第4話 呪われた天使㉑
「魔王の存在について、それに連なる形で神の存在――実在についても話した……一応質問について答えたことになるが……サクラよ」
「満足な回答ではあるかな……今みたいに聞いたら答えているから隠す意味もあなたにはないだろうし」
「うむ……サクラの言う通り、隠す意味もない……話したところで損がある訳でもない……得もだが」
「ビリンさん……なんか……頭が混乱してきました」
「安心しろメニシア、私もだ」
特にメニシアとビリンは内容の濃さに頭が追いついていない。
逆にモネとネロは、サクラに負けない魔法使いになれるという事を聞いてやる気に満ち溢れた表情を見せており、それはシュウラも同じだった。
「シュウラよ、お主にアドバイスがいるかどうかはわからぬが――」
「聞かせろ」
ジャルダルクの瞳に映るのは、純粋に強さを追い求める少年……そこに悪なる感情は微塵も感じない。
認知している限りのシュウラの性格を考えると突っぱねるとばかり思っていたのだが……。
「永き時を生きてみるもんだな……」
「……?」
「いや……何でもない。まあ、アドバイスと言ったものの、アドバイスに近いものだと考えてくれ……お主の神器の目覚めは近いかもしれない……曖昧な表現で申し訳ないが」
「構わない……それだけで十分だ。それを聞いたから怠惰するわけでもない、ただひたすら精進を続けていく……やることも変わらないだろ」
「ふふ……やはりお主は強い、アドバイスは不要だったかもしれぬな…………はい! ということで話すことも話したし一緒にご飯食べる~?」
「さっきも言ったよね、もう帰るよ――」
サクラたちが宮殿に訪れている同時刻――。
「はあ、はあ、はあ……やっと治ったか……」
「さすがにあの一撃は想定外すぎる……サワンだけじゃないなんて」
突き刺したレイピアを引き抜き、吸収したダメージを力へと変換し、シャル自身に吸収する。
「サクラかぁ……それにあの少年……まだまだいそうだけど……」
「俺たちがやることは変わりない――」
ポケットから二本の注射を取り出て、一本をシャルに投げ渡す。
それを受け取ると、二人は同時に首筋に注射を突き刺した。
――ドクン。
一瞬、血管が膨張し元に戻る……今までにない覇気が纏う……。
「行こうかシャル……」
「ええ……」
「「あの女を我らのものに――」」
宮殿を後にし、一行はサワンの家へと戻る。
時間も遅い……戻るとモネとネロ、メニシアはすぐに部屋へと向かい眠りについた。
ビリンと、泊まることになったシュウラも準備を終え次第部屋に戻り各々の時間を過ごす。
曇りなく、満天の星が広がり、美しき月の輝きが照らす草原にサワンはいた。
「――何してるの?」
「……サクラ……」
家の方向から刀を持ったサクラがサワンに近づき、隣に座る。
「眠れないの?」
「それはサワンがじゃないの? 僕は単純に精神統一のために外に出ただけ。敷地内だとさすがにうるさくなりそうだから、素振りもするつもりだったから」
「つもりってことは……もしかして私?」
「うん、サワンがどこか行くのが見えたから……」
「……」
沈黙が続く。
気まずいとかそういうものではない。
夜特有の静寂さが漂っている……沈黙を破ったのはサクラだった。
「このブレスレットだけど……」
サクラがブレスレットを渡そうとしたのは二回。
一度目はキルライナとシャルとの戦闘時。あの時はその二人に妨害される形で終わった。
二度目は先程の宮殿。ジャルダルクの話からすぐに渡そうとしたが、こちらはジャルダルク本人から制止された……今ではなく来るべき時に渡す。
その時がいつなのかはわからない。
また、ブレスレットに手を伸ばそうとするが――。
「まだ……その時じゃないかな……まだ、ね」
「……」
「別にジャルダルクが言ったからじゃないよ……私もなんとなくそうかなって……」
「勘みたいな?」
「うん……だからね、その時が来たらサクラが私にブレスレットを着けてねっ」
「渡すから自分で装着してよ――」
微笑ましいやり取りと繰り返した後、二人は家に戻り休息を取る。
そして翌日……天上大陸史上最大の厄災が発生するのであった――。




