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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
3周目 第2話 疑惑の正義
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第2話 疑惑の正義⑪

やはり(・・・)……か)


 サクラは何となく勘づいていたようだが、残る二人は驚愕している。

 特にイエユリの大親友であるビリンは――。


「イエユリ!」


 倒れたイエユリの元に走る。


「ビリンさん、危ないですよ」


 メニシアはそれを制止しようとするが、それで止まるビリンではない。


「しっかりしろ、イエユリ!」


 イエユリの元に近づくと、自身も座り込みイエユリの体を少し起こす。

 何度呼びかけても反応しない。

 ビリンには最悪な可能性が浮かんでいた。

 それは、イエユリの体に触れた瞬間に感じたこと……生者から感じられるぬくもりが全く感じられない。まるで死んでいるかのように冷たい。


「ビリン、その人のことを守ってあげて」

「え?」

「まだ終わってないよ」


 サクラの言う通り、まだ終わってなどいない。


「くそ、くそくそくそくそくそくそっ!」


 分裂した後にイエユリ同様に倒れ込んだ幽体は、ダメージが残っているものの、なんとか立ち上がることが出来た。

 うっすらと白くぼやけていた全身には色彩が帯びてきた。

 半透明ではないにしろ、透けてはいるが完全に色が付いた。

 ちゃんとした人間態ではあるが、その頭部には先ほど見たイエユリのそれとは比べ物にならない禍々しいオーラを放つ悪魔の角が生えている。

 逆にイエユリの頭部には、先程まであったものが無くなっていた。


「……それがあなたの真の姿なんだ」

「黙れ、貴様らを必ず殺す……殺してやる」


 その目にはとてつもない殺気が感じられる。

 さらにはまるで次なるターゲットにでもなったのではないかというくらい真っ直ぐな目でサクラを見る。


「あなたの体……貰い受けますよ」


 その者が姿を消したかと思えば、一瞬にしてサクラの後ろに移動していた。

 ワープか何かのだろうか。

 背後を取られたサクラは、すぐに魔法を発動しようとするが――。


「遅い」


 それは、サクラの体に乗り移り、支配して、イエユリと同じように我が体にしようとした。

 単純な戦闘力だと確実にサクラの方が上だと、先程からの戦闘で理解したからだ。

 しかし、それでも理解できなかったことがあった。


「なに!?」


 その者が突如、サクラの体から飛び出す。

 同時に落雷を受けたかのような強い電撃が発生して、その者に一瞬にしてダメージを与えて、一気にボロボロの状態と化した。


「なぜ……なぜなのだ」


 ボソッと呟く。


「なぜ貴様の中にあのお方がいるのだ!」


 そして絶叫する。

 ビリンもメニシアも何のことかわかってはいない。

 それはサクラも同じことだった。

 ただし、二人とは別の意味だが。


「何のことかな?」

「とぼけるな! なぜ貴様のような小娘の中にあのお方がいるのだ!」

「あのお方あのお方って……口を開けばそれしか言えないわけ?」


 ため息をこぼし、そして背中の魔法杖に手をかける。


「あなたの想像した通りのことが、答えなんじゃないの?」

「……」


 イエユリを含めた、数多くの人間の体を乗っ取り、支配してきたからこそわかる。

 それに加え、あのお方のことについて間違えるはずもない。

 だが、認めたくない。

 認めたくないのに、先程の乗っ取りのせいでそれを認めざる負えない。

 サクラは、現代に生きる魔法使い・魔女の中ではトップクラスだ。

 同時にあのお方の子どもであるということも……。

 認めたくないし、許せない。

 そのような感情たちがぶつかりにぶつかり、それは爆発した。


「ふざけるなぁ!」


 名も知らぬ幽体は、サクラに襲い掛かる。


「天空に纏いし大いなる雷雲よ、我は思う、悪を照らす、我は願う、彼者に大いなる鉄槌を――」


 魔法杖を構えたサクラは詠唱を開始する。

 サクラを中心とする周りの地面に魔法陣が展開される。

 普段、サクラの使用する魔法は詠唱を必要としない。

 正確には固有魔法を除くすべての魔法には詠唱が存在する。

 初級・中級レベルの魔法使いだと詠唱無しでも使用できるが威力というものが半減以上してしまう。

 サクラのような上級レベルだと、詠唱無しでも詠唱並みもしくは、魔力量によってはそれ以上の魔法を使用することが出来る。

 詠唱無しの魔法の使用は、詠唱破棄と呼ばれている。

 そしてそれは、一般的な上級レベルの魔法使いの話だ。


