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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
3周目 第3話 雷魔潜む魔術都市
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第3話 雷魔潜む魔術都市①

 船旅を終えて、港町グルーシャに降り立ったサクラ一行。

 港町グルーシャは、ファルカスや目的地である魔術都市イリナのような大都市とは違う小さい田舎の港町。街の規模だけで言うならエリアスより少しだけ小さい。

 それでも、港町としての知名度は高く、田舎だが高い盛り上がりを見せている。

 船乗り御用達の町と言う訳だ。

 今回はグルーシャが目的ではないので、船から降りた後すぐにグルーシャを出てイリナに向かう。


 イリナまでの道中は魔物が多発しており、徒歩だと人によっては死にに行くようなものだ。

 それは、サクラたちも例外ではない。

 いくら実力があったとしても、数が多ければ多いほどその差が埋まってしまう。

 そして、事前に入手した情報だと、なぜか異常なまでに(・・・・・・)魔物が大量発生しているとのことだったのだが……。


「……いないじゃん」

「いないですね」

「いねーな」


 魔物が大量発生していると聞いていたのに、魔物の魔の字も見られない。

 見られるのは大量の魔物の死体(・・)だ。


「大量発生していたのは死体だったのか」

「そんなはずないと思いますけど」

「……窒息死とかじゃねーよな」


 どの死体にも共通していることが、致命傷がどこにもないことだ。

 魔物特有の地も流れているわけでもなく、ただただ何もないまま死体として倒れている。


「その可能性もあるし、別の可能性もあるし」

「「別の可能性?」」

「魔法とか」


 メニシアとビリンは、サクラの使える魔法をすべて把握しているわけではない。

 そもそも魔法自体が希少な存在なので、一生のうちに一回見れるかどうかだ。

 致命傷を与えることなく殺すことの出来る魔法があるのかもしれない。


「ま、あくまで予想の範囲だけど」

「でも、ないことはないだろ?」

「うん、魔術と違って奇跡みたいの感じでもあるから」


 そう、魔術と比べると奇跡と呼べるものを平気で起こすことを可能にするのが魔法。つまりは無限の可能性を秘めているのだ。


「うーん……やっぱ魔力を全然感じないから魔法じゃないかな」


 魔法が使われているのなら、微々たる量でも魔力の残滓が残っているはずなのだが……。


「呪いじゃないかな」


 背後から張った声が聞こえてきた。

 三人は背後に振り向く。

 そこには薔薇柄の刺繡が施された黒装束の女性がいた。

 妖艶で絶対的な強者感が漂う雰囲気。

 サクラとビリンはともかく、メニシアは鳥肌が止まらない。

 そんなメニシアに安心感を与えるようにクオンがメニシアの肩に登り、顔をスリスリする。


「……怪しくないよ、怪しくなんか」


 何かを察した女性は慌てふためいて何とか誤解? を解こうと必死な様子なのだが……。


「それじゃ「私は怪しい人物ですよ」って言ってるようなものじゃん、コウラン」

「コウランって……「光の呪術師」か!」


 コウランと呼ばれた女性は、ファルカスのギルドに所属する冒険者で、冒険者ランクは最高ランクのS。

 要は最強の冒険者の一人なのだ。

 ちなみに、サクラが以前ボコボコにしたSランク冒険者は彼女ではない。


「その二つ名は恥ずかしいからコウランでお願いするよ、ビリンさん」

「私の名前は流石に知っているか……いや、私が知らなさすぎるのか」


 ビリンの場合は性格的に女王一筋のところがあったので、関係者以外の名前をあまり覚えていなかった。

 コウランの場合は、名前より二つ名の方が城内には広まっていた。


「それにしても久しぶりだね、サクラさん」

「うん、お世話になったね、その節は」

「あの時は本当に抑えるのが大変だったよ――」


 サクラとコウランが出会ったのは、一年以上前。

 色々なことがすれ違いにすれ違った結果起きた別のSランク冒険者とサクラの戦いの時だった。

 その時は依頼を終えてファルカスに戻った直後に、ギルドからの要請でその戦いの場に向かった。

 到着した時には、すでに終局を迎えようとしていた。

 一方的なサクラによる蹂躙、あと少しで対戦相手である冒険者の息の根が止まるのではないかという程の状況で、コウランは躊躇わずに最高位の拘束の呪いをサクラに掛けた。

 しばらくの抵抗はあったものの、結果収束し、死者を出すことはなかった。


「そんなにヤバかったのですか?」

「君は……」

「あ、メニシアと申します。サクラさんと旅をしています」

「おっと、見知った人ばかりだったので自己紹介が遅れてしまった。私はコウラン、よろしく……そうだな、確かに大変だったよ」


 コウランがサクラに使った呪いは、敵を拘束する呪いの中で最高位のものだった。

 本来だとその呪いは人間ではなく魔物や魔獣と言った人外とも呼べる存在に使用するものなのだが、人間に使用する呪いだと無意味だと判断した結果が先の結果だ。


「そもそも、呪い自体あまり人に対して使いたくないんだけどね」

「呪いって人に使用して大丈夫なのですか」

「大丈夫ではないかな……呪いとはね、悪魔の使う魔法を真似たようなものだからね」


 呪いの原点は、悪魔の使用する魔法だと言われている。

