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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
4周目 第4話 呪われた天使
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第4話 呪われた天使㉘

「……え?」


 魔法を発動しようにも、先のダメージが上手く魔法を発動させることが出来ず、道半ばで退場するのかと思ってしまった。

 しかし、いつまで経っても放たれた呪いによる攻撃がやってこない。

 恐る恐る目を開けると、サクラの視界に映るのは謎の光による障壁。

 これがサワンの呪いを防いだのだろう。

 そして同時にサクラが身につけているブレスレットも輝きを放っていた。


「これ、は……?」


 大天使ジャルダルクからはこのブレスレットは神器であるということは聞いていた。

 そして本来の持ち主は、悪魔化したサワンであるということも。

 なのにこのブレスレットは光を放つ。

 本来の持ち主ではない者が装着しているのに……。

 サクラを守る光の障壁からは魔力を感じない。

 聖剣や他の人たちが使用する神器から感じる力と同じ――つまりこの障壁は神器によるものであり、それはこのブレスレットから発している。

 障壁で受け止められている呪いは、次第に障壁に吸収され、そのまま浄化され聖なる光という形でサクラが装着するブレスレットに吸収される。

 吸収された光は、すぐさまサクラの全身に行き届き、先程受けたダメージを回復させた。

 受けたダメージが大きかったこともあり、さすがに前回とまではいかなかったが、何とか身体を動かすことが出来るほどには回復した。

 当のサワン本人はというと、現状を理解していないのかどこか困惑している様にも感じる。

 そのようなことはつゆ知らず、サクラは何とか立ち上がることが出来た。


「……呪いを聖なる光に……やってることは聖剣と一緒……そのおかげで回復できたけど……」


 ふと、サクラはあることを思い出す。

 それは先日ジャルダルクに謁見した時のこと。

 ジャルダルクは、このブレスレットを来るときにサワンに渡せと言っていた。

 あの時は何故と思ったが、今思えばその来る時というのは今なのかもしれない。

 サワンが使用することで真の力が発揮されるこのブレスレットだが、多分不完全ではあるが神器として覚醒しているとみて良いだろう。

 現にサクラはこのブレスレットの力の一端が何なのかが頭に流れている。

 サワンにブレスレットを装着させたうえで、聖剣で悪魔因子を取り除いてサワンを取り戻す……これが現状のサクラの目標だろう。

 その上で今のサワンをどう抑えるかなのだが――。


「……ぅぅおghsふぁいsfhjだいfぬいあふああdkfんdさいjfぬあいgふ!!!!!!!」


 何なのかわからない言語を叫ぶように咆哮する。

 そしてサクラに突進、呪いを付与した拳で殴りにかかる。


「――神器発動」


 ブレスレットをかざすようにして腕を曲げ、神器を発動させる。

 次の瞬間、ブレスレットから先程サクラを守った障壁が発動し、それはサワンをも飲み込んだ。

 それは障壁というより、一種の領域と言っていいほどに広々としている。

 魔を弱体化させる――ブレスレットから発動された領域の効果であり、神器としての能力でもある。

 あくまでこれは真の能力の一部分にしか過ぎない。

 神器はそもそも敵対する魔を弱体化させるという共通能力があるのだが、このブレスレットにより発動された領域はさらに弱体化させる。

 領域に飲み込まれて以降のサワンは明らかに動きが鈍った。

 それを見逃す程サクラも甘くない。


「やらせるか――」


 サワンが攻撃に出ようとしたところを峰打ちで抑え、さらに魔法による氷炎交互の弾丸で追い打ちをかける。

 

「ァァァアアアッッッ!!!!!!!!」


 神器により展開された領域の効果により弱体化したサワンにとってダメージは大きい。

 絶叫がそれを物語っている。

 それでも攻撃を止めようとしないのは、悪魔になったが故に理性が失ったのか――。

 だが、サクラにとって今が絶好にして最大のチャンス。


「聖剣よ、魔を斬れ――!」


 遂に、魔を斬る一閃がサワンの身体に刻まれたのだった――。




「ァァ……ぁ、ァァぁ、、ァぁァ……」


 先程とは逆の立場。

 サワンが倒れ、サクラが見下ろす形。

 しかし、サクラの表情には余裕など微塵も感じなかった。


「……まだ……か(・・・)


 この手でモネとネロを助けたという経験から、サワンとの戦いは終わっていないことを肌身で感じた。

 サワンの体内に存在する悪魔因子を完全には吸収できていない――呪いとの相互作用が働いていたのか、悪魔因子そのものが強力なものになっていたのだ。

 ゆえに、ここでの油断は命が終わる――。

 再度聖剣を構え、サワンに刃を向けるが、立ち上がったサワンが素手で強く掴み、離すことはなかった。


「まだこんな――ッ」


 聖剣を引っ張られると、勢いのままサクラの腹部に拳が直撃、そのまま地面に叩きつけられた。

 血を吐き、腹を抱えるようにうずくまる。

 吸収しきれなかった悪魔因子による回復の速度なのか……いや、そもそも回復しているようには見えない。

 それを考える余裕もなく二発目がサクラに襲い掛かろうとしていた。


(――さすがに次はまずい)


 直感でそう叫んでいるが、身体が反応しない。

 その一瞬が命取りとなり、サワンの拳が再び腹部に直撃しようとしたその時――。


「ハァッ――!!!」


 明後日の方向から、シュウラが飛び蹴りを仕掛ける。

 反応すらできなかったサワンは、そのまま蹴られたままに飛ばされる。


「シュウ……」

「回復魔法をかけろ……次で決めるぞ(・・・・・・)

