第76話 学校で男子達がソワソワし始めました。
「お前どうしたんだよその髪型?」
「いや、ちょっとイメチェンしようかなーって思ってさ」
鈴の誕生日兼バレンタインデーまで残り1週間を切った。
この頃になると男子達に変化が訪れる。
今学校の教室に入ってきたクラスメイトだって、いつもとは違った髪型でキッチリとした感じになっている。
他にもロッカーや下駄箱を意味もなく綺麗にしたり、話題の中で甘い物が出てくることが増えてきた。
そう。 男子達はバレンタインデーに向けて少しでも女の子に良い印象を持たれようと必死なのだ。
でも、そのことは勿論女の子達も分かっていた。
「ねぇ、あいつ絶対バレンタインデー意識してるよね〜分かりやすずきるでしょ」
「普段からもっと頑張れって話だよね〜」
「まぁ、でもそういうところ可愛くない?」
「あー分かるわぁ」
「でも、それって同い年の男子に向ける感情じゃなくない?」
「え、そう?」
「そうでしょ」
席の近くにいる女の子達の話し声が聞こえた。
ヤバイ。 そんなことを思われていたのか。
そういえば俺も去年、この時期に少し制服を着崩してカッコつけてたよな気が……あぁぁぁ恥ずかしくなってきた!
しかも、去年結局バレンタインデーのチョコ母さんにしか貰えなかったし!
うわぁぁぁぁぁ!!!
俺は黒歴史などを思い出して顔を赤くしながら頭を抱える。
誰も俺のことを今見ていないだろうけど、この場から消えてしまいたいぃぃぃぃ。
「ど、どうしたの陸? お腹でも痛いの? 保健室行く?」
そんな俺を見てチアキが遠慮気味に話しかけてきた。
「いや、ちょっと消えてしまいたいなって思って」
「本当にどうしたの!? 頭大丈夫?」
チアキが心配そうに俺の頭を見る。 おい、椅子に座っている俺の上からつむじを凝視するな。 なんか禿げちゃいそうだろ。
「いや、バレンタインデー近くてみんなソワソワしてるじゃん?」
「あー確かにそうだね」
「俺も去年はあっち側だったなーとか、カッコつけてたなーとか思うと、恥ずかしくなっちゃって……」
「だから、消えてしまいたいって言ってたんだ」
「そうなんだよ」
チアキが前の椅子へと座る。 そこから俺達はソワソワした気持ちのまま、朝の会が始まるまで話をした。
そして、担任の先生が教室へと入ってきた。
すると、先生はさっき俺が見ていたクラスメイトの髪型を見た後、非情な言葉を言ったのだった。
「おい、ワックスは校則で禁止されてるぞ。 朝の会が終わったら洗い流してこい。 いいな?」
そう言われたクラスメイトは肩をガックシと落とす。
俺はそんな姿を見て、ありのままの自分を磨いていこうと思ったのだった。