 大昔の人々が、悪魔に対する策として、悪魔の使用する魔法を真似ることで対抗できるのではないかと考えたことがきっかけだ。

 結果的にそれは功を奏した。

 それは、悪魔だけではなく魔獣や魔物にも通じ、さらには人間にも通じてしまう……。

 人間に対しても効果が発揮するとわかってからは、先人は呪いという概念を封印することでその存在、知識を後世に残さないようにした。

 メニシアも含めて、現代の人々が思い浮かべる呪いとは、この封印された呪いの効果が口承で現代まで伝わった名残とでも言うべきものなのだろう。


「だったらなぜコウランさんは呪いを使えるのですか?」

「簡単な話だよ。私の家系が代々呪い使い……呪術師の家系だからだよ」


 コウランの家系は、呪いを悪として利用とした人々と違い、正しいことに使用しようとした家系。

 それはコウランの代でも変わらずだ。

 ただし、悪魔の使用していた魔法が原点ということもあり、攻撃や拘束と言った相手に害を与えるものしかなく、回復と言った能力を持つ呪いは結局のところ生まれることはなかった。

 だからこそ、人一倍に呪いの使いどころを見極める必要がある。

 呪いと聞いて悪や闇のイメージがある中で、コウランの今までの活動が評価され、悪や闇の対極に位置する光の名を冠する二つ名が付けられた。

 本人は恥ずかしいと言っているが、実はこの恥ずかしいというのは名前に対してのことではなく、「光の名を冠することができて嬉しさのあまり泣き崩れてしまった」というエピソードに対してのことだ。


「それで、呪いってどういうこと?」

「あー」


 今問題になっているのは、コウランの出自や過去のことではない。

 魔物の不自然な死体についてだ。

 コウランが呪いと指摘したのだが……。


「サクラさんは実際に経験したからわかると思うけど、呪いは外傷を与えることが出来ないんだよ」

「うん、何というか内側から来るというか」


 呪いに外傷を与える術はない。

 ただし、呪いによる効果で対象者が対象者自身に傷を負わせるということは可能だ。


「ただね、呪いとは言ったものの、あくまで呪いに近い何かと言った方が正しい表現かもしれないね」

「?」


 この中で一番そう言ったことに対して疎いメニシアが疑問を浮かべる。


「メニシアさんにもわかるように言うとね、呪力が感じられないんだよ」

「呪力?」

「魔力の呪い版と言えばわかる?」

「あー」


 もともと呪いは魔法の一種である。

 魔法同様に魔力を消費するのだが、魔法や魔術のように魔力を消費するのではなく、魔力に該当する呪力を消費することで呪い=呪術を使用することが出来る。

 呪力は、もともとある魔力を変換することで発生する。呪術師特有の体質と言えるものだ。


「呪力を感じねーならそれは呪いじゃねーんじゃねーか?」

「うん、でも死体の状態的には呪殺のようにも見える……要はわからないんだよね」


 結局は振出しに戻ったと言う訳だ。全く情報が更新しなかったわけではないが……。


「そもそも、コウランはここで何してるの、依頼は?」

「そう言えばそうだな」


 ファルカスのギルドでは長期間を要する依頼を受けていると聞いており、未だかかる見込みであるとのことだった。


「それなら終わったよ」

「えっ!?」


 驚いたのはメニシア。

 ギルドから聞いていたのは、最高ランクであるSであることも考慮してのまだかかるであろうという計算。メニシアはてっきり数週間、もしくは一ヶ月以上は要するものだとばかり思っていた。


「ありゃ、メニシアさん以外は驚かないんだね」

「まぁ、Sだし、ギルドって長めの時間で見るじゃん」

「確かに最短ではなく割と長めに時間を計算してたな、何でだ?」

「それだけ慎重なのさ、特に私の所属するファルカスは……君たちは、もしかして」

「イリナに行くところ」

「おっと偶然! 私の依頼もイリナだったんだよ」

「何の依頼だったのですか?」

「うーん……言えるのは、依頼が二つで一つでその片方だけかな。一つは魔術の臨時講師ってところ」

「魔術って、コウランさんって魔術も使えるのですか?」

「まぁ、呪力に変換しないってだけの話だからね、ファルカス一だと自負しているよ」

「衛兵の魔術部隊も確か指導してたはずだ、私は別部隊だから直接は知らないが」


 呪術師であり、自他ともに認めるファルカス一の魔術使いでもあるコウラン。実はサクラたちが旅経つ前までにファルカスにいたら、ギルドを介してビリンの指導をして貰おうと考えていた。

 サクラたちは、その件とイリナに行く目的を離した。


「なるほどね、すれ違いという奴だ」

「そもそも忙しいだろうからあまりあてにしていた訳ではないけど」

「サクラさんの言うとおりかな、戻った後もファルカスに当分いるとはいえ結構忙しくなるからね。でも私よりイリナに行って学ぶ方が手っ取り早いと思うよ」


 こうしてコウランとサクラ一行は別れようとするのだが……。


「あ、皆さんに忠告を」


 この言葉に疑問を浮かべる一行。


「私がイリナを出る直前に嫌な魔力を感じました」

「嫌な魔力?」

「はい……でも、魔術学校のある都市ですから、魔術の実験によるものかもしれませんが一応気に留めておいてください」

「わかりました、ご忠告ありがとうございました」


 会話を終えて、コウランは旅の無事を祈り笑顔で別れた。

 一行も、コウランの忠告が気になったもののいったん胸にしまい、改めて魔術都市イリナに向かう。

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