第2話 疑惑の正義②
「……ん」
「あ、起きましたか?」
目を開くと、そのぼんやりとした視界の先にはメニシアが顔をのぞかせていた。
「……そっか、寝てたんだっけ」
旅の疲れもあって、部屋に入るなりすぐにベッドに横になったサクラ。
窓の外を見るとまだ明るかった。
「僕ってどのくらい寝てたの?」
「そうですね……二時間も経ってないと思いますよ」
いつもだったら、二時間以上、昼に寝たら夕方くらいに起きるサクラなのだが、今日は昼過ぎと思いのほか早く目を覚ました。
「もう少し寝ていても大丈夫ですよ」
「いい、もう起きる」
そう言ってサクラは、起き上がりベッドから降りる。
そしてあくびをしながら体を伸ばす。
「メニシアはもうご飯食べたの?」
「食べてませんよ。サクラさんを残して食べるのも申し訳なかったので」
「じゃあ食べに行こうか」
「わかりました」
二人は最低限の準備をして部屋を出る。
宿泊するホテルでも食事をすることは出来る。
夜はホテルで食事をするつもりだが、メニシアがファルカスに来たことがないということで、案内がてら外で昼食を済ませようという話だ。
と言っても、サクラもすべてのエリアについて詳しいと言う訳ではない。
前回来た時の件が無ければ、ある程度解説できるくらいには案内をすることが出来たのかもしれない。
手始めにサクラたちが宿泊しているホテルがある中央エリアを案内する。
中央エリアは、その名の通りファルカスの中央に位置しており、行政もあるのでファルカスの中心となるエリアでもある。
そして、ホテルなどの宿泊施設や企業、そしてサクラの因縁?とも言えるギルドなどの施設が多くあるため、他のエリアと比べて国外の者が多く存在する。
そのような理由もあり、他のエリアと比べて中央エリアは活気がある。
「ちなみにギルドは王城付近にあるから、その反対方向にある僕たちの泊まるホテルとは結構離れているから安全」
「安全って、本当に怖かったのですね」
「怖いというか、しつこ過ぎて気持ち悪かった」
メニシアが予想している以上にサクラの心には深く刻まれているようだ。
逆に詳しい経緯を知りたいくらいだと思い始めたメニシア。
ホテルを出た時間がギリギリ昼食の時間くらいだったので、各々空腹だ。
全部ではないが数十分程度、中央エリアを見て回った一行は昼食をとるために食事場所を探している。
「海に近いですし海鮮料理が有名らしいですけど、どうしますか?」
「別になんでも良いよ、そこまで興味ないし」
メニシアが加わる以前のサクラの食生活は「食べられるのなら何でも良い」というスタンスだ。
「では海鮮料理が食べられるところにしましょう! 私が食べたいというのもありますが」
「じゃあそれで」
何を食べるかも決まったのであとはそれを提供している店を探すだけ。
飲食などに関してサクラは、前回来た時に全く余裕などなかったので何も知らない。
手元にガイドブックなど無いので足を使い自分の目で確かめながら探していく。
それは思いのほか早く見つかった。
三十分も経たずに目当ての店を見つけた。
昼食時は過ぎていたとはいえまだ人が多かったのだが、空席があったので待たされることなくすんなりと入ることが出来た。
そしてすぐに、メニシアが食べたかった海鮮料理を注文した。
人が多いので時間がかかると思っていたが、二十分程で料理が来た。
数種類の刺身の盛り合わせ、魚の出汁を使用したスープに米。
それが二人分に加えて、クオン用のご飯もサービスで付いてきた。
最初は持ち合わせているクオンのご飯を与えるつもりだったがちょっと得をした。
特に会話など無く、二人は黙々と食べていく。
結果すぐに食べ終えた。
「美味しかったですね」
「うん」
「こうやって美味しいものを食べ続けていったら食に目覚めるかもしれませんよ」
「そうかもね……まぁ、復讐が終えたらの話だけどね」
「別に否定はしませんけど、ずっと張りつめていたら精神がいつか崩壊するかもしれませんよ。そういう意味では合間の息抜きも必要だと思いますが」
「だったらメニシアが美味しいものを食べさせていけば良いんじゃない?」
「そうなりますかねぇ」
食後の他愛のない会話。
クオンも食べ終えたので、会計を済ませて店を後にする。
「この後どうしましょうか?」
大まかな予定はほぼ終了してしまった。
そもそもファルカス自体に用があると言う訳ではない。
サクラ一人だったら迷わず、というよりさっさとこの街を去っている。
だが、クオンもいるしメニシアもいる。
さすがに自分勝手な行動をするわけにはいかないだろう。
「僕は特に何も無いからホテルに帰るだけだけど、メニシアは他に何か気になる所とかあるの?」
「……今のところ特にないですね。僕のお目当ては海鮮料理だったので」
「帰ろうか」
「帰りましょうか」
「にゃー」
ホテルに戻ることになった。
ホテルに戻ろうとした時だ。
「……!?」
「……? どうしましたか、サクラさん」
「何だろ……悪寒というか、嫌な予感が」
サクラのそれは的中した。
「おや? そちらの和装の姫はサクラさんじゃないですか! おーい!」
「……最悪、気持ち悪い」




