ」
「落ち着いたら稽古でもつけてやるかって話だ」
なんだかんだで、気にしていた二人。
ということは、昨日メニシアがビリンに相談した段階では、そういう話が進んでいた……?
「まぁ、色々なことがあったし、落ち着けるタイミングがわからなかったしな」
「うん、でもちょうど昨日話に挙がったのなら、イリナにいるタイミングから定期的に稽古を行えばいいよ」
「ということは割と長く滞在する予定なのですか?」
「そのつもり」
サクラもイリナに来たことが無かったので詳しくはわからなかったが、先程ギルドの受付の女性から紹介状をいただき、客人として魔術学校に立ち入ることが出来るようになった。
ならば魔術のことを本気で学んだ方が、よりビリンも扱いやすくなるだろうと考えた。
「少なくとも一週間以上はいるんじゃない? それにここで目的を果たしたところでその次のことはまだ考えていないから」
「つーことはサクラは次の目的探しか?」
「それもあるけど、最初はちょっと魔術について触れてみようかなって」
サクラの持つ魔術の知識は、魔法の知識も含めて師匠から聞いたことしかない。
師匠にも以前、自分の言葉より魔術学校で図書館なり授業なりと何でもいいが直接学んだ方がいいぞと言われた。
「その合間合間に戦い方とかについてビリンから教わると良いよ」
「あぁ……って私だけか!」
「僕に基礎なんて無いし師匠から教わったものはとてもじゃないが教えることなんて不可能っていうよりよく生きていられるなというくらいのレベルで地獄」
何を思い出したのか、サクラの表情は先日の体調不良とはまた別の顔色の悪さになっていた。
「相当しごかれたんですね」
「受けないことをお勧めするよ」
「あ、はい」
「長々と立ち話しちまったが、そろそろ行こうぜ、魔術学校に!」
「そうですね、行きましょう」
イリナのある程度の滞在時間も決まり、当分の行動も決まった。
一行はイリナの町の中心に構える魔術学校に向かう。
魔術学校に向かう手段として最も多く利用されているのがバスだ。
これは、グルーシャからイリナを行き来するバスと同じで、魔術学校が提供しているものだ。
最も多く利用されているので、移動時間はバスの方が早い。
しかし、乗り物に弱いメニシアがいるので結果徒歩で行くことになる。
バス利用されることもあり、徒歩だとそれなりの距離を歩くことになるのだが、別にそれが苦になるということはないくらいには一行は慣れている。
だから、特に何もなく、一時間経たない程の時間で魔術学校の第二区側の正門に到着した。
魔術学校の正門は、町の入り口と比べると厳重な警備によって守られている。
中に入る前に持ち物等を含めて念入りに検査をする。
それもそうだ。魔術学校……特に図書館には重要な資料がたくさん存在する。
といっても盗まれた所ですぐに戻ってくる。
貸出等の許可が無いと、魔術学校から一定の距離を離れると、元の場所に転移する魔法が施されている。
何故魔法なのかは後々わかるとして、厳重な警備に検査ということもあり、割と長い行列が出来ている。
「どのくらい待つのでしょうか」
「この調子だと歩いた時間以上に待たされる可能性もあるんじゃない?」
「うわ、しんど」




