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旅するもの  作者: 月卜桜
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迷うもの

暫く森の中を歩き続ける。

時折魔物なんかと遭遇するがそれくらいだ。

アンデットだから眠る必要も、休む必要もなく動き続けられる。

現に今、丸一日歩き続けたはずなんだが・・・。


一向に森から出られん!

こんなに広い森だったのか?

一度日が暮れてまた昇ってきた。

一体いつになったら出られるんだ?


そのまましばらく歩いていると、開けた場所に出る。

目の前には、きれいに区画分けされて生息している植物たち。

まっすぐ伸びる道のようなものの両脇に、同じ様な家々が立ち並ぶ。

そのさらに奥には、天にそびえる三つの塔からなる城のようなものがすべてを見下ろしている。

あれ?ここって?


「あんた、何してんの?」

「うおぉっ!?」


突然後ろから声をかけられて、つい声を出してしまう。

振り向くと、リディアが立っていた。


「何でここに!?」

「それはこちらのセリフだけれど?」


リディアはじとっと此方を見てくる。

と思ったら、ハァと明らかに聞こえるようなため息をつく。

な、なんだ?


「そういう所は変わってないのね」

「え?何だって?」

「何でもないわ」


今何を言ったのかは分からなかったが、呆れられたことはわかる。


「全く、こっちよ付いて来なさい」

「ん?どこに行くんだ?」

「どこって、森を抜けるんでしょう?」

「案内してくれるのか?」

「ええ、いつまでもこの森をうろつかれても困るしね」

「いや、さすがにそこまでは…」

「そう思えないから案内しているのだけど?」

「…うぐぅ」

「おとなしく付いて来なさい」

「…よろしく頼む」


歩き出すリディアについて行く。

俺は方向音痴なのか…?

いや、森だったからだな。うん、きっとそうに違いない。


どれくらい歩いただろうか。

正直、ずっと同じ景色でどう歩いているのか分からない。

それにしても、全然魔物に出会わないな。

結構、深い所だと思うんだが。


「なぁ、どうして魔物が全然出てこないんだ?何もいないわけじゃないだろ?」

「ああ、それはね。この辺りはルーベアーの縄張りだからよ」

「ルーベアーの?だとしたら、そんなところに集落なんて作って大丈夫なのか?」

「…全く記憶が無いってわけじゃないのね」

「あー、そうだな。ルーベアーに関しては、多少はあるかな」

「そう」

「それで?何で村は襲われないんだ?」

「簡単な話よ。彼とは、お互い不干渉ってことで通ってるの」

「魔物と、か?」

「ええそうよ。…あの子は特別だからね」

「特別?」

「…あなたは知らなくていいわ。それより、見えてきたわよ」


前方を見ると、光が差し込んでいるのが見える。

森の切れ目だ。


「あ?何だこれは?」


光の差し込む場所へ行くと、確かに森の切れ目だった。

だが、そこから少し先は坂の様になっており、また森が続いていた。


「森と山の境目よ」

「境目、だと?」

「そ、ここからこっちはちょっと坂になってるでしょ?この坂を上っていくと、山を登ることになるのよ。で、その山を越えると、人間たちの住む地域になるんだけれど…」

「だけれど?」

「そのためには、この山を一周ぐるりと回っていかなきゃいけないのよ」

「…ちなみに、どれくらいかかるんだ?」

「さぁ?」

「さぁって…」


彼女は肩をすくめて見せる。


「実際に測った事なんてないから、分からないわよ。それより、この坂に沿って歩けば山を越えられるわよ。人間の領域になれば道が出てくるはずだから、行けば分かると思うわ」

「そうか、因みに山を突っ切るのは?」

「…お勧めしないわ。」


そういう彼女の顔は、疲れた様な嬉しい様な複雑なものに見えた。

まぁ、リディアが態々遠回りしてけって言うんだから、何かあるんだろう。

気は進まないが、言われた通りに進んでみるか。


「分かった、此処まで有難うな。リディア」

「…別に、あんたの為じゃないわ。いつまでもここら辺をうろうろされると、面倒なことになりかねないからよ」

「そうだったのか。それは悪いことをしたな。なら、さっさと行くことにするよ」

「…ええ、そうね」


?なんか、急に不機嫌になったか?

ああ、早くいけってことか。


「それじゃあな」

「ええ。…気を付けていきなさいよ」

「おう、ありがとよ」


最後に、挨拶を交わして坂を沿う様に歩き始める。

挨拶は交わしてくれるんだな。

いいやつだなほんとに。


リディアと別れてから、どれくらいたっただろうか。

いつまでたっても変わらない光景に、本当に進んでいるのかと疑ってしまう。


…面倒だな。

疲労も空腹も感じないが、それはそれで気が滅入るというもの。

この光景がいつまで続くかもわからないし。


坂の先を見る。

また、深い森になっているようで光は届かず、先は見通せない。


「この山を越えれば、良いんだよな。……行くか」


リディアがお勧めしなかった理由はわからないが、もしかしたら大変だからという事かもしれない。

実際、高い山ならかなりの体力を使うだろうしな。

だが、アンデットである俺なら関係ない。

道も上に登っていけばいいだけだしな。


俺は、境目を越えて坂道を登り始めた。

周りに生えている植物は、今までと変わりないようだ。

坂道を上り始めてどのくらいたったのか、結局森の中と変わらない光景に辟易としてきたころだった。

気付けば、少しづつ背の高い木が減ってきた。

代わりに、腰あたりまでの草が多くなってくる。

それに伴って、日の光が差し込むようになる。


差し込む光は、夕焼けの色をしていた。

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