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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
3周目 第2話 疑惑の正義
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第2話 疑惑の正義⑫

「……っ!?」


 それは突如起きた。

 幽体が後ろから刺された。

 光の矢……矢にしては大きい、槍という表現の方が正しいのかもしれない。

 ただ、この攻撃はサクラにしろ攻撃を受けた幽体も見覚えがあった。


「……ジャスティス・アローか」

「正解、だ」


 サクラの後ろにはビリンとメニシア、そして攻撃主でありビリンの肩を借りたイエユリがいた。

 攻撃の影響で力が抜けて女王の顔に触れていた手が離れた。

 その隙を見逃さなかったサクラは、即座に魔法を発動し、女王との距離を取らせ、同時に女王の四肢を拘束している鎖を断ち切る。

 鎖から解放された女王はその場で倒れそうになるが、エンチャントで速度を上げているサクラが間一髪で女王の体を受け止める。


「くそが……この死にぞこないが」

「……その、死にぞこないに、お前は殺されるなんて、滑稽、だな」

「この……」


 幽体は技を放とうとするが、今のジャスティス・アローの一撃と、先程の雷鳴の攻撃で技を放てるほどの力が枯渇している。


「物理技は完全に通用しないけど、魔法や魔術といった技に対しては逆に異常なほど耐性が無いってところかな?」


 何故、刀による攻撃で真っ二つになったはずなのに何事もなかったかのように行動していたのは、その体を幽体化させて攻撃を無力化させていたからだった。

 それは乗っ取られた体にも適用される。


「くそ……あと少しであの女の体が手に入ったのに」

「……まさか」


 イエユリは何かを察したようだが、直後に幽体の体が光りだす。

 そして体が少しずつ粒子状になり消滅しようとしている。


「タイムリミットか……っ!」


 その顔には怒りと殺意が込めらていた。完全にとばっちりだ。


「おい、てめぇの目的はなんだ」


 消えかけている幽体にビリンが質問する。


「……女王の体、というよりは、女王の持つ、能力が、狙い……」


 口に出そうとするたびにイエユリに覇気が感じられなくなる。

 もう限界(・・)を迎えようとしていた。


「何があるのですか、女王様には」

「……不老不死だ」

「不老不死!?」


 メニシアが驚くのも無理はない。

 そもそも不老不死などお伽話のような、いくら魔法があるからといって存在するはずがない概念だ。


「魔女や、魔法使いの固有魔法みたいなもの、です」

「陛下!?」


 意識を失っていた女王が目覚める。


「長らく、気を失っていたようですね……ビリン、イエユリ、申し訳ございません」

「陛下は別に……」

「私……こそ……」


 ビリンは涙を流し、イエユリは……。


「私は、魔女と言う訳ではありません……この不老不死は一種の呪い見たいなもの」

「呪い」

「そう……呪いです」


 八百年――。

 長い、長い時を生きてきて苦しく、忌々しくも思ったこの呪い。

 過去、仕えたものたちはこの呪いに対して理解を示してくれて、恐れたりするということもなかった。

 そしてある日、どこから得たのかは定かではないが、ある者が訪れた。

 イエユリの体を乗っ取って。


「なぜあなたが、このような、呪いを欲したのかは、わかりませんが……」

「貴様がそれにどう思っているかは知らないが、それさえあればあのお方を……破壊の魔女を殺せたのに」

「!?」


 まさかの単語が出てきた。

 破壊の魔女――。

 聞いたことがない単語であるはずなのに、サクラとメニシアは聞いたことがあるような気がしていた。


「あなたは破壊の魔女に仕えていないの?」

「馬鹿を言うな! 破壊の魔女……あの女の下についているのは、忌々しいあの女を殺す為の準備のためだ! 私が真にお仕えするのは――」


 ここで話が途切れる。

 光の粒子となり消滅しかけていた幽体が突如一瞬にして消滅したのだ。


「……」


 愕然とする一同。


「イエユリ?」


 ビリンの肩を借りていたイエユリが、全身の力が抜けて、流れるようにその場に倒れた。


「イエユリ……イエユリ!」

「……うるさい、落ち着け」


 叫ぶビリンを笑みを浮かべながら制止する。

 その表情も声もとても弱々しかった。


「あの悪魔に、乗っ取られた時点で、私の生は幕、を閉じた……」

「……っ!」

「別に、これは、私が弱かった、だけ、だ……ビリンは、悪く、ない」

「イエユリ……」


 同様に心身ともに疲労しきっている女王の目には涙が浮かんでいた。


「ハハ……泣かないで、くださいよ、陛下……サクラ、さん」

「なに」

「あの悪魔に、乗っ取られた時、一緒に、記憶が、流れ、た……破壊の魔女、の」

「!?」


 乗っ取られたのと同時に記憶が共有されたのだろう。


「今のままだと、彼女には、勝てないよ……」

「何か知ってるの」

「詳しくは……だが、間違いなく、ピースは揃ってきている……思う」

「ピース……?」

「ビリン」

「何だよ」


 イエユリはすでに限界を迎えているが、その瞳、発する声から最期の力が感じられる。


「陛下には、申し訳ない、が……しばらくの、あいだ、サクラさん、たちを、守って……」

「……」

「お前の大楯、が、そのピースのうちの、一つ、だ」

「大楯が」


 神楯エイジスは太古の時代に、魔王討伐に使用された神器のうちの一つだ。

 だが、これを最後にイエユリは目を閉じた。


「おいイエユリ!」

「最後に、私からの、プレゼント……だ」


 イエユリの右手に光が出現し、その光はビリンへと移り宿る。


「これは……」

「私の形見だと……思って……」


 これを最後に、イエユリが口を開くことはなかった。


「イエユリ……イエユリィィィイイイイイイ!!!」

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