第75話 両親に交渉します。
「ねぇ、お願いがあるんだけど今いい?」
俺は夕ご飯を食べた後、母さんと父さんに話しかける。
母さんは食器を洗い、父さんはソファでお笑い番組を見ているところだ。
あ、父さん大爆笑しながら腹をポリポリと掻いている。 おっさんくさいなぁ。
「まぁ、 別にいいけどお願いってなによ?……ちょっとアナタ。 陸がお願いがあるんだって」
「んあ? おおすまんすまん。 テレビに夢中で話聞いてなかったわ」
「もうアナタったら! とりあえずこっちにきてよ」
「んあ〜い」
父さんは母さんに怒られると、ゆったりとした動きで食卓にある椅子へと座る。
母さんも蛇口を閉めて手を拭き、エプロンを外してから椅子へと座った。
俺の目の前には父さんと母さんがいる。
さて、交渉の時間だ。
「単刀直入に言うけど、お金が欲しいです。 ください!」
「お金? あんたお年玉どうしたのよ? お年玉の3分の1はあんたに渡したはずでしょ?」
母さんは首を傾げながら聞いてくる。
我が家では俺のお年玉の3分の2は貯金、残りは自由に使っていいことになっている。
お正月から約一月。 母さんの疑問は最もだ。
でもーーーーー
「もうお年玉がありません! なので、お金をくださいお願いします!」
「はぁ!? あんたなにに使ったのよ!?」
「ゲームや漫画に使いました!」
「あんたの自業自得じゃない! そんなんでお金を貰おうなんて甘いのよ!」
母さんが怒髪天を衝く。
そんな母さんを父さんが笑いながら宥めていた。
「まぁまぁこの年頃の男ならこんなもんだって」
「でも、いくらなんでも一ヶ月ぐらいしか経ってないのにもうお年玉なくしたのよ!? 計画性なさすぎよ!」
「でも、男にはどうしても欲しい時があるんだよ。 な、陸?」
「そうなんだよ。 父さんの言う通りなんだよ」
「その欲しい物がゲームと漫画だったわけでしょ!? 買うなとは言わないけど、もうちょっと考えてお金を使いなさいよ! そんなだと大人になってからお金の管理で困るわよ!」
「うぅ……」
母さんの言うことは正しい。
それに、前回お金を貰った時の状況とはまるで違う。
今回は直近でお年玉というものがあった。
多分、お年玉がなかったら金額にもよるけど、今回みたいなことにはなってなかっただろうな。
「まぁ、もうちょっと陸と話してみようよ。 なにか思いつくかもしれないよ?」
「アナタがそう言うなら別にいいけど……」
「ほら、母さんが落ち着いたから今のうちになんか妥協案みたいなの出せって。 良い感じだったら、父さんもお前の味方してやるからさ」
父さんが小声で話しかけてくる。
とりあえず父さんのおかげで首の皮一枚繋がったな。
え〜となにか案はないか案は…………あ、そうだ!
「テスト2週間前からゲームを禁止にします! ゲーム機も母さんに預けます!」
「お、それならいいんじゃないか母さん?」
父さんが俺の意見に賛同してくれる。 母さんの表情も悪くない。 これはいけるんじゃないか!?
「ん〜別に悪くはないけど、もうちょっと欲しいわね…………そうだわ! あんたそれ+2月の休日は家の掃除手伝いなさいよ! あんた毎回疲れたって言ってしないんだから!」
「えぇ〜〜!!」
「お、それいいな父さん賛成!」
「父さん!?」
「父さんには良いことしかないからなぁ。 俺も母さんの意見には大賛成だ」
父さん味方になってくれるって言ったのに、微妙に味方じゃない!
くそ! してやられた!
「それで了解するならお金はあげるけど、あんたどうする?」
「………………それでお願いします」
俺はきっと苦虫を噛み潰したよう表情をしているだろう。
母さんから貰ったお金が、今までで1番重く感じたのだった。