「――我が名はサクラ、輝け」


 詠唱を終えたサクラ。

 途中から広間の天井に黒い雲が発生し電気のようなものを纏っていた。

 詠唱を終えた頃には凄まじく、今にでも溢れ出しそうな誰が見てもわかる強大な雷を纏った黒雲が誕生した。

 そして、発動する。


「雷鳴――」





 発動した瞬間、今にも溢れ出しそうだった雷が、即座に標的に流れた。

 その雷がひたすら落ち続ける。

 まるで止む気配が無い。

 サクラの魔力が尽きるまでなのか、一定時間の経過なのか、黒雲に溜めこまれた雷が尽きるまでなのか。

 どちらにしろだ。

 受けているものからしたら地獄そのものだが、見守る側に回ったら、おっかないとは裏腹にその雷が美しく見えてしまう。

 実際にビリンはその雷が美しく見えているようで、見惚れてしまっている。

 しかし、すぐに我に返り、万が一雷に当たらないようにイエユリを抱えて安全圏まで避難する。

 メニシアはというと……。


見たこと無いはず(・・・・・・・・)なのに、なんでだろう、どこかで見たことがあるような)


 メニシアどころか、サクラはクオンと師匠以外にこの魔法を見せたことがない。

 自身最強クラスの魔法。

 それを使わざる負えないほどの相手がまだ現れていないので、使用したのは久々だ。

 なのに、メニシアには既視感があった。

 しかも、今回のと比べると明らかに技の威力は落ちている。

 だからといってその威力は凄まじかったが……。

 その時は詠唱破棄で使用していたからかもしれない。

 ……見たことないはずなのに、あたかもそれを直接見たようなそのような謎の感覚に襲われる。

 しかし、今は戦闘途中である。

 そのようなことを気にする余裕などない。

 ちなみに、一般的な上級レベルの魔法使いの詠唱有りの魔法と比べると、数十倍の魔力量を誇るサクラの詠唱有り魔法は、魔力使用量のコントロール次第で町一つ壊すレベルの威力となる。

 相手が人外であるという理由で、最大級の威力で魔法を放つサクラ。

 当の魔法を受けている本人はすでにボロボロ、黒焦げ状態だ。

 最初は何とか諍おうとしていたが、今では完全に動かなくなってしまった。

 魔法発動中にそれを確認したサクラは魔法を止めた。

 それなりに魔力を消耗する雷鳴を容赦なく連発していたが、底なしレベルの魔力量を持つサクラだから為せる芸当だ。

 普通の魔法使いが雷鳴を使うと一瞬で魔力が底を尽きる。


「やったのか、サクラ?」

「今のでダメだったらその後が大変だけど」


 一発で余裕で倒せる魔法を二桁の回数も放ったのだ。これで終わってもらわないとサクラの魔力を無駄遣いしただけだ。

 だが、最悪と考えた予感が当たってしまう。

 完全に止まっていたはずのそれは突如動き出した。

 そしてそれは、猛スピードでとある方向へと走る。


「ビリンたちはここにいて」


 すぐに反応することが出来たサクラはあとを追う。




 サクラの来たところはまるで監獄。

 数多くの部屋の入り口は鉄格子で丸見えだ。

 そして目当ての者はすぐにいた。

 幽体が背を向けて立っている。

 魔法を放つ前は宙に浮いていたのに、現在は地に足を付けている。

 別に実体を手に入れているわけではないのに。


「来たか、魔女の子よ」

「……は?」


 その瞬間、可視化されるくらいに魔力が高まる。

 怒りと同調するようにしてその高まりが止まることがなく、それは周りに影響が出始めた。

 地は揺れだし、少しずつ崩れだしていく。


「誰が……誰の子だと」


 再びサクラの頭上に雷雲が発生し、先程以上の速度で雷が溜まる。


「その魔法を今、私に撃って良いのか?」


 サクラの方を振り向き、横に移動する。


「!?」


 それを見たサクラは、一気に沸点が下がり、発動寸前の雷鳴も解かれた。


 一人の女性が四肢を拘束された状態で立ち尽くしていた。

 気を失っているようだが……。


「あなたたちが探している者だ」

「……この国の女王、か」


 直接は見たことがない。

 けど、この女性がファルカスを統べる女王なのだろう。

 見た目は若い。が、その姿は女王に相応しくないボロボロの状態だ。

 風前の灯火と言うべきなのか、一刻も早く助けないとその命が危ない。


「動くなよ」


 その手は淡く輝き女王の顔に触れる。


「貴様が動けば女王はすぐに殺す。そして私の新たな体となり、そして死ぬ」


 どちらにせよ選択肢など最初から無かった。

 サクラなら、無詠唱でそれも瞬間的に女王との距離を離すことは可能だ。

 しかし、幽体は女王の顔に触れている。

 魔法を放つ瞬間に多分殺される。

 一体どうすれば……。

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