「……うん」


 シュウラに言われた通り自身に回復魔法を施す。治癒魔法ではないので傷を完全に治すことは出来ないが、なんとか立ち上がることが出来るほどには体力を回復することが出来た。

 改めてシュウラを見ると、見慣れた手甲に加えて、先程サワンに見事な一撃を入れた両足には、手甲を同じような脚甲が装着されていた。

 サクラは何となく察したが、それよりサワンの方だ。

 今の一撃が効いたのか、それとも一つ増えたから(・・・・・・・)なのか、明らかに効いている。

 そしてシュウラの言う通り、次で決める――最期の一撃となるだろう。


「僕たちが初めて会っておじいさんを助けた時のこと覚えてる?」

「あの時と同じ事をしろと?」

「うん……それに、今回は後方支援(・・・・)がいるしね」

「了解だ……クォォォォォォ――」


 膝を曲げて姿勢を落とし、同時に両腕を少し後ろに引く。

 次第に両手にエネルギーが集まる。

 それを見逃す程サワンも知性を失っているわけではない。

 妨害を試みるが、サワンの行動をサクラも同様に見逃すはずもなく、聖剣で太刀打ちする。


「……ハッ!」


 聖剣で攻撃を受け流しつつ蹴りも駆使して巧みにいなす。

 やはり、シュウラが来る前と比べると明らかに動きが鈍っている。

 だからこそチャンスであり、先程出来なかったことも出来るというわけだ。


「このタイミングで申し訳ないけど、これを返すよ」


 そう言って、聖剣を持つ手に装着されているブレスレットを外し、そのままサワンに装着させる。


「……ッ!?」


 大天使ジャルダルクの言う時が今なのかはわからないが、サクラは自身の直感を信じた。

 本来の持ち主に返されたからなのか、ブレスレットは先程以上に強く光を放つ。

 そして、よりサワンの力が弱まったことを感じ取れた。



「……ッ、今だよ……!」

「……!?」


 サワンに蹴りを入れたのと同時に跳躍するようにサワンから距離を取る。

 次の瞬間、サワンの目の前に光の楯が振り落とされた。


「――アアアアアア!!!」


 呪いの咆哮で吹き飛ばせたと思いきや、新たな光の楯が現れ、動く間もなくサワンを包囲する。


「――ジャスティス・アロー!」


 声と同時、空から楯同様に光の矢が楯と同じ軌道を辿るようにその楯に落下。

 さしずめ光の牢屋と言わんばかりの状況となった。


「アアアアアア!!!!!!!」


 再度呪いの咆哮で楯を突破しようとするが、今度は呪いを飲み込んだ。


「!?」


 驚きの束の間、それは瞬時にカウンターとしてサワンに牙をむく。


「――――!?!?!?」


 声にならない絶叫が響き、何がどうなっているのかわからない。

 混乱を極めているのだ。


「――正義の名を冠した牢なんだ……簡単に突破できると思うなよ」


 楯をよじ登るようにして現れたのは、先程まで戦線を離脱していたビリンだった。

 この時のためだけにここまで準備した。

 それは、この状況が生まれることを……サクラを信じているがゆえにできたことだ。


「私はあくまでサクラたちを守り、サワンの攻撃を防ぐこと……後のことは二人に任せるってことで――」


 楯から飛び降りたのと同時に、サワンを捕らえる光の牢は、文字通り光となって消えていった。

 サワンの視線の先には、シュウラ……その両手に集まるエネルギーはすでに最高潮に達していた。


「――アアアアアア!!!!!!」


 あれを発動させてはだめだ……本能が叫び、最強クラスの呪いの咆哮を轟かせる。


「あと少し早かったらな――大地の波動」


 自然より取り込んだエネルギーを球状の波動としてサワンに発射する。

 それは、呪いの咆哮を容易く飲み込み、そのままサワンすらも飲み込んだ――。




 天も地も衝撃の跡を残した。

 焼け野原にでもなったのではないかというくらいには綺麗であった草原は削れたように汚れてしまった。

 その中心地には全身がボロボロの状態でただ立ち尽くすサワンがいた。

 正直あの一撃でもまだ立てるということに、呪いと関渉した悪魔因子に少しばかりの恐怖を感じてしまう……だが、それもシュウラにとっては想定内であり、わざとそうしたのだ(・・・・・・・・・)

 案の定サワンは、ここまでのダメージを負わせたシュウラを目掛けて突進するが、シュウラにしか視線が向いていない時点でこの勝負は終わった。


「僕を忘れるなんて、お父さんたちが悲しむんじゃない?」

「――!?」


 気付いた時にはサワンの背後にサクラがいて、すでに聖剣で対象を斬った後という構えを取っていた。

 すでにサクラはサワンを聖剣でその身体を斬っており、サワンの身体にはその一閃の跡が刻まれている。


「ァァァァァァアアアアアア!!!!!!!!」


 傷跡から禍々しい闇が漏れ出し、流れるようにしてサクラの聖剣へと続々と吸収されていく。

 直前に闇は光へと変化し、聖剣の力へと変換される。

 闇が漏れ出るのと同時に、禍々しい悪魔の姿をしているサワンの姿少しずつ変化していく。

 それは、聖なる光を司るに相応しい……そう、美しき天使の姿に――。

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