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復讐に染まった少女は輪廻の旅の果てに……  作者: ただの小林
4周目 第4話 呪われた天使
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第4話 呪われた天使㉓

「…………は?」


 突如、シャルの手から細剣が零れ落ちた。

 シャル自身の手に力が入らないというわけではない。

 だからといって細剣自体が重くなったというわけでもない……重力の魔法というわけでもない……なぜなのか――。


「なぜって、思ったよね――」

「……いったい何をしたの」

「何って……ねぇ?」


 納めていた刀を再度抜刀。

 姿を見せた刀は、ほんのりと淡い紫の光を放っているようにも見える。

 サクラは刀身に触れると、舐めるように刀身の先へ指を滑らせ――。


「六道神流――六ノ太刀……畜生・苦楽ノ章第二・幻……僕の刀をその細剣で受け止めたよね?」

「だから何だって……まさか……」

「うん……名の通りだよ――」


 ――六ノ太刀、畜生・苦楽ノ章――三つの章で構成された六道神流の太刀。

 真骨頂は苦しみ……三つに構成された苦しみのどれか一つを駆使して相手に味合わせる。

 その中でサクラが今回使用した苦しみは幻。

 名の通り、斬った相手に幻を見せるこの太刀は、生きるものに限らず、この世のありとあらゆるものに対して幻を見せる。

 シャルが細剣で受け止めた時点で、幻にかかっており、見せられた悪夢によって細剣は、本来あり得ないはずの悪夢を経験、絶望し、細剣そのものが恐怖を覚え、地に落ちた――。


「拾えば良いさ……別に細剣が二度と使えない訳でない……まあ、本調子ではないかもしれないけど」

「…………ッ」


 技の効果を知ると、細剣を拾い、一呼吸置き、地を蹴りサクラに強襲する。


「――苦楽ノ章――」

「――遅い」


 瞬時にサクラの間合いに入り、刀の攻撃より先に細剣をサクラの肩に突き刺す。

 それも織り込み済みだったサクラは、魔法の障壁を準備しており、直前に弾かれた。

 この瞬間に生まれたシャルの隙をサクラが見逃すこともなく――。


「――心」


 見えないほどの刀速でシャルの腕に浅く(・・)攻撃を入れる。


「――ッ」

「させるかよ」


 後方にいたキルライナの銃弾がサクラを襲うが、ビリンのエイジスの光の盾で防ぐ。

 その隙にシャルは元居た位置に戻る。


「また……なに……?」


 今度はシャルが膝から崩れ落ち、謎の震えが襲い来る……柄にもなく恐怖を抱いているかのように……。


「今回の章は心……斬った相手の心を弱らせる……結果として少し動きが鈍る程度だけど……僕にとってはそれくらいで十分だけど……」


 鋭い視線を向け、刀を構える。

 ここで、後方待機をして、不意打ちのごとくジャスティス・アローを放ったビリンが合流。


「マジでサクラ一人で十分なんじゃねーか?」

「だが、油断するなよ。一度俺が止めたとはいえ、奥の手がありそうだしな……どうなんだ、サワン」

「うん、シュウラの言う通り、油断しない方が良いよ。伊達に七司教を名乗ってないし」

「――ッ」


 話しているうちにシャルは、今まで同様自身に細剣を突き刺す。

 突き刺したシャルの身体から、細剣に流れるように光のようなものが流れていく。


「あれが回復なのか? 痛々しいな」

「騎士道精神に反する?」

「だろうな、こんな性格の私が言うのもあれだけど……で、どうなんだ?」

「あの技は心に作用する技だから正直どうなのかわからない……一種の喝のようなものじゃないかな」

「なるほどな……」




「はあ、はあ……」

「やっぱり無理か」

「ええ、心……質の悪い一太刀だこと……だから何だって話……」


 自身に突き刺した細剣を抜き、再度立ち上がる。

 その表情は、苦楽ノ章の影響か、強がっている様にも見える。


「……だな……それに、そろそろ(・・・・)だろ」

「始めましょうか……地獄の始まり(・・・・・・)を――」


 二人の得物――さらに全身から禍々しいほどのエネルギーが作られ、漏れ出し始めていた――。




「なんだ?」

「魔力……とは違う……だからといって呪いでもない……」

「サワン、心当たりは?」

「ないよ、でも……」


 サワンは今までにないくらいの悪寒を感じていた。

 二人から感じる悪しきエネルギー……あれを野放しにしてはいけない……本能がそれを感じている。

 しかし、動けない(・・・・)――。


「ねえねえみなさん……私とキルがなんで今回こんなことをしたか……わかる?」

「サワンのことを裏切り者って言ってたけど……他にもあるの?」

「他にもか……正しいけど、間違ってもいる――」


 キルライナの鋭い視線はサワンに向けられ、さらに口を開く。


「確かに俺たちの目的はサワンだ。裏切り者の粛清……確かにそれもある……あくまでついで(・・・)だ、ついで。真なる目的は――」


 次の瞬間、銃口を空高くに向けられ、そして発砲する。


「――!?」

「まずい――」

「――させない」


 細剣による斬撃がサクラの行動を封じる。

 放つ禍々しいエネルギーの影響か、先よりも圧倒的に威力が増加しており、サクラは押し切られた。

 キルライナが上空に放った銃弾は、一定の地点で花火のように弾け、地面に振りかかろうとしている。


「あなたたちも邪魔――」


 続いてビリン、シュウラもシャルの斬撃に襲われ、やはり想像以上の威力に各々がその場を後退。

 唯一ビリンは、エイジスの楯で防いだものの、それを見越していたシャルは、ビリンにより集中的に斬撃を放つ。

 結果、ビリンも後退することになり、サワンの周りは(・・・・・・・)がら空きの状態(・・・・・・・)となった。

 同時にキルライナが放った花火のように弾けた銃弾が、サワンを中心に地面に着弾、落下の軌道を描くようにして禍々しいエネルギーも、まるで檻のようにしてサワンを閉じ込める形で地面に流れる。


「これは……悪魔の力?」

「ハッ、正解だよ。それは悪魔の力を用いた檻……文字通り、悪魔の檻と呼んでる。そして……動けなかったよな(・・・・・・・・)?」

「動けるはずもないよ……対サワン用に調整したから」


 細剣を下げ、シャルが悪魔の檻に近づき、キルライナも続く。


「どういうことだよ」

 

 斬撃の被害を抑えていたビリンが当然の疑問を漏らす。


「そのままの意味なんだけどな……ほれっと」


 キルライナが檻に触れると、人一人分が出入りできるスペースが生まれ、キルライナとシャルが中に入り、すぐにそのスペースは消える。


「サワンの持つ呪いのサンプルはあった。だからそれを解析することでこの銃弾を完成させた。これはサワンを閉じ込めるだけではなく、この漏れ出る悪魔因子(・・・・)発動と同時に、サワンの呪いに反応して本人の動きを封じる……ただそれだけのことだ」

「私をどうするつもり? 動きを封じている間にいたぶって殺す?」

「キルが言ったでしょ、真なる目的があるって……」


 サワンに近づくと、シャルはその頬を撫でるように触れる。

 そしてそのまま胸の方まで移動させると――。


「せいぜい殺戮(・・)を楽しみなよ、サワン――」


 シャルの飛び切りの笑顔を見せたのと同時に、禍々しい光がサワンの心臓部を一瞬にして貫く――。

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