第2話 疑惑の正義⑤
ギルドでの話し合いも終わり、一同解散。
サクラたちは昼過ぎから行動を開始する。
それまでホテルに戻り、しばし休憩。
正直本当に朝早くからだったので少しだけ眠い二人。
メニシアは読書、サクラは仮眠を取ることにした。
そして目的の時刻になった。
「それでは情報収集と参りましょうか」
「うん……それで、どうするの?」
やることは決まっている。
ただし、闇雲に情報収集をしても、見つかったところでそれまでに時間がかかるかもしれない。
それ以前に良い収穫が無い可能性もある。
効率良く情報収集を行いたいところだが、肝心のヒントが無い。
一応ギルドからある程度聞いていた。
しかし、対象者ビリンが現れる時間帯・場所が特定の場所ではなく完全にランダムだ。
何か法則があるのかと考えたが、法則も何も無く結果ヒントがほぼ無い状況となっている。
「一応場所は不特定ですがエリアだと住居エリアに多く現れているそうですよ」
「義賊だから貧しい人にお金やら何やらをばら撒いている訳でしょ。住居エリアに貧しい地区とかあるのかな」
「その可能性はありそうですね。住居エリアを中心に情報収集を行いましょうか」
目的が定まり、早速住居エリアに向かう。
道中の中央エリアにおいても情報収集を行う。
しかし、中央エリアは他のエリアと比べると国外の人が多い。
ファルカスの人間を探すのが困難だったが、大型デパートや昨日食事をした飲食店など現地人がいるであろう場所に訪れて聞きに回った。
結果、既に得ている情報と比較して新しい情報というのはあまり手に入らなかった。
中央エリアでわかったことは、ビリンという女性は、聞いていた以上に有名で同時にファルカスの人達から信頼されているということだ。
そしてビリンが追われているということも知っていた。
どのような理由であるかということも。
だからこそ信じられないという声が多かった。
同時に国を疑いビリンを信じているという声が圧倒的に多かった、というよりその声しかなかった。
これだけでビリンという女性がどういう人なのかがわかるような気がした。
そして、他に共通して挙がるのが、住居エリアで見かけるという声だ。
ギルドの情報とさくらたちの考えと合致している。
そうこうしているうちに、サクラも来たことがない住居エリアに到着した。
「「……」」
静かで暗い雰囲気が漂っている。
二人が最初に抱いた印象だ。
中央エリアの活気ある雰囲気とは真逆の雰囲気を住居エリアから漂ってくる。
まだ昼間で雲一つない晴天であるはずなのに、全体が不気味な雲に覆われており、カラスが多く留まっているようなそのような雰囲気だ。
「明らかに暗すぎませんか」
「廃村みたい」
「私は見たことはないですけどイメージとして言うのなら確かに廃村と言えなくはないですね」
「人が全くいない訳ではないけどね」
そう、人がいない訳ではない。
だからと言って多い訳ではない。
昼間の時間帯で多くの人が仕事に出ているのだろう。
休日になると人が多くなっているのかもしれない。
人が多くなったところで廃村のような雰囲気が消えるかどうかわからないくらいな現状ではあるが。
「たとえどのような状況だったとしても僕たちがやることは変わらない」
「そうですね」
二人は本来の目的である情報収集を始める。
名前の通り、ある程度歩き、さらに見渡し視界に入る限りは住宅しかない。
正しく住宅街。
全く人がいないと言う訳ではないので、すぐに人を見つけることが出来た。
「こんにちは、おばあちゃん」
「おや、こんにちは。どうしましたか」
話しかけたのは、ベンチに座っていた女性の老人。
「私たちはギルドの依頼でとある方の情報収集を行っておりまして」
「情報収集? もしかしてビリンちゃんのことですかね?」
話が早くて助かった。
やはりビリンは相当有名のようだ。
「もしかしてビリンちゃんを捕まえるということですか?」
老人の目には、薄っすらと殺気が宿っているかのように、態度が急変した。
「いや、捕まえない。ギルドの依頼は捕縛ではなく保護だから」
「そうですか……(ほっ)」
安心した老人。
その反応に少しだけ違和感を覚えた。
「気になることがあるんだけど良い?」
「何でしょうか?」
「例え依頼内容が捕縛だったとしても僕は捕まえるつもりなんて全くなかった。そう言っても多分あなたは同じ反応をすると思うけど、ビリンっていう人は何者なの?」
「……」
「中央エリアの人もあなたと同じ反応をしていた。ビリンに捕まってほしくない、保護されるなら安心みたいな反応。一体何なの、あの人は」
サクラだけではなくメニシアもそうだ。
老人だけではなく、今まで答えてくれた人全員が反応の違いはあるがほぼ似たような反応だった。
ファルカスに長くいるわけではないので何が真実なのか二人はわからない。
「そうですね、こういう言い方は誇張しすぎかもしれませんが、簡単に言えば英雄でしょうかね」
「英雄、ですか」
「国のため、民のため、そして女王のために彼女は本当に動いてくれました。まるで自分を削っているかのようにです。感謝してもしきれない。だからこそ信じられない、彼女が国を追われるなんて」
老人は今にも泣き出しそうな勢いだ。
「何で今の状況になったのか知っていますか?」
なおさら何故ビリンが追われているのか。
本当に大量虐殺事件の容疑者なのか。
「それはわかりません……が、あの子が私たちを不幸に陥れるということは絶対にないです」
その確固たる瞳を見れば二人はその話を信用するしかない。
「何かが起きない限りはビリンが白というのはほぼほぼ確定だと思う。だったら別の質問。ビリンは誰かに恨まれるということはないの? 今までの話の流れ的に矛盾していると思うけど」
「国外の人はわかりませんが国内の人は間違いなくビリンを恨むという人はいない筈です」
「ここまで言い切れるほど人物、すごいですね、そのビリンさんは」
他の人の発言も核にはビリンを本当に信頼しているというのがある。
何をどれだけのことをしたらここまでになるのか。
気になる所ではあるが、多分これ以上欲しい情報が見つからないと感じた二人は、老人に感謝の礼を述べ別れた。
この後も情報収集を続けたが、目新しい情報はそれほどなかった。
ただし、「住居エリアには他のエリアと比べて多く現れている」と「むしろ国側を怪しんでいる」という二つの情報を比較的多く入ってきた。
そして気付くと日が完全に沈みそうな時間帯になっていた。
「そろそろホテルに戻りますか」
「新しい情報も多分入らないだろうしね、帰ろうか」
昼間の段階でも暗い雰囲気が漂っていたが、現在もそれは継続中ではあるが仕事帰りの人なのか昼間より人が多くなって少しは暗さも軽減された(ような感じがする)。
「動くな」
背後から聞こえたのと同時にメニシアは背後を取られ首元に刃物を付けられた。
「動くとこの娘の命は無いぞ」
(娘というより息子だけど)
そんなツッコミを心の中でするサクラ。
正体は、暗くて分かりづらいが多分褐色肌の女性であるということがわかる。
黒いシャツに黒いロングスカート。
フードを被っているが、加えて暗い視界でも輝くブロンドヘア。
「黙って私についてこい。お前らに拒否権は無い」
女性の言う通り、刃がメニシアの首に当たっている時点で間に合わずメニシアを死なせてしまう。
拒否権が無いのはサクラにも、人質と化したメニシアもわかる。
女性の言う通りにして、サクラは女性の後に付いて行く。




