生れ落ちるもの
「ふわ~ぁ。早く家帰ってゲームしてぇなぁ」
昼休み後の授業中、あくびを噛み殺しながらそんなことを考える。
高校2年の夏休み前。
おそらく、3年間のうちで最も気が緩むであろう時期。
俺もその例にもれず、気分はとっくに夏休みに向かっていた。
キーンコーンカーンコーン
いつの間に眠っていたのか、気づけば最後の授業が終わったとこだった。
各々が帰り支度をしたり、部活へ向かう準備をしている。
俺も帰ろう。
さっさと広げていた教科書を鞄に突っ込み、教室から出ていく。
特に変わったこともなくいつもの帰路を歩く。
さっきまで睡眠をとったおかげか、今はとても頭がさえている感じがする。
今日はいつも以上にゲームがはかどりそうだ。
「お?」
帰宅後に想いを馳せながら歩いていると、ふと向かいの道にあるゲームショップに目が留まった。
なんか新しいのでも買ってみようかな?
そう思った矢先、ドンッと何かが背中にぶつかる。
気を抜いていたからか何の抵抗もなく道路側に倒れこんでしまう。
自分の視界には迫りくる車と走り去っていく自転車が映り込んでいる。
その映像を最後に、俺の意識は暗闇に飲み込まれた。
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ハッ
意識が突然覚醒する。
つい飛び起き・・・ることはなかった。
体が思ったように動かない。
気づけば、周りも暗くて何も見えない。
ここはどこだろう?
何やら寝息は聞こえるので、誰かはいるらしい。
病院だろうか。
なんだか、眠くなってきた。
すこしづつ暗闇に溶けるように、意識が薄れていった。
再び目が覚めたときは、空が白み始めたころだった。
空腹で目覚めるなんて初めてだ。
何か食べたいと思ったとたん、視界がにじみ自分の口から赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。
そのことに吃驚して、さらに声を上げる。
どうやら俺は、赤ん坊になってしまったようだ。




